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更新日:2024.11.14

公開日:2024/11/8

財務戦略とは?経営戦略との違いや必要なスキルを解説!

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

「黒字倒産」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?

会社に十分な売上があり、利益が出ているのにも関わらず、資金繰りがうまくいかずに倒産してしまうことを「黒字倒産」と言います。

黒字倒産までいかなくても「利益が出ているのに資金繰りが厳しい」「売上はあるのに利益が出ない」という場合は、「財務戦略を見直すタイミング」です。

 

財務戦略を見直すことで、お金の流れ(キャッシュフロー)を管理できるようになり、より安定した財務状況を作り出すことができます。

ここでは、会社経営に欠かせない「財務戦略」について詳しく解説します。

間違えやすい経営戦略との違いや財務戦略に必要なスキルについても解説しますので、会社の財務改善を検討されている場合は、ぜひ最後までお付き合いください。

財務戦略とは

財務戦略とは「会社の経営目標の達成に必要な資金をどのように調達し運用するのか」を示した指針のことを言い、言い換えれば「会社の資金の流れを安定させる戦略」とも言えます。

よく会社にとってのキャッシュ(お金)は人間にとっての血液だと例えられます。

血液が体を循環するように、会社もキャッシュを取引先との間で循環させなければ健康な常態を維持することはできません。

 

キャッシュ(血液)が不足している場合は、金融機関からの融資(輸血)も時には必要になります。

健康な常態を維持し、そして会社を成長させる戦略を考えていくこと、それが「財務戦略」です。

1-1.経営戦略との違い

財務戦略と間違えやすい言葉に「経営戦略」という言葉があります。

経営戦略は、営利企業が利益を追求するために事業全体の方向性を決めるための戦略のことを言います。

営んでいる事業の市場環境を分析し、いかにして競合他社よりも優位に事業を進めていけるかを考えることが経営戦略です。

 

一方、財務戦略は、経営戦略を進めるために必要な資金面での戦略のことを言います。

つまり、「経営戦略を実行するために必要不可欠な資金面での戦略が財務戦略」という位置づけになり、経営戦略が主体となり、中長期で計画的にサポートする戦略が財務戦略となります。

 

【経営戦略と財務戦略のイメージ】

財務戦略の立てる前の現状把握

財務戦略を立てる際、非常に重要になることが「現状の把握」です。

会社の現状を把握していなければスタート地点が分からず、意図しない方向に進んでいってしまうかもしれません。

まずは、会社や市場などの現状を正確に把握しましょう。

2-1.経営理念と経営戦略の確認

財務戦略は、経営理念と経営戦略のもとで行われる戦略です。

経営理念と経営戦略を財務戦略に反映させるために次のような項目を確認しましょう。

  • 自社の長期的なビジョンと目的は何か
  • 自社がどの市場で競争していくのか
  • 自社の強みは何か
  • 自社の弱みは何か

2-2.市場環境の確認

世の中はどんどん速いスピードで変化しており、この「スピード社会」についていくには「市場環境」を把握しなければなりません。

市場環境の把握では、次のような項目を確認しましょう。

  • 経済成長率や物価上昇率、為替レートなど、市場を取り巻く経済環境
  • 自社が行っている事業の競争水準や技術発展、法的な規制などの市場環境
  • 競合他社の経営戦略や製品、サービスなどの競合環境

2-3.自社の現状分析

財務分析では、自社における「人・金・モノ(技術)」の現状を正確に把握しなければなりません。

自社が持っている「資源」は財務戦略において必要不可欠ですので、次の項目を分析してみましょう。

  • 自社にどのような人材がおり、どのようなパフォーマンスが期待できるか
  • 自社の資金調達能力、キャッシュフローの管理状況などの資本規模の状況
  • 自社が持っている技術は何か

財務戦略の立て方

現状分析を行った後に、実際にどのような財務戦略を行っていくかを立案、実行していきます。

財務戦略のロードマップは次のとおりです。

3-1.経営戦略を財務諸表に落とし込み、事業計画書の作成

財務戦略では、経営理念・経営戦略を反映した事業計画書の作成を行います。

その際に注意しなければならないことは、いくら経営理念・経営戦略を反映した事業計画書であっても絵空事になってはならないことです。

事業計画書は、しっかりとした根拠のある数字で作成しなければ、実現性の低い事業計画書になってしまい、金融機関からの融資がおりない可能性もあります。

 

事業計画書を作成する際は、経営戦略を直近の財務諸表に落とし込み、数字に説得力がある事業計画書を作成しましょう。

特に損益計算書(P/L)に売上高や利益などの具体的な数値を落とし込むことで、実際に実現可能かどうかが見えてきます。

数値の落とし込みには、次のポイントを意識して作成しましょう。

  • 売上高の予測と利益率の予測が実現可能なものか
  • どんな商品・サービスをどれくらい販売・提供するのか
  • 増加する人件費などの経費が考慮されているか
  • 設備投資にかかる費用はどれくらいか
  • どれくらいの規模の融資が必要になるのか

事業計画は1年だけではなく、中期的に3年から5年程度のものを作成し、最初の1年は月次単位で作成しましょう。

3-2.事業計画書をもとにした資金調達計画を作成

事業計画書を作成した後は、その事業計画書をもとに資金繰り表を策定し「いつ・どのくらいの資金が必要になるのか」を明確にし、資金調達計画の作成を行います。

資金繰り表の策定には、次のポイントを意識しましょう。

3-2-1.毎月の収入・支出を把握する

事業計画をもとに毎月の収入・支出の把握を行います。

ここで重要になることは、利益を把握することではなく、キャッシュの流れを把握することです。

例えば、売掛金の入金が2か月後で買掛金の支払いが1か月後になっている場合、キャッシュの回収と支出に1か月のタイミングのズレが発生します。

 

回収が遅く、支出が早い場合、キャッシュフローは不利になり、利益が出ていてもキャッシュが足りないといった状況になってしまうおそれがあります。

必ずキャッシュベースで毎月の収入と支出を把握しましょう。

3-2-2.キャッシュが必要なタイミングを把握する

設備投資や大規模な修繕が予定されている場合には、その支出を反映させた資金繰り表を作成しましょう。

キャッシュの不足やキャッシュが大幅に減少する場合には、何かしらの手当が必要になります。

3-2-3.キャッシュフロー改善計画の策定

常態的にキャッシュフローが悪化している場合は、改善する方法を模索しましょう。

債権回収の徹底、不良在庫や遊休資産の処分、売上回収サイトの短縮・支払いサイトの延長、自己資本の増加など、利益を上げる以外にも様々なキャッシュフローの改善方法が考えられます。

3-2-4.資金調達方法を検討する

キャッシュが不足すると分かっている場合には、事前に資金調達方法を検討しましょう。

金融機関からの融資や不要な資産の売却、補助金・助成金の活用など、自社が利用できる資金調達方法を事前に把握し、資金調達計画の作成を行いましょう。

3-3.計画に沿って実行し、財務基盤を盤石なものにする

資金繰り表、資金調達計画の作成後は、その計画に沿って実行していきます。

資金不足においては足りないと分かってから行動に移しては遅すぎます。

常に先のことを見越して手当を行うようにしましょう。

 

キャッシュを中心とした財務戦略を行うことで、自社の財務基盤を盤石なものにすることが可能になります。

利益だけに着目するのではなく、財務面にも着目した戦略を立てることが重要です。

財務戦略立案に必要なスキル

財務戦略を立てるには、大前提として会社の現状を冷静に分析できる会計の知識が必要不可欠で、またその分析結果と経営戦略を結びつける能力も必要になります。

数字の分析・数字での計画だけできても、それを実行する能力がなければ数字遊びであり、財務戦略にはなりません。

そのため、分析した現状と将来像を経営陣や資金調達元になる金融機関に提案するプレゼンテーション能力も求められます。

財務戦略立案に必要なスキルについては「財務戦略とは?やることや必要なスキルを解説!」で簡単に紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

財務戦略を立てる際に意識すべきポイント

財務戦略を立てる際には、次の3つのポイントが特に重要です。

この3つのポイントを意識するだけでも、財務戦略を実現できる可能性が格段に向上しますので、必ずチェックするようにしましょう。

5-1.徹底した現状の把握

財務戦略だけでなく、何事も「現状を知ること」が初めに行うことであり、最も重要なことです。

現状把握を行わなければ、今会社が良い状態なのか、それとも悪い状態なのかも分からず、スタート地点が曖昧になってしまいます。

会社の現状を把握し、どの程度の改善が必要になるのかを知るためにも、まずは徹底した現状の把握を行いましょう。

財務面での現状把握には、直近の決算書や試算表をもとに次の4つの手法を用いることが一般的です。

 

①収益性分析

収益性分析は、会社が収益をあげられているかを判断する手法です。

財務諸表より以下の指標を用いて、比較分析します。

  • 売上高総利益率
  • 売上高営業利益率
  • 売上高経常利益率
  • 売上高当期純利益率

 

②安全性分析

会社が安定して継続的に事業を続けられるかを判断する手法が安全性分析です。

主に資金繰りが安定しているかどうかを判断するものであり、次の指標を用いて行います。

  • 株主資本比率
  • 流動比率
  • 当座比率
  • 固定比率

 

③生産性分析

会社にあるリソース(ヒト・モノ・カネ)を効率的に利用し、どれくらいの成果をあげているかを図る手法が生産性分析です。

生産性分析では、次の指標を用いて判断を行います。

  • 労働生産性
  • 労働分配率
  • 労働装備率
  • 有形固定資産回転率
  • 売上高付加価値率

 

④成長性分析

成長性分析は、会社がどの程度成長し、業績を伸ばしているかを判断する手法です。

次の指標を用いて分析を行います。

  • 売上高増加率
  • 経常利益増加率
  • 営業利益増加率
  • 総資本増加率

など

5-2.経営陣の意思を把握する

財務戦略は、経営戦略の手段として用いられる戦略です。

会社の理念やビジョンを反映した経営陣の意思を把握し、経営戦略を成功に導くための財務戦略を立案する必要があります。

 

例えば、経営陣が安定性を重視した経営戦略である場合には、収益の安定性や安定した資産運用、財務コストの削減などを中心とした財務戦略を立てます。

攻めを重視した経営戦略であれば、多少のリスクを受け入れた投資や収益を増大させる財務戦略を立てることになります。

5-3.財務視点で経済環境を理解する

財務戦略を考える際には、財務の視点で経済環境を理解する必要があります。

財務の改善のために株主などの利害関係者に対してどのような行動を取ればいいのかを理解しなければなりません。

 

その他、社会情勢や為替、物価上昇率など、自社が直接的に影響を与えることができない「マクロ環境分析」や市場や競合会社、顧客の分析など、自社の事業が一定の影響を与えることができる「ミクロ分析」を財務視点で理解し、策定する財務分析に取り込んでいくことが重要です。

まとめ

財務戦略は、会社の経営戦略を財務面から支える非常に重要な戦略です。

会社の財務リスクを軽減し、継続して会社を成長させるために必要不可欠な戦略ですので、「まだ考えたことない」という場合は、ぜひ一度、財務戦略について考えてみてはいかがでしょうか。

 

Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、会社の成長を応援しています。

財務戦略から融資支援まで、税理士事務所の枠を飛び越えてサポートを行っております。

 

「財務戦略を立てたいけど、どうしたらいいのかわからない」

そんな時は、ぜひ当事務所にご連絡ください。

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