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公開日:2024/11/18

予実管理とは?メリットや必要性、手順について解説

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

会社経営では、プロジェクトや事業ごとに予算を組み、予算を目的として実行していくプロセスが利益を生み出すうえで非常に重要です。

予算を組まずに事業を行うと「最終的に赤字になっていた」といったリスクを負いかねません。

目標を達成するために収入や経費の予算を組むことを「予算管理」と言い、会社経営にとって必要不可欠なプロセスです。

そして、組んだ予算と実際の業績を比較、検討するプロセスを「予実管理」と言い、こちらも企業経営にとって必要なプロセスです。

 

ここでは、管理会計の中でも大切なポイントとなる「予実管理」について、メリット・デメリット、実行手順について詳しく解説します。

「予算は組んだけど、その次にどうしたらいいのか分からない」とお悩みの方は、ぜひ最後までお付き合いください。

予実管理とは?

予実管理とは、予算と実績を比較し、進捗度や達成度を目に見える形で表すことを指し「予算実績管理」とも言われる管理会計方法の1つです。

1-1.企業の予算と実績を比較分析し、課題や改善策を明らかにすること

企業経営では、経営理念に基づき経営目標を立て、経営目標を達成するまでのロードマップを作成し、達成すべき数値目標を定めた「予算」を組みます。

予算には、企業全体や部署ごと、プロジェクトごとに設定される売上目標や利益目標も含まれており、予算の達成は企業の経営や成長戦略の要となる大切な指標になります。

予実管理は、予算(目標)達成までの状況を可視化したものであり、予算に対してどれだけの実績をあげられているのかを明確にし、達成が難しい場合にはどのような改善を行えばいいのかを導く重要な指標です。

予実管理を行っていなければ、予算の達成状況も分からず「どういった改善が必要なのか」を考える状況が生まれません。

予実管理を行うことで「現在の状況を把握すること」そして「課題や改善点を明らかにすること」ができるようになり、安定した経営が可能になります。

1-2.企業の予算とは

経営目標を達成するために設定する予算は「売上予算」「原価予算」「経費予算」「利益予算」の4つに分類されます。

 

売上予算 企業の売上目標。前期の売上高・利益率などをもとに設定する。
原価予算 各事業部で予測した原価をもとに設定する。
経費予算 企業が継続して活動していくために必要となる予算。
利益予算 企業が目標達成するための利益目標。

1-2-1.売上予算

売上予算は、目標達成のために必要な売上高を示す予算であり、一般的には「トップダウン方式」または「ボトムアップ方式」により設定します。

 

トップダウン方式では、会社の経営陣が売上予算を立て、各部署・事業部などに配分して行く方法です。

迅速な意思決定が行えるメリットがある反面、現場の意見が反映されにくいといったデメリットがあります。

 

一方、ボトムアップ方式は、各部署・事業部が立てた売上予算をもとに経営陣が売上予算を立てる方式です。

現場の声を反映することができるメリットがある反面、売上予算を立てるプロセスに時間がかかってしまうというデメリットがあります。

1-2-2.原価予算

原価予算は、目標達成に必要となる販売計画、材料の調達計画、在庫、製造計画などをもとに算出される原価の予測値のことを言います。

市場の変化、価格変動が激しい現代では原価予算を決めておくことが重要であり、場合によっては期中に修正を加えていくことも重要です。

1-2-3.経費予算

事業に必要な経費(一般管理費)の予算を経費予算と言います。

原価よりも市場の影響を受けにくいため、前期や前々期の金額を参考に設定します。

1-2-4.利益予算

利益予算は、企業が目標達成するための利益目標のことを指します。

営利企業である以上、利益を上げることが目的ですので、利益予算は非常に重要な指標になります。

1-3.予算管理との違い

予実管理と似た用語に「予算管理」があります。企業によっては、予実管理と予算管理の両方が使われており、混同してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

予実管理と予算管理は、ほぼ同じ意味合いで使われます。

実際には、予算管理は「予算の策定」を主軸に置いている側面が強く、予実管理は「予算と実績の突き合わせ・分析」を主軸に置いている側面が強いイメージとして理解されています。

 

予算管理では、その予算が計画通りに実行されたのか確認する必要があり、予実管理においても予算の策定は必要不可欠であるため、同じ意味合いと言っても問題ありません。

予実管理のメリット

予実管理は、企業が目標という予算を設定し、それを達成するために必要不可欠なものです。

予実管理を行うメリットについて見ていきましょう。

2-1.自社の状況を定量的に把握できる

中小企業の中には、社長が舵を取り会社を牽引しているケースも少なくありません。

中には社長の勘と経験を頼りに感覚的に経営の見通しを立てている場合もあります。

このようなワンマン経営は意思決定をスムーズに行える長所もありますが、客観的に自社の状況を把握することが難しいというデメリットもあります。

 

予実管理を取り入れると、目標を数値化し、定量的に自社の状況を判断することができ、経営者だけに依存しない経営を行うことができるようになります。

2-2.予算が達成できなかった原因を分析し、軌道修正が行える

予実管理を行っていない企業では「決算を行うまで目標とする利益が出ているのかわからない」といったケースもあります。

予実管理を行うことで、期中であっても予算までの進捗度を把握することができ、達成度が低い場合は途中で原因を分析し、改善することで早めの軌道修正が可能になります。

2-3.事業計画の合理性、信憑性を証明できる

企業経営には、事業内容や戦略、収益予測などを説明する「事業計画書」が重要であり、融資を受ける場合には、事業計画の合理性を問われることになります。

しかし、事業計画のもとになる数値に説得力がない場合は、絵空事のような印象を与えてしまうことになりかねません。

 

事業計画と過去の業績をもとに予算を組み、予実管理を行うことで、実際に実現可能な事業計画であることを説明することができ、対外的にも事業計画の信憑性を証明することが可能です。

予実管理の手順

予実管理には、予算を策定し、実際の業績と突き合わせ、分析が必要です。具体的には、次の4つのプロセスで予実管理を行います。

 

  1. 予算目標の設定
  2. KPIと具体的な実施スケジュールの設定
  3. 月次決算
  4. 予算と実績の比較分析、課題を把握し、改善策の検討

3-1.予算目標の設定

最初のステップは、経営目標を達成するための予算目標を設定することです。

前述したとおり、予算には「売上予算」「原価予算」「経費予算」「利益予算」の4つがあり、トップダウン方式なのかボトムアップ方式なのかで設定までのプロセスが異なります。

 

トップダウン方式では、経営陣が中心となって各種予算を設定しますが、ボトムアップ方式では、各部署の予算を積み上げて設定を行います。

予算目標の設定では、数字遊びにならないように目標を達成するために必要な人員、材料などの原価、期間を考えながら、難しすぎず、簡単すぎない予算案を作成しましょう。

作成した予算案は、経営陣の最終承認を受け、予算や資源の割り当て、調整を行うことになります。

経営目標に沿った予算目標になっているのかをしっかりと確認しましょう。

3-2.KPIと具体的な実施スケジュールの設定

KPIとは「重要業績評価指標」のことであり、目標の達成度合いを測定する重要な指標です。

KPIは、業種や事業部などによって異なるため、それぞれのKPIを設定する必要があります。

 

例えば、営業部門であれば「商談数や新規顧客数」などが1つのKPIになるでしょう。

人事であれば「採用の成功度や従業員エンゲージメントの上昇」などがKPIとしてあげられます。

予算目標を達成するためのKPIを設定し、KPIを達成するための具体的なスケジュールを組み、少しずつ小さな目標に落とし込んでいくことをイメージするといいでしょう。

3-3.月次決算

決算というと年に1回の年次決算のイメージが強いですが、毎月決算を行うことでリアルタイムに現在の状況を把握することができ、課題の分析と対策、予算の軌道修正など、タイムリーな経営判断が可能になります。

 

月単位で予算に対する実績の進捗度を確認することができるため、予実管理では月次決算を行うようにしましょう。

また、月次決算を行って終わりではなく、経営陣や各事業部、各部署の責任者と情報を共有し、これからのビジョンについて話し合うことが重要です。

3-4.予算と実績の比較分析、課題を把握し、改善策の検討

実績がある程度出揃ったところで、本格的に予算と実績の比較分析を行います。

各予算の差異を分析し、達成できていない項目については「なぜ達成できなかったのか」の理由を分析しましょう。

 

「差異が大きいから悪い」というわけではなく「予算の設定に問題がなかったのか」「原因は内部的要因なのか、それとも外部的要因なのか」など、自社の今後の課題となる部分を把握することが目的です。

課題が見つかれば、その課題の改善策を考え、優先度の高いものから実行していきましょう。

 予実管理を行う際に気をつけること

予実管理を取り入れる際には、次の点に注意しましょう。

4-1.正確な数値を迅速に集計できる体制を構築しておくこと

予実管理には、月次決算を含め、実績を迅速に把握する必要があります。

そのためには、予実管理を行う責任者を明確にし、迅速に実績を集計できる体制を整えましょう。

また、比較分析をスムーズに行うためには、各部門との情報の共有が不可欠です。

定期的に意見交換ができる環境も構築しておきましょう。

4-2.細かな差異にはこだわらない

予算と実績を比較する場合、10円・100円単位の細かな差異にはこだわらず、もっと大きな差異から考えられる本質的な問題をとらえることが重要です。

細かな差異の分析に時間をかけず、大きな差異がある項目の分析に十分時間を費やせるようにしておきましょう。

4-3.予算目標達成が最終的な目的ではない

予実管理は、企業が目標とする利益を達成することが目的ですが、その指標としてKPIの達成や予算目標の達成があることを理解するようにしましょう。

予算目標が達成されない場合であっても、何が原因かを分析することで、次の課題が明らかになってきます。

一度に全ての課題を解決しようとはせず、優先順位をつけて順番に課題を解決していきましょう。

まとめ

予実管理は、企業が経営目標を達成し、成長していくために必要な取り組みです。

単に予算と実績を比較して終わりではなく「なぜ大きな差異が発生したのか」「予算は正しかったのか」「改善するべき点は何か」を考えるきっかけになる大事な指標になりますので、まだ取り組まれていない場合は、取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、会社の成長を応援しています。

予算の立て方から実績との比較、月次決算の行い方から問題改善への併走まで予実管理の実施をサポートしております。

 

「予実管理を行いたけど、どうしたらいいのかわからない」

そんな時は、ぜひ当事務所にご連絡ください。

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