公開日:2024/12/17
生成AIとは?生成AIによる業務効率化の進め方について解説!
StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
「生成AI」とは、AIが人間のように考え、文章や画像、動画などを自動で作り出す技術のことを言います。
従来、主にクリエイティブな業務での生成AIの活用が考えられてきましたが、近年では企業の業務効率化にも寄与できる素晴らしい技術に発展しています。
生成AIを使いこなすことができれば、経理業務を含むバックオフィス業務の効率化とコスト削減を同時に実現することができ、余裕ができた人材やコストを研究開発などのクリエイティブな業務に充て、より企業の価値を高めることが可能になります。
ここでは「生成AIを活用した業務効率化のメリットや進め方」について詳しく解説します。
「生成AIはまだ未来の技術だから使えない」「コンピューター技術は難しくて分からない」と思っている経営者の方や経理の方は、ぜひこの記事を最後までお読みください。
生成AI技術をいち早く取り込むことで、競合他社との差別化を図り、市場において有利な立場を築くことができるようになるでしょう。
生成AIは企業の様々な場面で活用可能
生成AIは業務の様々な場面で活用可能です。
シーン別に生成AIの活用方法を見ていきましょう。
1-1.カスタマーサポート業務
顧客に対するカスタマーサポート業務の一部に生成AIをベースとしたチャットボットに置き換えることで、類似した質問を人が回答するのではなく、問い合わせ内容の回答をAIに生成させることができます。
ただし、カスタマーサポート業務の一部をAIに置き換えるためには、質問に対する回答についてのデータ整理が必要不可欠です。AIに置き換えることで問い合わせの解決率の増加や生産性の効率化が見込まれます。
1-2.プレゼン資料の作成
プレゼン資料の作成は、内容の整理やレイアウトデザインなど、多くの時間と手間がかかってしまいます。
AIツールを活用することで、AIがプレゼンの構成案作成やデザインの提案、文章の校正などを行ってくれるため、作成者はデザインに関する専門知識を必要とせず、少ない時間でプレゼン資料を作成することができるようになります。
1-3.議事録の作成
会議の議事録作成は、会話を追いながらタイピングを行い、正確に会議の内容を把握する必要があります。
また、議事録は会議での発言をそのまま記すのではなく、要点を押さえつつ、できるだけ簡潔にまとめる必要がある大変な業務です。
生成AIを利用すれば、会議の内容をリアルタイムでテキスト化を行うことができ、さらにテキスト化した内容を口語から文語に変換し、その内容を自動要約機能により簡潔にまとめることが可能です。
AIを議事録作成に活用することで、効率的に会議の議事録を作成することができます。
1-4.電話対応
生成AIは対話型のタスクに特化しており、近年では「電話自動応答システム」としても利用されています。
電話自動応答システムは、電話をかけてきた人に対して音声での応答や案内を行うシステムであり、主にコールセンター業務や医療機関の予約受付業務などで利用されています。
電話自動応答システムにより生産性の効率化を図ることができますが、AIでは解決できない問題もあるため、人との協働が重要になります。
1-5.スケジュール調整
会議の時間や営業先への訪問などのスケジュール管理をAIにより自動化することができます。
スケジュール管理を自動化すると、AIが各メンバーのスケジュールを把握、調整を行い、全員が都合のよい時間に会議を提案してくれます。
従来のように、メンバー1人1人にスケジュールを確認して会議時間を設定する必要がなくなり、時間と労力の軽減が図れます。
1-6.データ分析と市場調査
データを分析し市場調査を行うことは、ビジネスを成功させるうえで必要不可欠です。
AIを活用することで、ソーシャルメディア分析や競合情報収集、消費者トレンドの予測、アンケート結果の分析などを自動化することができ、その結果をグラフやチャートを用いた報告書形式で出力することが可能です。
マーケティング企業に依頼すると高額な費用が発生する市場調査ですが、AIを活用することで費用が抑えられ、自社独自の市場調査を実行することができます。
1-7.表計算ソフトの自動化
Excelなどの表計算ソフトを多用している企業は多いと思いますが、表計算ソフトで必要な部分を入力すれば自動的に図表などが作成されるようにするためにはExcelマクロなどのプログラミングが必要になるため専門的な知識が求められます。
AIを利用し、AIと表作成ソフトを連携させることで、プログラミングコードを入力しなくても“日付の形式をyyyy/mm/ddに変更するマクロを作成してください”といった指示を行うだけでコードを作成することができるようになります。
煩雑なコーディング作業が必要なくなり、誰でも表計算の自動化を行えるようになるでしょう。
経理業務に生成AIを活用するメリット
ここまで見てきたように、生成AIは企業の様々な場面で活用が可能であり、経理業務も例外ではありません。
経理業務で生成AIを活用することで、自動化により人為的なミスを減らしつつ、より戦略的な業務に集中することができます。
経理業務において生成AIを活用するメリットを見てみましょう。
2-1.経費報告の自動化
従業員にとって経費精算は本来の業務ではなく、申請書の作成や承認プロセスに時間がかかるため面倒と感じる人も少なくありません。
また、経費報告を紙ベースで行っている場合は外出先での報告ができず、報告するために帰社しなければならない場合もあります。
経理担当者にとっても申請内容の確認や経費科目の確認をしたうえで会計処理、支払いを行わなければならず、負担の大きな業務だと言えます。
「AI-OCR機能搭載経費精算システム」を活用すれば、経費報告を自動化することができ、報告する従業員、経理担当者ともに手間が省け、効率化することが可能になります。
AI-OCR機能とは、AIを活用した画像読み取り機能であり、従業員が経費の領収書をスマホのカメラで撮影するだけで日付・品名・金額などが自動でシステムに入力される機能のことです。
従来のOCR機能とは違い、AIが判別を行うため、より精度の高い取り込みが行えるようになっています。
また、経費精算システムと会計ソフトを連携させることで仕訳入力までを自動化することができ、経理担当者の負担も少なくなります。
2-2.請求書処理の自動化
請求書の処理は、取引先から受け取った請求書を経理担当社が取引先や金額、支払日、支払い口座などを入力、銀行振込に必要なデータを作成し、その後、会計ソフトに入力する必要があります。
同じ内容の入力を繰り返し行っている処理であるため、自動化が必要な作業と言えるでしょう。
AIを活用した請求書処理の自動化は、請求書をAI-OCR技術で取り込み、データベースに自動的に連動、支払いまでのプロセスを自動化し、処理時間の大幅な短縮、支払期限の管理により支払いの遅延を防ぐことができます。
2-3.財務予測
生成AIにより過去のデータを分析し、現在の財務データより将来の財務予測を行うことが可能です。
財務だけではなく、キャッシュフローの予測もできるため、資金繰りの悪化など、将来予測されるリスクを事前に把握し、対策を行うことができます。
2-4.不正の検出
生成AIと経理システムを連携させることにより、異常なトランザクションやパターンを検知することができ、不正を察知することが可能になります。
今まで属人化していたため気付けなかった不正の検出などに期待できるでしょう。
経理業務に生成AIを導入して業務効率化を進めていく方法
経理業務に生成AIを導入し、業務効率化を進めていくためには、次の5つのステップをしっかりと確認しながら行う必要があります。
3-1.活用目的の明確化
生成AIを経理業務に活用する際には「どのような効果を期待するのか」を明確化する必要があります。
どの程度の業務効率化やコスト削減を目的とするのかを決めることで、活用後の成果を測定することが容易になります。
3-2.活用業務の選定
「どの業務でAIを活用するのか」具体的な業務をリストアップしましょう。
経費報告の自動化や請求書処理の自動化など、自社にとってAI活用が有効な業務を選定し、各業務の現在のプロセスを分析したうえで、どの部分をAIにより自動化できるのかを検討し、AIを導入した際の業務プロセスをイメージしましょう。
3-3.管理体制の構築
AIを活用する際には、セキュリティ対策やプライバシー保護、コンプライアンス遵守などの管理体制を構築することが重要です。
また、運用状況を確認し、問題が発生した際の対策などを準備し、AI活用によるリスクに備える必要があります。
3-4.使用するAI技術を選定する
一言でAIと言っても、現在では多くのAIプログラムが存在し、それぞれ機能や特徴に違いがあるため、自社に適切なAIを選定する必要があります。
導入コスト、運用コストを含めて検討し、導入前にパイロットテストを行い、AIの効果を事前に検証することも重要です。
3-5.PDCAを回していく
AIは導入したら終わりだはなく、運用していく中でPlan(計画)Do(実行)Check(検証)Action(改善)を繰り返し、より最適化に取り組む必要があります。
PDCAを回していくことで、AIの可能性を理解し、他に活用できる業務がないのか、活用の拡大を検討してみましょう。
生成AIを経理業務導入する際の注意点
生成AIを経理業務導入する際には、次のポイントに注意しましょう。
4-1.データ収集や管理に関するルールを決めること
生成AIは、もととなるデータによって品質が異なります。
データの量と品質が十分でなければ、AIが古い情報を提供してしまうおそれもあります。
また、AIが事実と異なる情報を提供する「ハルシネーション」が発生するリスクも考えられます。
用意するデータの量と品質に気を付け、データの収集や管理、利用に関するルールを決めることが重要です。
4-2.プライバシー保護とセキュリティ対策
AIが取り扱う情報には個人情報が含まれていることが多いため、プライバシー保護に関する対策を行う必要があります。
また、データが外部に漏れてしまわないように万全のセキュリティ対策を行いましょう。
4-3.AI人材の育成
機械学習やディープラーニング、自然処理言語などAIに関する知識やスキルを身につけた人材が社内にいるとAI活用の範囲と精度が広がります。
高度な専門知識が必要な分野であるため、社内研修や外部トレーニングを通じて、従業員のスキルアップをはかりましょう。
人と生成AIが協働することがポイント
生成AIを活用すると業務効率化やコスト削減が可能になりますが、AIは全てにおいて万能なわけではありません。
過去のデータを分析したデータ処理や将来の予測などについては優れていますが、創造性などについては人のほうが優れています。
AIを上手に業務に活用するためには、AIが行う業務と人が行う業務を明確に区分し、それぞれが補い合える環境を構築することが大切です。
例えば、AIにより領収書の解析や仕訳入力を行い、人は入力したデータのチェックを行うといったように「協働」することがポイントです。
まとめ
生成AIは速いスピードで進化しており、これからも進化し続けていく技術です。
最新技術をどのように自社に取り込んでいくのかを検討することは企業の急務であり、脱アナログ化が求められている時代でもあります。
時代に取り残されないように、ぜひ自社の業務に生成AIを活用してみてはいかがでしょうか。
Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、AIを搭載したクラウド会計や事務の自動化(DX化)に対応しています。
無駄な作業を排除した業務効率化を進め、クリエイティブな業務に人材とコストを充てて企業価値の向上を行えるようにアドバイスを行っておりますので、業務効率化でお悩みの際は、ぜひ一度お問い合わせください!