更新日:2024.05.24
公開日:2024/5/17
会社設立前後に受けられる補助金と助成金を徹底解説!成功する会社設立
StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
会社設立後の一番の不安材料は「資金が足りないこと」ではないでしょうか。
運転資金が足りなくなってしまうと会社の経営を続けていくことはできません。
金融機関からの融資も1つの資金調達方法ですが、それ以外にも補助金や助成金の利用を検討してみましょう。
補助金や助成金は「返済不要」です。
今後の資金を圧迫しないため、「会社経営にとってプラス」にしかならないお得な制度です。
ここでは、「会社設立前後に受けられる補助金、助成金」について詳しくご紹介します。
1.補助金と助成金は審査の厳しさや条件が違う
補助金と助成金はどちらも「一定の要件をクリアすることで、国や地方自治体から資金の支給を受けることができる制度」です。
返済不要であるため、会社設立時や設立した日が浅い会社にとって、大変魅力的な制度です。
補助金と助成金は同じような意味で使われることが多いですが、支給する目的や受給しやすさが異なります。
ただし、どちらの制度も原則的に「後払い」であるため、必要になる資金を先に自社で用意しなければならないことが留意点です。
1-1.補助金の特徴
補助金は「国の政策実現のための制度」であり、事業に関する設備投資や経費などを補助する役割があります。
補助金を受けるには審査があり、申請したら必ずもらえるものではありません。
定員や予算が決められているため、申請しても選ばれないこともあります。
1-2.助成金の特徴
助成金は主に「雇用に関する費用」をサポートする制度です。
補助金とは異なり、要件を満たして申請すれば「支給される可能性がかなり高い制度」です。
基本的には随時募集が行われているので、自社がどの助成金を受給できる可能性があるのかを検討しながら進める必要があります。
【補助金と助成金の違い】
補助金 | 助成金 | |
目的 | 産業の育成のため、事業に関する設備投資や経費をサポート | 雇用に関することや職場の環境改善に関するサポート |
受給しやすさ | 予算があるため必ずしも受給できるとは限らない | 要件を満たしていれば、受給できる可能性はかなり高い |
返済の必要性 | 返済の必要なし | 返済の必要なし |
受給できるタイミング | 後払い | 後払い |
専門家 | 税理士や中小企業診断士 | 社会保険労務士 |
1-3.補助金と助成金の主催団体
補助金は主に「経済産業省」が管轄しており、申請先は中小企業庁や経済産業省が所管する独立行政法人、採択された一般社団法人になります。
一方、助成金は雇用に関するものですので、主に「厚生労働省」の管轄になり、申請先は厚生労働省が管轄する各地方の労働局になります。
2.会社設立前後に受けられる補助金
補助金には様々なものがありますが、会社設立前後に受けられる補助金は次のとおりです。
2-1.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は「販路開拓にかかる補助金」になります。
販路開拓に関する費用の3分の2以内(最高50万円)まで補助してくれる国の制度です。
対象になる費用は「集客に関する機械の装置費用」「ホームページの作成費用」「紙媒体の広告の作成費用」「販路開拓の旅費」などが該当します。
小規模事業者持続化補助金の採択率は他の助成金よりも高く、受給しやすい助成金と言えるでしょう。また、会社設立後の販路開拓は必要不可欠ですので、設立後に申請する助成金にはぴったりです。
小規模事業者持続化補助金 | |
対象者 | 商工会議所または商工会の支援を受けている小規模事業者(業種によって従業員制限あり) |
支給額 | 対象補助経費の2/3以内(最高50万円) |
対象になる経費 | 機械装置等費、広報費、旅費など |
申請時期 | 年に数回の公募あり |
2-2.ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業が行う革新的な製品やサービスの開発、または生産プロセスの改善を支援する制度です。
補助金額は、従業員数によって異なり、最大1,250万円です。補助率は1/2ですが、小規模事業者であれば優遇され2/3になります。
この制度は、会社設立直後でも要件を満たせば申請することが可能です。
さらに会社設立後5年以内に申請することで「創業・第二創業後間もない事業者」という項目で加点されますので、採択されやすくなります。
「ものづくり」という名称のため、製造業しか利用できないと思われがちですが、サービス業やIT、農業など、様々な業種で利用することが可能です。
通常枠以外にも「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」なども用意されています。
ものづくり補助金 | |
対象者 | 中小企業者 |
支給額 | 従業員数により100万円から1,250万円まで 補助率は対象経費の1/2(小規模企業者などは2/3) |
対象になる経費 | 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費など |
申請時期 | 約3か月に1回の公募 |
2-3.IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業庁が管轄する補助金です。
生産性を上げるため、インボイス制度や賃上げ、働き方改革に対応するために導入するIT機器やツール、経費について一部を補助する制度です。
導入する目的や機器によって通常枠(生産性向上が目的)、デジタル化基盤導入枠、セキュリティ対策推進枠などに申請することができます。
通常枠はA類型とB類型に分かれており、A類型の補助率は1/2以内で5万円~150万円未満、B類型の補助率は1/2以内で150万円~450万円未満になっています。
生産性向上になる発注や決済に関するシステム、勤怠管理、会計ソフトなど、様々な機器やシステムが対象になるため、利用しやすい補助金になります。
ただし、会社設立1年目の場合はIT導入補助金に申請することはできません。
なぜならば、IT導入補助金の申請には納税証明書が必要になるためです。
会社設立1年目では法人税を納付しておらず、納税証明書を準備することができないため、申請することはできません。
2年目以降の利用を検討してみましょう。
IT導入補助金 | |
対象者 | 中小企業・小規模事業者等 |
支給額 | 補助率1/2 A類型5万円~150万円未満 B類型150万円~450万円以下 |
対象になる経費 | ソフトウェア、クラウド利用料、導入諸経費 |
申請時期 | 約1か月に1回の公募 |
2-4.事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継や引継ぎにかかる設備投資や販路開拓に関する費用を補助するための補助金です。
新設法人の場合は、廃業予定者からまとまった経営資源を引き継いだ場合(経営革新事業)のみ活用することができ、そのため利用できる人が限られる限定的な補助金です。
事業承継・引継ぎ補助金 | |
対象者 | 小規模事業者等 |
支給額 | 補助率600万円までは2/3、600万円から800万円までは1/2以内(支給額は最高600万円~800万円) |
対象になる経費 | 店舗の借入費用、マーケティング費用、設備費、広報費 |
申請時期 | 約1年に1回の公募 |
2-5.地方自治体の創業補助金
その他、地方自治体によっては独自の創業補助金制度を行っている場合があります。起業支援、家賃補助、利子補給など、様々な補助を行っている自治体もありますので、お住いの自治体や商工会議所へ確認してみましょう。
3.会社設立前後に受けられる助成金
会社設立後に受けられる助成金は「雇用」に関するものがほとんどです。
従業員を雇用する場合は、次の助成金が利用できないかどうか検討してみましょう。
3-1.キャリアアップ助成金(正社員コース)
キャリアアップ助成金は、非正規雇用(アルバイトやパート、派遣社員など)を正社員として雇用したり、職場の処遇改善をしたりした時に申請することができる助成金です。
キャリアアップ助成金は6つのコースに区分されており「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」「短時間労働者労働時間延長コース」があります。
この中でも、一番利用しやすいコースが「正社員化コース」です。
会社設立後にアルバイトやパートなどの有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員として雇用することで、一人当たり最大で57万円の助成金を申請することができます。
会社設立後に従業員を正規雇用する際に利用できる可能性がありますので、要件を満たしているか検討しましょう。
キャリアアップ助成金(正社員コース) | |
対象者 | 雇用保険適用事業所の事業主であること |
支給額(中小企業の場合) | 有期契約労働者から正規雇用労働者 1人当たり57万円 無期契約労働者から正規雇用労働者 1人当たり42万7,500円 |
申請時期 | 随時 |
備考 | 「転換される労働者」「転換する事業主」の双方に要件があります。 |
3-2.トライアル雇用助成金
トライアル雇用とは、ハローワークを通じて3か月の試用期間を設けて雇用する制度です。
3か月経過後に会社と労働者の合意があれば正社員として雇用することができます。
必ず正社員として雇用しなければならないということはなく、法的な拘束力もありません。
トライアル雇用助成金は、トライアル雇用を行った場合に最長3か月間、対象の会社に助成金が支給されます。
支給額は1人当たりの月額上限4万円になり、対象期間中の助成額合計が一括で支給されます。
対象者が母子家庭、父子家庭の場合や35歳未満の人の場合は、支給額の月額上限が5万円になります。
場合によってはトライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金を併用することができる場合もあります。
トライアル雇用助成金 | |
会社の要件 | ・ハローワークを通じて求人すること(雇用保険の適用事業主) ・1週間当たりの所定労働時間が30時間を下回らないこと ・一定期間、解雇したことのないこと |
労働者の要件 | ・就労経験のない職業に就く人 ・学校卒業後3年以内で、卒業後に安定した職業に就いていない人 など |
支給額 | 一般 月額上限4万円 母子家庭、父子家庭、35歳未満 月額上限5万円 |
申請時期 | 随時 |
3-3.特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、雇用することが困難だと思われる人を雇用することで支給される助成金です。
60歳以上65歳未満の高齢者、身体・知的障がい者などをハローワークを通じて雇用することで助成されます。
他にも、65歳以上の離職者を雇用する場合や障がい者の方を初めて雇用する場合など、状況に合わせて8つのコースが用意されています。
特定求職者雇用開発助成金 | |
会社の要件 | ・ハローワークを通じて求人すること(雇用保険の適用事業主) ・管轄労働局等の実地調査を受け入れること |
労働者の要件 | 60歳以上65歳未満の高齢者、身体・知的障がい者など |
支給額 | 高年齢者・母子家庭など 1年間で最大50万円 など、コースによって異なります。 |
申請時期 | 随時 |
3-4.人材確保等支援助成金
働きやすい職場環境を整え、人材を確保するための助成金が「人材確保等支援助成金」です。
この助成金は「雇用管理制度助成コース」「テレワークコース」など、9つのコースが用意されています。
目的に合ったコースを選択することができますので、会社設立後に職場環境を整備する際に人材確保等支援助成金が利用できるか検討してみましょう。
人材確保等支援助成金 | |
会社の要件 | 雇用管理制度整備の導入し、離職率を改善するなど、コースによって要件は異なる |
支給額 | 雇用管理制度助成コース 目標助成額57万円 その他、コースによって異なる |
目標達成助成 | 研修制度、諸手当等制度などの導入を達成することで支給される |
申請時期 | 随時 |
3-5.人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、従業員のキャリア形成を支援する制度です。
会社が従業員に事業に関連した専門知識を習得させるために職業訓練などを計画的に行った場合に経費の一部が助成されます。
人材開発支援助成金は目的に応じて「人材育成支援コース」など、7つのコースが用意されています。
どのコースも従業員のスキルアップを目的としていますので「従業員のスキルを向上したい」という場合は、要件を満たすか確認してみましょう。
人材開発支援助成金 | |
会社の要件 | 雇用保険の適用事業所であること |
支給の要件 | 知識や技能を習得させるためのOFF-JTを10時間以上行うなど、コースによって異なる |
支給額 | 人材育成支援コース 経費助成(経費の45~70%)、賃金助成(1時間当たり760円)、OJT実施助成 その他、コースによって異なる |
申請時期 | 随時 |
3-6.雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気変動などの理由により事業を縮小した場合に従業員の雇用を守るための制度です。
従業員を一時的に休業や教育訓練させ、賃金を支払った場合に、その一部が国から助成されます。
設立後間もない会社でも雇用調整助成金を利用することができますので、設立後に危うい状態なってしまった場合の対応策として有効です。
雇用調整助成金 | |
会社の要件 | 雇用保険の適用事業所であること |
支給の要件 | 売上高等の最近3か月間の月平均値がその直前3か月または前年同期と比べ5%以下減少していること など |
支給額 | 平均賃金額や実費方式により休業手当総額を算出して助成率を乗じるなどの方法により計算する |
申請時期 | 随時 |
4.補助金や助成金を受ける際に気をつけること
補助金や助成金を申請する際には、次のような点に注意しましょう。
4-1.申請期間が決まっているため、申請のタイミングを逃さない
助成金については随時申し込むことができるものが多いですが、補助金は公募期間が決まっており、1年に1回しかないものもあります。
公募の案内があったら早めに必要書類を準備し、申請できるようにしましょう。
4-2.公募要領が変更される場合や補助金・助成金自体が廃止される可能性がある
補助金の公募要領は政策などに応じて改正されることがあります。
申請する際は、必ず最新の公募要領を確認し、要件を満たしているかどうか確認しましょう。
また、補助金や助成金自体が廃止される可能性もありますので、最新の情報を確認することが重要です。
4-3.補助金は審査があるため、必ずしも受けられるとは限らない
助成金は要件を満たすことでほぼ確実に助成されますが、補助金は必ずしも受給できるとは限りません。
採択率が高いと言われる小規模事業者持続化補助金であっても、近年の採択率は60%程度になっています。
補助金の受給を当てにして経営計画を行うことはやめましょう。
4-4.補助金の採択後すぐに受給できるわけではない
補助金は採択後すぐに受け取ることはできません。補助金の種類によりますが、小規模事業者持続化補助金の場合は、採択後に交付申請を行ってから1~2か月程度かかります。
早めに受け取るためには、採択後は速やかに交付申請を行うことが重要です。
まとめ
補助金や助成金は国や地方自治体が行うサポート制度ですので、利用しなければもったいない制度です。
会社設立前後であっても利用できる制度もありますので、どの制度が利用できるのかをよく検討してみましょう。
Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所では会社設立のサポートを行っており、補助金や助成金についてのご相談も承っています。
他士業と連携してワンストップ対応でサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
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