更新日:2024.05.24
公開日:2024/5/15
資本金の平均額はどのくらい?目安や決め方のポイントについて解説!


StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
資本金は会社設立の際に必ず必要になる資金です。
資本金1円でも会社設立することができますが、設立資金や運転資金、設備投資を考えるととても現実的ではありません。
「資本金はいくらにするのが妥当なのだろう」という悩みを持っている方も少なくないのではないでしょうか。
ここでは「資本金の平均額や目安、決め方」について詳しく解説します。
資本金の金額の目安が決まると、会社設立までの道筋が一気に見えてきます。
会社設立を検討されている方は、ぜひ最後までお付き合いください。
資本金とは
資本金とは「出資者が出資したお金」のことを言います。
簡単に言うとビジネスを始めるための元手になるお金のことで、会社設立時の運転資金や設備投資として利用されます。
会社設立時には、経営者の自己資金を資本金として払い込むケースが一般的です。
会社設立後に増資を行うこともできます。
以前は、資本金の最低額が設定されていましたが、会社法の改正により最低資本金制度は撤廃されています。
資本金の平均額はどのくらい?
資本金の平均額は業種によっても異なりますが、2023年12月のデータでは約5割の会社が「100万円から500万円」の資本金で会社の設立を行っています。
一番多い資本金階級は100万円以上300万円未満になっています。
【2023年12月に会社の設立を行った会社の資本金】
資本金階級 | 設立登記の件数 | 割合 |
100万円未満 | 3,140件 | 27.3% |
100万円以上300万円未満 | 4,342件 | 37.7% |
300万円以上500万円未満 | 1,310件 | 11.4% |
500万円以上1,000万円未満 | 2,204件 | 19.2% |
1,000万円以上2,000万円未満 | 330件 | 2.9% |
2,000万円以上5,000万円未満 | 111件 | 1% |
5,000万円以上1億円未満 | 35件 | 0.3% |
1億円以上 | 24件 | 0.2% |
合計 | 11,496件 |
業種別での資本金の特徴
業種別での資本金の割合を見てみると次のとおりです。
資本金階級 | 製造業 | 卸売・小売業 | 宿泊業・
飲食サービス業 |
300万円未満 | 4.86% | 8.74% | 15.77% |
300万円以上500万円未満 | 28.26% | 33.33% | 38.98% |
500万円以上1,000万円未満 | 12.48% | 14.08% | 15.17% |
1,000万円以上3,000万円未満 | 40.05% | 33.97% | 19.11% |
3,000万円以上5,000万円未満 | 5.75% | 3.79% | 2.44% |
5,000万円以上1億円未満 | 4.72% | 2.79% | 1.84% |
1億円以上3億円未満 | 1.53% | 0.87% | 0.60% |
3億円以上10億円未満 | 0.86% | 0.37% | 0.11% |
10億円以上50億円未満 | 0.46% | 0.15% | 0.09% |
50億円以上 | 0.33% | 0.07% | 0.03% |
政府統計「e-Stat」経済センサス‐活動調査 令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計
製造業については、資本金1,000万円以上3,000万円未満の割合が一番多くなっています。
製造にかかる設備投資に資金が必要になるためだと考えられます。
卸売・小売業についても資本金1,000万円以上3,000万円未満の割合が一番多くなっており、仕入れなどの原価率が高いことが原因だと考えられます。
宿泊業・飲食サービス業については、資本金300万円以上500万円未満の割合が一番多く、設備投資や初期の運転資金が他の業種よりも少なくて済む場合が多いと思われます。
資本金の決め方のポイント
会社を設立する際の資本金の決め方のポイントは「運転資金」「初期費用・設備投資」「許認可が必要な事業かどうか」「税金との関係」を考慮して、総合的に判断することです。
資本金の決め方のポイントは「資本金とは?資本金を理解して賢い会社設立する方法を解説!」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
資本金は無理にでも増やすべき?
資本金は会社の運転資金として利用でき、多ければ多いほど会社設立後の安定性が増します。
資本金に余裕があることで「借入金を返済する資金がある」「倒産のリスクが少ない」などプラスの評価を与えることができるため、金融機関からの信用を得ることができます。
しかし、一概に資本金は多ければ多いほどいいということではありません。
資本金が多いと様々な税金の負担が発生したりするなど、マイナスな面もあります。
5-1.資本金を高く設定するメリット
資本金を高く設定する場合には次のようなメリットがあります。
5-1-1.経営が安定する
会社設立後は何かと資金が必要になります。
設備投資や仕入れ費用など、まとまった資金を用意できなければ経営が成り立たなくなってしまいます。
もし、経営に必要な資本金がギリギリで余裕のない場合、どこかで余分な支出が発生してしまうと資金ショートが起きてしまう可能性もあります。
資本金は、少なくとも3か月は売上がなくても経営を維持できるように余裕のある金額を設定するといいでしょう。
5-1-2.取引先からの信用を得られやすい
経営の安定は、資金繰りの安定に直結します。
資金繰りが安定していると取引先への支払いも滞りなく行うことができ、取引先からの信頼を得られやすくなるでしょう。
資金に余裕がない場合は、取引先から「うちの支払い大丈夫かな…」などと思われ、信頼を得ることができません。
5-1-3.金融機関から融資を受けやすくなる
金融機関はボランティアで融資を行っているわけではありませんので、「滞りなく返済してもらうこと」を第一に考えて融資審査を行います。
資本金が少ない場合、事業開始後に損失を計上してしまうと簡単に債務超過に陥ってしまい、金融機関からの融資を受けることが難しくなってしまいます。
資本金が多い場合は、少しの損失では債務超過にならず、金融機関からの融資も受けやすくなります。
5-1-4.元金や利息の負担なく経営できる
資本金で経営に必要な資金を賄いきれない場合、金融機関からの融資を受けることになります。
融資を受けると元金の返済と利息の支払いが発生し、事業が軌道に乗る前の大事な時期に毎月の負担が発生します。
十分な資本金が用意できれば、融資を受ける必要がなく、利益を事業拡大に充てるなど、自由な経営を行うことができます。
5-1-5.従業員を確保しやすい
資本金に余裕がある会社は、社会的信用もあり、債務超過にもなりやすいことから、求人する際に優良企業の求人情報として取り扱われ、優秀な人材を確保しやすくなります。
5-2.資本金を高く設定するデメリット
5-2-1.税金の負担が増える
資本金を高く設定するデメリットは、様々な税金の負担が増えることです。
どのような税金が増えるか見てみましょう。
資本金階級 | 登録免許税(株式会社の場合) | 消費税 | 法人税 | 法人住民税均等割
(従業員数50人以下、大阪の場合) |
1,000万円未満 | 15万円 | 2年間免除(そうでない場合もあります) | ・年800万円以下の部分は15%
・年800万円超の部分は23.2% |
7万円 |
1,000万円 | 15万円 | 設立時より課税 | ・年800万円以下の部分は15%
・年800万円超の部分は23.2% |
7万円 |
1,000万円超2,143万円未満 | 15万円 | 設立時より課税 | ・年800万円以下の部分は15%
・年800万円超の部分は23.2% |
18万円 |
2,143万円以上1億円以下 | 資本金の0.7% | 設立時より課税 | 23.2% | 18万円 |
1億円超10億円未満 | 資本金の0.7% | 設立時より課税 | 23.2% | 29万円 |
法人設立の際に必要な登録免許税は「15万円または資本金の0.7%のうちどちらか低いほう」と定められているため、資本金が2,143万円以上になると15万円以上の登録免許税が発生します。
消費税については、資本金が1,000万円未満の場合については「最大2年間は消費税の納税義務が免除」されます。
ただし、特定期間(事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間)の売上高が1,000万円を超える場合は、消費税が課税になります。
法人税については、資本金額によって税率が異なり、資本金が1億円超えの場合の法人税率は23.2%になり、1億円以下の場合は年800万円までの所得は15%、年800万円を超えると23.2%になります。
都道府県民税と市町村民税は、資本金・従業者数によって均等割が異なります。
資本金が多いほど均等割も高くなります。
資本金の具体的な決め方
資本金の決め方は「何を重要視するのか」によって異なります。
具体的な決め方を見ていきましょう。
6-1.税金を少しでも節税したい
税金の負担を少しでも減らすようにするための資本金は「1,000万円未満」です。
なぜなら、資本金が1,000万円未満の場合は「2年間、消費税が免税になる」からです。
会社設立して間もない時期に、消費税が2年間免税になるか、それとも課税事業者として納付するのかは大きな違いになります。
例えば、創業当初の年間売上高が2,200万円(消費税込)のサービス業の場合はどうでしょうか。
資本金が1,000万円未満の場合は免税になりますが、資本金が1,000万円以上の場合には1期目から消費税の納税義務が生じます。
消費税の簡易的な計算方法である簡易課税を選択している場合であっても、年間100万円の納税が発生してしまいます。
免税期間は2年間であるため、合計で200万円もの税金の負担が変わってしまうことになるのです。
ただし、免税事業者になるためには「事業開始後1期目の上半期における課税売上高が1,000万円以下であること」または「事業開始後1期目の上半期における給与等の支払総額が1,000万円以下であること」のいずれかを満たす必要があります。
消費税の免税事業者になるとインボイス制度の「適格請求書発行事業者」に該当しません。
そのため、取引先によっては取引ができなくなってしまう可能性もあります。
顧客が消費者である事業の場合は影響ありませんので、事業の特徴と取引先を考慮したうえで検討しましょう。
また、資本金が1,000万円超の場合は、事業が赤字でも発生する「法人住民税均等割」は増加します。
「税金を少しでも節税したい」という場合は、「資本金を1,000万円未満」にすると効果的な節税が可能です。
6-2.近くに店舗がある銀行で口座を持ちたい
会社の銀行口座を開設する際には「審査」があります。
審査基準は金融機関によって異なりますが、店舗を持つメガバンクや都市銀行の場合は「資本金を審査対象にしている」場合が多く、資本金が低すぎると審査に通らず、銀行口座を開設することができません。
近くに店舗がある銀行の銀行口座を持ちたいと考えている場合は、資本金を100万円以上に設定しておくといいでしょう。
6-3.金融機関からの融資を得たい
事業開始後、金融機関から融資を得たいという場合も銀行口座と同様に資本金がある程度ないと審査を通過できません。
資本金は社会的信用に直結しているため、資本金が少ないと返済能力が低いと判断されてしまいます。
起業後、金融機関からの融資を検討されている場合は、少なくとも資本金を100万円以上に設定するようにしましょう。
6-4.経営にゆとりを持ちたい
会社経営に欠かせないことは「資金繰り」です。
会社相手の事業で起業すると、売掛金の回収までにある程度の期間が必要です。
取引先が月末締め、翌月末払いの会社も多く、起業してしばらくは資金繰りが厳しくなります。
経営を安定させるためには、売掛金の入金がしばらくなくても耐えられる資本金を設定しておくことが大切です。
従業員の給与や家賃、水道光熱費など、1か月に必要な経費を算出し、売掛金の入金が3か月間なくても耐えられるようにしておくと、経営にゆとりができるでしょう。
6-5.許認可が必要な事業を行いたい
建設業や労働者派遣業など、特定の業種の許認可を取得するためには「資本金要件」があり、規定以上の資本金がなければ許認可を得ることができません。
事業に許認可が必要になる場合は、資本金要件がないか必ず確認するようにしましょう。
まとめ
資本金の金額は会社の社会的信用に直結する項目です。
少額の資本金でも会社を設立することはできますが、債務超過になりやすく、融資審査を通過できないおそれがあります。
「資本金をいくらにするのか」によって、起業後の経営の方向性が変わってきますので、業種別の資本金の平均額を参考に専門家である税理士に相談してみましょう。
Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所では、会社設立からその後の経営に関することまで万全のサポート体制を整えております。
顧問契約を会社設立とセットでご契約いただいた場合には設立代行費用は0円で承っており、資本金の設定などの会社設立に関するご相談は無料にてご利用いただけますので、ぜひお気軽にStar Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所にご連絡ください。