更新日:2024.05.24
公開日:2024/5/20
バーチャルオフィスとは?法人登記はできる?メリット・デメリットを解説!
StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
会社を設立するためには「会社の住所」が必要になりますが、コンサルティング業、Web制作業、エンジニア業、映像編集業など、最近ではパソコン1台あれば事業を行えるため、会社のオフィス(住所)を必要としない方が増加しています。
「会社を設立したいけど、高いお金を出してまで事務所を借りる必要性を感じない」という方にぴったりなサービスが「バーチャルオフィス」です。
バーチャルオフィスを利用することで、会社設立の初期費用を抑え、その後のランニングコストも削減することができます。
ここでは、会社設立する際に利用できる「バーチャルオフィスについてのメリット・デメリット」をわかりやすく解説します。
事務所が必要ない事業で起業を検討している方は、ぜひご一読ください。
バーチャルオフィスは「仮想の事務所」
バーチャルオフィスは「仮想の事務所」であり、事業に必要な「住所」を貸し出すサービスのことを言います。
実際に事務所を貸し出すわけではないため、オフィスワークは別の場所で行うことになります。
バーチャルオフィスを利用することで「会社の住所はバーチャルオフィスで、実際の仕事は自宅で行う」といった利用方法が可能です。
【一般的なバーチャルオフィスのサービス】
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1-1.レンタルオフィスとの違い
バーチャルオフィスと似たサービスで「レンタルオフィス」があります。
レンタルオフィスは実際にデスクや電話、インターネット環境などを貸し出すサービスのことを言い、レンタルオフィスを契約することで仕事場として利用できます。
バーチャルオフィスが住所のみを貸し出すサービスであるのに対し、レンタルオフィスは実際にオフィスを貸し出すサービスという違いがあります。
レンタルオフィス事業を行いながら、バーチャルオフィスを提供する事業者も多く存在します。
バーチャルオフィスで法人登記はできる?
バーチャルオフィスを会社の住所地として法人登記することは可能です。
「実際に仕事をしていない場所を会社の住所にすることに違法性はないのか?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思いますが、バーチャルオフィスそのものに違法性はなく、商業登記法上でも問題なく本店所在地に利用することができます。
2-1.バーチャルオフィスで法人登記ができないケース
基本的には、バーチャルオフィスの住所を本店所在地とした法人登記は可能です。
ただし、すでに同じ住所に同じ法人名がある場合には法人登記を行うことができません。
バーチャルオフィスは、1つの住所を複数の法人でシェアすることになるため、同じバーチャルオフィスを利用している法人と住所が同じになります。
万が一、同じバーチャルオフィスを利用している法人の名称が法人登記しようとしている法人名と同じである場合は、法人登記できません。
事前に法務省が提供している「登記・供託オンライン申請システム」などを利用し、同じ商号ではないかを調査しておくといいでしょう。
2-2.バーチャルオフィスの利用に問題がある業種
許認可や資格の関係で、次の業種についてはバーチャルオフィスを利用して事業を行うことはできません。
【バーチャルオフィスの利用に問題がある業種】
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バーチャルオフィスで法人登記をするメリット
バーチャルオフィスを利用する最大のメリットは「手軽に利用できる」点です。
加えて「プライバシーの保護」「海外進出が容易になる」などがあげられます。
3-1.手軽に利用できる
実際にオフィスを借りると家賃や敷金、礼金に加え、オフィス設備の購入、インターネットの開通など、多額の初期費用とオフィスを作り上げるまでの時間が必要になります。
一方、バーチャルオフィスであれば、契約するとすぐに住所が利用できるため、会社設立にかかる期間を短縮することができます。
バーチャルオフィスは初期費用がほとんど必要なく、ランニングコストについてはサービスオプションによりますが月額2,000円から30,000円程度で利用することができます。
バーチャルオフィスによる会社設立は、費用を抑え、手軽に事業を始めたい人におすすめです。
3-2.プライバシーの保護に繋がる
会社設立時に申請した住所(本店所在地)は、会社の登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されます。
登記簿謄本は法務局によって管理され、誰でも登記簿謄本を取り寄せて情報を確認することが可能です。
「自宅で仕事ができる」などの理由により、自宅を本店所在地として法人登記を行った場合、登記簿謄本に自宅の住所が記載されることになり、プライバシーを確保できません。
自宅で仕事する場合は、バーチャルオフィスの住所を利用して法人登記を行うことでプライバシーを保護することが可能です。
3-3.海外進出が容易になる
バーチャルオフィスは多様化が進んでおり、住所の貸し出しや郵送物の転送などのサービス以外にも秘書や受付代行サービス、会議室貸し出しサービスなどを提供している事業者が増加しています。
中には、海外在住者向けに郵便物の海外転送サービスを行っている事業者もあり、海外在住者が容易に日本進出することが可能です。
特に、平成27年より代表者全員が日本に住所を有していなくても法人登記ができるようになっていますので、日本に居住していなくてもバーチャルオフィスを利用し、維持費を抑えてビジネスを行うことができます。
バーチャルオフィスで法人登記をするデメリット
バーチャルオフィスを利用した法人登記には、実際にオフィスがないため、デメリットもあります。
バーチャルオフィスで法人登記をするデメリットを見ていきましょう。
4-1.来客対応が難しい
バーチャルオフィスでは、オフィスへの来客対応が難しくなります。
バーチャルオフィスにスタッフが常駐している場合であれば、来客受付・対応のオプションを付けることで対応できるケースもあります。
しかし、スタッフ非常駐のバーチャルオフィスの場合は、オフィスに来客があっても誰も対応することができず、取引先からの信頼を失ってしまうおそれがあります。
来客がある業種を運営する場合は、コミュニティマネージャーが常駐し、来客対応が可能なバーチャルオフィスを選択するといいでしょう。
4-2.信頼性が低いとみなされるケースがある
バーチャルオフィスは、実在しているオフィスではないため「実在する会社なのか?」と疑われる可能性があります。
また、バーチャルオフィスは、取引先からの訪問によるコミュニケーションが取りにくいといったデメリットもあります。
その結果、取引先から疑いの目を向けられ「信頼性が低い」とみなされるケースもあります。
また、バーチャルオフィスは手軽に利用できるといったメリットがある一方で、詐欺業者などの犯罪に利用されるケースもあります。
2008年よりバーチャルオフィスは「犯罪収益移転防止法」の規制対象になり、犯罪が抑止されています。
しかし、昔の「バーチャルオフィス=犯罪に使われやすい」というイメージを持っている人もいます。
4-3.社会保険加入時の書類の保管先をしっかりと説明する必要がある
会社を設立し、社会保険に加入する際、バーチャルオフィスだと「重要書類の保管場所があるかの確認」をされることがあります。
実際にオフィスを借りているわけではないため、バーチャルオフィスを重要書類の保管先に指定することはできません。
保管先に困る場合は、バーチャルオフィスに重要書類の保管サービスがあるかどうかを確認してみるといいでしょう。
バーチャルオフィスで法人口座の開設は可能か?
「バーチャルオフィスだと銀行の法人口座の開設ができない」と心配されている方もいらっしゃるのはないでしょうか。
確かに、バーチャルオフィスだと法人口座の開設は通常よりも難しくなります。
その理由は「バーチャルオフィスが犯罪収益移転防止法の規制対象になっているから」です。
犯罪収益移転防止法は、バーチャルオフィスが犯罪に利用されないための法律です。
しかし、裏を返せば犯罪に利用される可能性があるともとれるため、金融機関では法人口座開設の審査を厳しくせざるを得ない状況になっています。
バーチャルオフィスだと法人口座が必ずしも作れないわけではなく、ある程度の資本金で会社設立を行い、事業内容を明確にし、必要書類をもれなく準備することで口座開設審査を通過できる可能性が高くなります。
金融機関によって審査基準が違うため、複数の金融機関に申し込むといいでしょう。
バーチャルオフィスで法人登記をする場合の注意点
6-1.口座開設や融資に影響がないかを確認する
バーチャルオフィスで設立した会社への口座開設や融資は「一般の会社と比べて審査が厳しくなる」または「追加で書類の提出が必要になる」というのが多くの金融機関の見解です。
口座開設、融資の相談をしようと考えている金融機関がある場合は、事前に「バーチャルオフィスで設立した会社の口座開設は可能かどうか」を相談してみましょう。
審査を受ける場合は「事前準備が重要」です。
事業実態があることが確実にわかる事業計画書や決算書などの準備、会社のホームページの作成、固定電話の契約などを済ませ、事前準備を万全にして審査に挑みましょう。
6-2.許認可や届出が必要な事業には適していない
前述した「バーチャルオフィスの利用に問題がある業種」は、バーチャルオフィスによる会社設立に適していません。
許認可が取れなかったり、後々トラブルに発展してしまったりする可能性がありますので、運営する事業の許認可、届出をしっかりと確認してみましょう。
6-3.他の会社と住所が重複する可能性がある
「同一住所で同一法人名が既にある場合」は、その法人名で会社設立を行うことができません。
「同じバーチャルオフィスを利用している法人に同じ法人名があるわけないと思い込み、チェックせずに会社設立を進めて、結果的に法人設立できなかった」といったことが100%ないとは限りません。
商号調査はオンラインでできますので、必ず行うようにしましょう。
6-4.事前にリスク対策を行っておく
バーチャルオフィス事業者の中には、バーチャルオフィスのデメリットを解消できるサービスを提供している事業者もあります。
例えば、来客対応ができる「バーチャルオフィス受付・来客対応サービス」、電話を代行してくれる「電話秘書代行」など、サービスの種類は様々です。
バーチャルオフィスの選択は、サポート体制やサービス面、運営者が信頼できるかなど、総合的に判断して決めるといいでしょう。
まとめ
バーチャルオフィスを利用することで、初期費用を抑え、手間をかけずに会社設立を行うことができます。
エンジニアやマーケッターなど、対外的なオフィスを必要としない事業の運営とマッチした方法だと言えます。
ただし、バーチャルオフィスだからこそのデメリットもありますので、バランスを考えながら会社設立を進めていく必要があります。
Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所では、依頼者様の考え方や事業形態をお伺いしながら、そのような形で会社設立、運営を行っていけばいいのか、ご一緒に考え形にしていきます。
会社設立のご相談については無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。
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