公開日:2024/8/6
起業や会社設立に税理士は必要?判断するポイントや税理士事務所の選び方について解説
StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
個人事業主として起業を考えている人や会社設立を考えている人が悩むポイントの1つに「税理士に依頼するべきかどうか」というものがあります。
結論から言うと、起業や会社設立の際には、必ずしも税理士に依頼する必要はありません。
しかし、税理士に依頼しなかったばかりに、届出が漏れてしまい余計な税金を払うことになってしまったり、資金繰りや資金調達が全然うまくいかなくなってしまったりするおそれがあります。
起業して「今から頑張るぞ」と意気込んでいるところで手続きや資金調達で苦労してしまわないように、ここでは「起業・会社設立時の税理士選びのポイントや依頼するタイミング」などについて詳しく解説します。
起業や会社設立を考えている方で税理士選びに迷っている方は、ぜひ最後までお付き合いください。
起業や会社設立に税理士は必要か
個人事業主としての起業や会社設立は、税理士に依頼しなくても自分で行うことが可能です。
個人事業主の場合は「個人事業の開業届」を税務署に提出するだけで起業することができます。
会社設立する場合には、専門的な知識や会社設立まである程度の期間が必要になります。
1-1.起業や会社設立を自分で行うのは可能、でも結果的に損することも
起業や会社設立手続き自体を自分で行うことは可能です。
しかし、税理士のサポートがないため、結果的に損してしまうことが考えられます。
起業や会社設立を税理士に任せる大きなメリットは「無駄な税金を支払わなくて済むこと」です。
起業や会社を設立すると所得税や法人税、消費税などが密接に関わってくることになり、税務に関する知識が必要不可欠です。
税金に関する知識がないために判断を誤ってしまったり、届出を怠ってしまったりして、本来は払わなくていい税金を支払わなければならなくなるおそれもあります。
1-2.タイミングやメリットなどを理解して必要性を判断する
「税理士のサポートが必要かどうか」については、サポートを受けるタイミングやメリットなどをよく理解し、必要性を判断しましょう。
判断基準として、次に紹介するポイントを考えてみるといいでしょう。
ポイント①税理士に依頼するタイミング
税理士に依頼するタイミングについては、特に決まっているものではないため、税理士に依頼するメリットを理解したうえで必要性を感じた時に相談すればいいと思います。
一般的に、起業・会社設立する方にとって税理士が必要になるタイミングは3つあります。
2-1.起業時・会社設立時
「初めから税理士のサポートを受けたい」という方は、起業時・会社設立時から税理士に依頼することで、様々なメリット受けることができるため、ベストなタイミングと言えるでしょう。
会社設立を依頼する場合であれば、自分で会社設立するよりも安く手続きすることができますし、会社の決算期や事業内容などの登記事項を税理士と相談しながら税負担や資金繰りに配慮して決めることができます。
また、経理方法のアドバイスや財務諸表の見方を教えてもらうことで経営者としての知見を深めることができます。
2-2.個人事業主が会社を設立して、事業を法人に引き継ぐとき(法人成り)
個人事業主で、ある程度売上高が増加している場合には、会社を設立し、法人成りを行うことで「節税対策の幅を広げる」ことができます。
法人成りすることで社会的信用がアップするため、個人事業主から会社に移行する方も多くいます。
法人成りを行うにあたり、どれくらいの税負担や社会保険料の負担を抑えることが可能なのか、消費税の課税事業者の兼ね合い(免税期間とインボイス制度、原則課税と簡易課税の有利判断)などを考える必要があるため、法人成りは通常の会社設立よりも複雑です。
また、法人成りのタイミングによっては節税効果が少なくなることもあるため、法人成りのタイミングは税理士に依頼する1つのタイミングと言えるでしょう。
2-3.1期目の決算(確定申告)前
起業時・会社設立時に税理士に依頼していない場合、個人事業主は事業開始後初めての確定申告前、会社の場合は1期目の決算前のタイミングが税理士に依頼するタイミングです。
日々の会計処理をもとに決算書を作成するには会計の知識が必要になり、所得税の確定申告書や法人税の申告書の作成には税務の知識が必要になるため、税理士に依頼せずに自分でこれらの税務関係書類を作成することは非常に困難です。
自分で作成できたとしても、税務調査で認識不足や計算ミスなどにより追徴課税されるおそれもあります。
所得税の確定申告や会社の決算は、税理士に依頼したほうが間違いありません。
ただし、確定申告間近や決算間近になって税理士を探すと、対応してもらえないケースがあるので、期間に余裕を持って相談しましょう。
ポイント②税理士と司法書士、行政書士の違い
会社設立の専門家には、税理士、司法書士、行政書士がおり、専門家によって業務の範囲が異なります。
どの専門家がどんなことができるのかを理解することで、自分はどの士業に相談すればいいのかを明確にすることができます。
【各士業の会社設立について可能な業務】
税理士 | 司法書士 | 行政書士 |
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3-1.税理士は会社設立の手続き代行はできない
会社設立する場合には「会社設立登記」が必要です。
登記は司法書士の独占業務であるため、司法書士以外の士業が登記をサポートすることはできません。
各士業の役割をまとめると「会社設立登記なら司法書士」「特殊な業種であり認可手続きが必要であれば行政書士」「継続的に経営や税務の相談をする場合は税理士」です。
会社設立だけを依頼するのであれば司法書士、事業開始後の会計や税務を依頼したいのであれば司法書士+税理士といったように自社の状況に応じて選択すればいいでしょう。
3-2.士業の提携先をもつ税理士に依頼すれば、会社設立の手続きは可能
税理士は会社設立登記を行うことはできませんが、他士業と提携している税理士に依頼することで提携の司法書士や行政書士が代理で手続きを行うことができます。
士業同士が連携しワンストップで手続きが完了するため、依頼する側の手間が省け、利便性が高いサービスを受けることができます。
ポイント③税理士に相談するメリット
4-1.会社設立するタイミングや法人形態についてアドバイスをもらえる
会社を設立する場合や法人成りをする場合には、税金や社会保険料などについてしっかりと理解しておかなければなりません。
税理士に依頼することで「会社を設立するタイミング」や「どの会社形態で設立するほうがいいのか」「資本金はいくらぐらいにしたほうがいいのか」など、具体的なアドバイスをもらうことができます。
4-2.決算月や役員報酬の決め方のアドバイスがもらえる
「会社の決算月を何月にしたほうがいいのか」「役員報酬はいくら支給すればいいのか」
これらは会社設立の際に悩んでしまうポイントです。どちらも会社を経営していくうえで重要な要素になるため、慎重に検討しなければなりません。
税理士は様々な業種のデータを持っていることが多く、今後の売上予測や資金繰り、業界の繁忙期などをふまえて専門的なアドバイスを提供することができます。
特に役員報酬額の決定は法人税と個人の所得税、社会保険料の負担額に影響を与えるため、税理士に相談しながら決めることをおすすめします。
4-3.他の士業と提携して進めてもらえる
他士業提携の税理士の場合、士業間のネットワークによりワンストップでの会社設立サービスが可能です。
ただし、士業のネットワークをもつ税理士かどうかは契約前に確認する必要があります。
4-4.融資や補助金などの資金繰りの支援をしてもらえる
会社設立後に直面する資金調達や補助金などの資金繰りについても税理士に相談することができます。
資金調達や補助金の申請には、事業の見通しを詳細に記した「事業計画書」が求められ、その内容が融資審査や補助金の審査に直結します。
税理士に相談することで、より信頼性の高い事業計画書の作成が可能になります。
4-5.会計処理や節税対策のアドバイスをもらえる
税理士は会計と税務の専門家です。依頼することで会社の会計処理や正しい方法での節税についてのアドバイスを受けることができます。
「自分で経理処理するのは難しい」といった場合には、税理士に記帳代行を依頼することも可能です。
4-6.税務書類の作成や提出を行ってくれる
「税務書類の作成」は税理士の独占業務です。
複雑で難しい法人税申告書や消費税申告書、所得税申告書を依頼者に代わって作成し、税務署へ提出を行います。
ポイント④税理士にかかる費用
税理士に依頼する場合には費用がかかります。
おおよその費用相場は次のとおりです。
起業、会社設立時の相談 | 60分1万円 |
顧問契約した場合 | 月額3万円~ |
記帳代行を依頼する場合 | 月額1万5,000円~ |
決算申告の場合 | 20万円~ |
※個人か法人か、売上高、訪問回数、作業量などによって費用は異なります。まずは見積りを依頼してみましょう。
起業や会社設立時の税理士の探し方
起業や会社設立を行う際の税理士の探し方には次のような方法があります。
- インターネットで探す
費用もかからず手軽の方法ですが、インターネットの情報の正確性がわからないというデメリットがあります。
- 知人からの紹介
知人が依頼している税理士や知っている税理士を紹介してもらう方法です。
知人から前もって人柄などの情報を得ることができるメリットがあります。しかし、相性が合わなかった場合に断りづらいというデメリットがあります。
- 金融機関や保険会社からの紹介
金融機関や保険会社から税理士を紹介してもらえる場合もあります。
紹介してもらえる税理士は金融機関や保険会社とパイプを持っていることが多く、融資に強い税理士である可能性が高いです。
しかし、知人からの紹介と同様に断りづらいというデメリットがあります。
税理士の探し方は「良い税理士事務所はどう探す?選び方や探し方、ポイントを解説!」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
起業や会社設立時の税理士を選ぶための基準
起業や会社設立時の税理士選びのポイントは次の5つです。
7-1.会社設立実績が多い
税理士によって得意な税目が異なるため、税理士を選ぶ際には会社設立の実績が豊富かどうかを確認しましょう。
会社設立を請け負った実績が少ない税理士や相続税を中心に請け負っている税理士を選んでしまうと求めている要求に応えてもらえないおそれがあります。
7-2.他士業と連携している
税理士は会社設立登記が行えないため、会社設立業務を行うためには少なくとも司法書士との連携が必要です。
士業同士の横のつながりがしっかりしているかを確認しましょう。
7-3.サービス内容と費用が許容範囲である
税理士がどのようなサービスを提供しており、どれくらいの費用が発生するのかを契約前に明確にしておきましょう。
費用が高いからサービスが良い、安いからサービスが悪いという判断ではなく、しっかりと事前に見積りを提示してもらい、予算に合った税理士を選ぶようにしましょう。
7-4.コミュニケーションとレスポンスの速さ
「質問しても回答が1週間後」「電話しても繋がらない」など、コミュニケーションが取れない、レスポンスが遅い税理士は選ばないようにしましょう。
重要な問い合わせのレスポンスが遅いと経営判断にも影響しかねません。
電話にでられなくても、時間を見つけてすぐ折り返してくれる税理士を選びましょう。
7-5.担当者との相性がいい
税理士に依頼すると税理士との窓口として担当者がつくことがあります。
実際のやり取りは税理士よりも担当者と行うことが多いため「担当者との相性がいいかどうか」もチェックしてみましょう。
まとめ
起業や会社設立自体は税理士に依頼しなくても行えますが、事業がスタートした後の経理業務や税務申告に不安がある場合には、起業や会社設立の段階から税理士に依頼しておくと安心です。
税理士資格を持っていても、税理士の得意なジャンルや人間性は様々であるため、税理士選びはなかなか骨の折れる作業になると思います。
実際に会ってみて相性を見ながら選んでみてはいかがでしょうか。
Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、即日レスポンスを基本とし、事業の成長を後押しするパートナーです。
何でもご相談していただけますので、起業や会社設立を検討されている方はぜひ当事務所にご連絡ください。
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