会社設立

公開日:2024/8/21

会社設立は自分でできる?会社設立の流れや費用について解説

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

会社を設立して事業をスタートさせたい場合、「なるべく会社設立費用を抑えたい」と考える方もいるのではないでしょうか。

会社設立費用を抑えたい場合には「自分で会社設立手続きをすべて行う」という方法があります。

会社設立を専門家に依頼すると費用が発生しますが、自分で会社設立手続きを行う場合は、手数料・印紙代・登録免許税の負担だけになるため、会社設立にかかる費用を抑えることが可能です。

 

しかし、会社設立にかかる手続きをすべて自分で行わなければならないため、会社設立に関する知識と手続きに費やす時間が必要です。

ここでは「会社設立を自分で行う場合の流れや費用」について詳しく解説します。

専門家の選び方も解説いたしますので、会社設立を検討されている方はぜひ最後までお付き合いください。

会社設立の手続きは自分でできるのか

会社設立手続きは、専門家に依頼しなくても自分でできます。

「初期費用を抑えて、事業の資金に充てたい」「自分の会社だから最初から自分で手続きをしたい」など、会社設立を自分で行うおうと思っている方もいらっしゃると思います。

しかし、会社設立手続きを自分で行うメリットとデメリットをよく理解しておかなければ「専門家に頼んでおけばよかった」と会社設立後に後悔してしまうおそれもあります。

会社設立手続きを自分で行うメリットとデメリットを見てみましょう。

1-1.自分で会社設立手続きを行うメリット・デメリット

自分で会社設立手続きを行うメリットとデメリットは次のとおりです。

メリット

デメリット

  • 初期費用を抑えられる
  • 会社設立に関する知識を得られる
  • 会社法や税金に関する知識を得られる
  • 間違っていても誰からも指摘してもらえない
  • 設立準備に時間と手間が取られ、事業に費やす時間が圧迫される

1-1-1.メリット

自分で会社設立手続きを行う大きなメリットは「初期費用を抑えられること」です。

専門家に依頼した場合には、定款認証手数料や登録免許税など、必ず支払いが発生する費用の他に専門家への報酬が発生します。

自分で行う場合には、専門家への報酬が発生しないため初期費用を抑えることが可能です。

 

また、会社設立手続きを行うにあたり、会社を設立するための知識や経験を得ることができるでしょう。

1-1-2.デメリット

自分で会社設立手続きを行うデメリットは「将来的なリスクがあること」と「手続きについて調べる時間や手間がかかること」です。

自分で手続きを行う場合、専門家からのアドバイスを受けることができないため、設立後に「資本金1円で設立したため、信用が低く融資が受けられない」「資本金を1,000万円以上にしたため1期目から消費税を払わなければならなくなった」など、将来的なリスクが発生します。

 

また、設立手続き方法や書類の準備に追われ、本業に費やす時間が圧迫されるなどのデメリットがあります。

費用面では自分で手続きを行ったほうがお得ですが、経営者の役割は重要であり、時給に換算すると高額になる場合がほとんどです。

経営者の貴重な時間を本業以外に費やすことは大きなデメリットと言えるでしょう。

会社設立の手続きの流れ【法人登記まで】

自分で会社設立手続きを行うには、どんな手続きが必要になるのか、どんなスケジュールで行えばいいのかを正確に把握する必要があります。

設立手続きは「会社の法人登記までの手続き」と「法人登記後の手続き」の2段階になっています。手続きの内容を具体的に見ていきましょう。

2-1.①会社の基本事項の決定

会社を設立する際には「どんな会社にするのか」を決める必要があります。

次の5つの項目は基本事項として必ず必要なので、最初に決めておきましょう。

  1. 商号をどうするか(会社名)
  2. 会社を立ち上げた人は誰か(発起人)
  3. 会社の本店所在地をどこにするのか(本店所在地)
  4. 事業を行う目的は何か(事業目的)
  5. 資本金をいくらにするのか

2-2.②法人用の実印の作成

会社設立する際には、原則的に法人用の実印が必要です。

オンライン申請では実印の提出は任意となっていますが、実印は取引先との大事な契約や不動産の売買時などに必要になりますので、必ず作成しましょう。

印鑑を作成する際には、実印・銀行印・角印をまとめて作っておくと、その後の手間を省くことができます。

2-3.③定款の作成

会社の基本的なルールブック(規則)である「定款」の作成を行います。

定款には「①会社の基本事項の決定」で決めた項目を記載することになりますが、定款に必ず記載が必要になる「絶対的記載事項」は設立する会社の形態によって若干異なります。

【株式会社を設立する場合】

  • 事業目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名又は名称と住所
  • 発行可能株式総数

 

【合同会社を設立する場合】

  • 事業目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 社員の氏名又は名称および住所
  • 社員全員が有限責任社員である旨
  • 社員の出資の目的及びその価値または評価の基準

 

その他、定款に記載しなければ有効にならない事項(相対的記載事項)や任意で定款に記載する事項(任意的記載事項)がありますので、どんな事項が必要になるのかをよく検討しましょう。

 

定款は紙媒体、または電子定款で作成することになります。

紙媒体で定款を作成する場合には4万円の収入印紙(印紙税法の課税文書にあたるため)が必要です。

電子定款の場合は課税文書にあたらないため収入印紙は必要ありません。

ただし、作成するためにカードリーダーや電子署名に対応したソフトを用意しなければなりません。

2-4.④定款の認証を受ける(株式会社のみ)

定款を作成した後、法務局が管轄する機関で「定款認証」を行います。

会社の形態が合同会社、合資会社、合名会社の場合は公証役場での定款認証は必要ありません。

定款認証を行う際には、事前に公証役場へ連絡し、FAXなどで定款の事前チェックを行ってもらいましょう。

2-5.⑤資本金の払い込み

決定した資本金の払い込み手続きを行います。

資本金の払い込みは発起人個人の口座で行い、払込証明書を作成します。

会社設立後、会社名義の口座を開設した後に、発起人の口座から会社名義の口座へ移行させる流れになります。

2-6.⑥登記申請書類を作成し、法務局に申請

資本金の払い込み完了から2週間以内に本店所在地の管轄法務局の登記申請を行います。

登記申請に必要な書類は株式会社か合同会社かによって若干異なりますが、次の書類の作成・提出が必要になります。

株式会社 合同会社
  • 登記申請書※1
  • 登録免許税納付用台紙
  • 認証済の定款
  • 発起人の決定書※1
  • 取締役の就任承諾書
  • 代表取締役の就任承諾書
  • 監査役の就任承諾書
  • 取締役全員の印鑑証明書
  • 資本金の払込証明書
  • 法人の印鑑届出書
  • 「登記すべき事項」(商号や本店所在地など)を記録した電子媒体(CD-R
  • 登記申請書※1
  • 登録免許税納付用台紙
  • 定款
  • 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
  • 代表社員の就任承諾書
  • 資本金の払込証明書
  • 資本金の額の計上に関する代表社員の証明書

1 登記申請書は法務局のホームページよりダウンロードできます。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html

2 定款に本店所在地を記載していない場合に必要です。

 

法務局に登記申請書を提出した日が会社設立日になります。

設立日にこだわりたい方は注意しましょう。

 

登記申請の際に、登録免許税の納付が必要です。

納付方法は、収入印紙による納付(印紙を納付用台紙に貼付け)、法務局の指定口座へ税額分を入金する方法(領収証書を納付用台紙に貼付け)、インターネットバンキングによる方法があります。

登録免許税の納付金額は株式会社と合同会社で税額が異なりますので注意しましょう。

 

株式会社の登録免許税 資本金×/1,000

15万円に満たないときは15万円

合同会社の登録免許税 資本金×/1,000

※6万円に満たないときは6万円

会社設立の手続きの流れ【法人登記後】

法人登記を完了しただけでは、会社として事業を行えません。

事業を行えるようにするためには、次の手続きが必要です。

3-1.①税務署への届出

税務署へは次の3つの届出を必ず提出しなくてはなりません。

各届出書は国税庁ホームページよりダウンロードできます。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/yousiki.htm

 

届出書 内容 提出先 提出期限
法人設立届出書 法人税・消費税などを納付する法人を新たに設立したことを届け出る書類 納税地の所轄税務署 法人設立の日以後2か月以内
棚卸資産の評価方法の届出書 材料や商品などの棚卸資産の計算方法を届け出る書類 最初の事業年度の確定申告書の提出期限まで
減価償却資産の償却方法の届出書 固定資産などの減価償却方法を届け出る書類

※提出の際には登記簿や定款の写しなどの添付書類が必要です。

 

次の5つの書類は、必要に応じて提出が求められる書類です。

対象 届出書 提出先 提出期限
役員や従業員に報酬、給与を支払うとき 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 給与支払事務所等の所在地の所轄税務署 給与支払事務所等を設けてから1か月以内
源泉所得税の納期の特例を受けるとき 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 随時(給与の支給人員が常時10人未満の場合)
青色申告で申告したいとき 青色申告の承認申請書 納税地の所轄税務署 法人設立の日以後3か月を経過した日又は最初の事業年度の終了日のいずれか早い日の前日まで
資本金の額又は出資金の金額が1,000万円以上のとき 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 速やかに
設立時から適格請求書発行事業者の登録を受けたいとき 適格請求書発行事業者の登録申請書 最初の事業年度の終了の日まで

 3-2.②都道府県・市区町村への届出

会社の納税地である都道府県、市区町村にそれぞれ「法人設立等申告書」(大阪府の場合の名称)の提出が必要になります。

書類は各都道府県・市区町村のホームページからダウンロードできますので「法人設立届出書 〇〇県」「法人設立届出書 〇〇市」というように検索してみましょう。

提出の際には登記簿や定款の写しなどの添付書類が必要です。

※東京23区内が本店所在地の場合は、市町村区役場への提出は不要です。

3-3.③年金事務所への届出

社会保険への加入が法的に義務付けられているため、社長1人の会社であっても社会保険に加入しなければなりません。

(役員報酬がない場合、あるいは報酬が保険料を下回る場合を除く)

 

加入手続きには次の書類の提出が必要です。

届出書 添付書類 提出先 提出期限
健康保険・厚生年金保険 新規適用届
  • 会社の登記事項証明書※1
  • 法人番号指定通知書
事業所の所在地を管轄する年金事務所 法人登記が完了して5日以内
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届  
健康保険 被扶養者(異動)届
  • 扶養家族の収入要件確認のための書類
保険料口座振替納付申出書  

1 提出日から遡って90日以内に発行された「原本」が必要になります。

3-4.④労働基準監督署への届出

「労働保険関係の届出」を所轄の労働基準監督署に提出します。

届出書 提出先 提出期限
保険関係成立届 所轄の労働基準監督署 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
概算保険料申告書 所轄の労働基準監督署

所轄の都道府県労働局

日本銀行(代理店、歳入代理店)

保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内

 3-5.⑤ハローワークへの届出

従業員を雇用する場合には雇用保険の手続きが必要になり、ハローワークへ次の届出を行わなければなりません。

届出書 提出先 提出期限
雇用保険適用事業所設置届 所轄のハローワーク 設置の日の翌日から起算して10日以内
雇用保険被保険者資格取得届 資格取得の事実があった日の翌月10日まで

会社設立を依頼できる専門家

会社設立を依頼できる専門家には、司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士などがあります。

専門家にはそれぞれ得意分野があり、できることとできないことがあります。

  • 司法書士

⇒登記に関する専門家であり、会社設立に関する全ての書類の作成や定款認証、会社設立登記の代行を行うことが可能です。登記申請は司法書士の独占業務のため、他の専門家には依頼することはできません。

  •  行政書士

⇒「行政へ提出する書類」の専門家です。建設業や不動産業などの許認可手続きが必要になる場合にサポートしてもらえます。

  •  税理士

⇒税務関係の書類作成、申請、コンサルティングなど、税務・会計処理・経営に関する専門家です。

  •  社会保険労務士

⇒労働保険関係、社会保険関係、給与計算、労務関連のコンサルティングなどを行う専門家です。労務に関連した手続きの代理申請が行えます。

各士業の役割については「成功する会社設立の相談先を紹介!成功起業の第一歩」で解説していますのでご覧ください。

会社設立パターンごとの費用

会社設立を自分で行う場合と専門家に依頼する場合では、どれくらい費用が異なるのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自分で手続きを行った場合と専門家に依頼した場合、電子定款を利用した場合などの必要をまとめると次のとおりです。

 

  ①自分で手続を行う場合 ②自分で手続を行う場合(電子定款) ③自分で手続を行い、電子定款だけを専門家に依頼 ④自分で電子定款を作成し、他の手続きを専門家に依頼 ⑤すべて専門家に依頼
定款の収入印紙代 40,000
定款認証手数料 50,000 50,000 50,000 50,000 50,000
定款謄本交付手数料 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000
電子定款システム費用 3,000 3,000 3,000
登録免許税 150,000 150,000 150,000 150,000 150,000
電子定款代行料 10,000 10,000
会社手続き依頼料 50,000 50,000
会社の印鑑 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000
印鑑証明書代 2,000 2,000 2,000 2,000 2,000
合計 254,000 217,000 224,000 267,000 277,000

 ※上記は株式会社(資本金300万円以上)の場合であり、合同会社の場合は手数料や登録免許税等が安くなります。

5-1.各パターンの特徴

①自分で手続きを行う場合

紙媒体で定款を作成する場合、収入印紙代が4万円必要になるため、電子定款の場合よりも費用の合計が高額になります。

②自分で手続きを行う場合(電子定款)

自分で電子定款を利用し手続きを行う方法が最も費用が少なくて済みます。

電子定款作成には、専用ソフトとICカードリーダライタの導入が必要になりますが、ソフトは無料でダウンロードが可能であり、ICカードリーダライタは数千円程度で購入することができます。

③自分で手続きを行い、電子定款だけを専門家に依頼

電子定款だけを専門家に依頼する方法は、費用の支出が2番目に少ない方法です。

電子定款だけの依頼であれば、1万円程度が相場になっています。

④自分で電子定款を作成し、他の手続きを専門家に依頼

電子定款のみを自分で作成する場合は、電子定款代行料を節約することができるため、すべて専門家に依頼するよりも若干費用の支出が少なくなります。

ただし、定款作成には注意すべき点が多くあるため、電子定款の作成も専門家に依頼する方が、リスクが少なく効率的です。

⑤すべて専門家に依頼

すべての手続きを専門家に依頼した場合、最も費用がかかってしまいます。

しかし、手続きにかける時間を大幅に削減でき、起業前の大事な時期に本業に専念することができるため、プロに任せる方法が最も有効な方法でしょう。

 

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まとめ

起業される方にとって、会社設立は大きなチャレンジの第一歩です。

手続きを自分で行うこともできますが、自分で作成した定款に誤りがあったり、思った以上に手続きに時間がかかってしまい、なかなか事業をスタートできなかったり、思い通りに進まないことがでてきてしまうおそれがあります。

費用は多少かかってしまいますが、リスクを下げるためにも会社設立の専門家に依頼されることをおすすめします。

 

Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所は、ただの会計事務所ではなく、創業・会社設立から会社を担い、依頼者様の成長を後押しするパートナーです。

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