税務・会計

公開日:2025/4/15

月次決算とは?メリットや効率化するポイント、注意点を解説!

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

「決算」という言葉を聞くと「年に1回だけ行うもの」と思われている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、年次決算とは、1年間の事業実績をまとめ、最終的な法人税や消費税、個人事業の場合は所得税などの納税額を算出し、利益を確定させることを言います。

年次決算のみを行っている会社では、1年に1回しか正確な事業の状況が把握できず、経営改善のスピードが遅くなり、適切な税金対策を行うことが手遅れになってしまうこともあります。

そのため、近年では毎月決算を行い、正確に会社の経営状況を把握する「月次決算」を導入する会社が増加しています。

 

ここでは「月次決算のメリットや効率化するポイント、注意点」を詳しく解説します。

月次決算を導入することで経営の質を上げることができるようになりますので、最後までお付き合いください。

月次決算とは

月次決算は、毎月決算処理を行い、正確に会社の経営状況を把握することを言います。

売掛金や未収入金、買掛金や未払費用などの適切な計上をはじめ、商品の棚卸しや固定資産の減価償却費の計上など、決算で行うことを毎月行います。

 

「日常業務もあるのに月次決算で業務負担が増えるのではないか」と感じる方もいらっしゃると思いますが、月次決算には法的な義務はありませんので、どのように取り組むかは会社の方針になります。

細かい部分はスキップし、現預金の照合、売掛金や買掛金、未払費用、減価償却費、納税充当金の計上のみを行うといったものでも構いません。

業務負担と得られる結果のバランスを考えながら取り組むことが重要です。

年次決算との違い

年次決算は、1年に1回行われ、会社法や法人税法などの法律により義務付けられています。

年次決算により法人税等の税金の算出を行い、最終的な利益を確定させ会社の株主に報告しなければなりません。

 

一方、月次決算は、会社が任意で行うものであり、法的な義務はありません。

経営判断の材料として活用するものになりますので、会社の株主に報告する義務もありません。

【年次決算と月次決算の違い】

  年次決算 月次決算
実施サイクル 年に1 月に1
法的義務 会社法や法人法で義務付けられている 会社の任意であるため行う義務はない
実施目的 法人税等の税金の算出、利益の確定、株主への報告義務 会社の経営判断、年次決算の業務負担軽減

月次決算のメリット

月次決算は法的に義務付けられている年次決算と違い、会社の任意で行うものです。

義務付けられていないのにも関わらず、多くの会社が月次決算を導入しているのは、業務の手間と時間を上回るメリットがあるからです。

月次決算を行うことの主なメリットには次のようなものがあります。

【月次決算の主なメリット】

  • 会社の状況(損益・資産・負債)がタイムリーに把握できる
  • 経営方針を迅速かつ的確に修正できる
  • 予実管理による達成状況を把握できる
  • 月次決算を行うことで年次決算時の作業負担を減らすことができる
  • 年次決算対策を行うことができる
  • 金融機関からの信頼を得ることができる

  3-1.会社の状況(損益・資産・負債)がタイムリーに把握できる

毎月決算を行うことで、会社の経営状況(損益)や財務状況(資産・負債)をこまめに把握することができます。

会社の経営状況は、生き物のように常に変化していきます。

売上の増減や材料費の増減などの動向をタイムリーに把握することは、変化に迅速に対応するために非常に重要であり、手遅れになってしまうと会社の危機になってしまうこともあります。

 

経営者の中には「感覚的には業績は悪くないと思う。でも、本当に利益は出ているのだろうか」と悩まれている方もいらっしゃると思いますが、これはリアルタイムでの経営状況の把握ができていないことが原因です。

毎月定期的にチェックできる月次決算を導入することで、このような悩みを解消することができます。

3-2.経営方針を迅速かつ的確に修正できる

月次決算では、経営陣が会社の状況をタイムリーに知ることができるため、状況に応じて経営方針を修正することができ、よりよい経営戦略を立てることができます。

 

例えば「事業拡大のために設備投資を行いたい」という場合に「金融機関から融資を受けても大丈夫だろうか」と経営判断で悩んでしまった際に、タイムリーな情報が役に立ちます。

月次決算で「売上が10%増加している」などの情報が確認できれば、設備投資を行うための判断を下しやすくなります。

月次決算を行っていないと、業務悪化の傾向を察知できず、後手に回った意思決定になってしまい、年次決算を向かえるタイミングには既に経営が悪化していることも考えられます。

月次決算を行い、タイムリーに会社の状況を知ることで迅速に、臨機応変に経営戦略や営業方針を転換させ、流れに乗った経営を行うことが可能になります。

3-3.予実管理による達成状況を把握できる

月次決算では、目標を達成するために収入や経費の予算を組む「予算管理」と組んだ予算と実際の業績を比較、検討する「予実管理」を導入すると、自社の状況を定量的に把握できるようになり、課題や改善点を明らかにすることが可能になります。

 

月次決算を行っていなければ、予算を組んでいても、年次決算時にしか達成しているかどうかが分からず、蓋を開けてみたら予算未達になっていたという状況になりかねません。

月次決算により予算と実績を月単位で把握していけば、達成に必要な対策を行うことができ、会社が計画した通りの経営になる確率を高めることができます。

予実管理については「予実管理とは?メリットや必要性、手順について解説」で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

3-4.月次決算を行うことで年次決算時の作業負担を減らすことができる

年次決算は1年間の会社の収入、経費、資産、負債など、全てを整理し、株主に報告する重要なものです。

決算業務は作業量も多く、経理担当者に大きな負荷がかかることもありますが、月次決算を行うことで年次決算時の作業負担を減らすことができます。

年次決算で行う作業や工程を月次決算時に把握しておけば、効率的に年次決算を進めることが可能です。

3-5.年次決算対策を行うことができる

月次決算を行っていない場合、会社の業績が正確に把握できず、どれくらいの法人税等の税金がかかるのか予測することができません。

経営者が思っていた税金の金額よりも高い納税が発生してしまい、急遽、納税資金の準備が必要になってしまうといった状況になってしまうことも少なくありません。

月次決算を行っていれば、どれくらいの利益が発生し、どのくらいの法人税等を納税しなければならないかを予測することができるため、納税資金の確保を前もって行うことができます。

 

また、予想よりも利益が生じてしまい、税金の負担が多くなってしまう場合には、事業年度が終了する前に節税対策を行うことができます。

例えば、従業員への決算賞与の支給、使用していない固定資産や不良在庫の処分、少額の備品を購入し使用するなどの対策を講じることが可能です。

3-6.金融機関からの信頼を得ることができる

銀行などから新たに融資を受ける場合や借り換えを行う場合には過去の決算書だけでなく、期中の最新の試算表の提出を求められることもあります。

月次決算により、毎月の試算表をすぐに提出できるようにしておけば、財務管理面での金融機関からの評価を得ることができるかもしれません。

また、金融機関としても適切な融資判断が可能になるため、月次決算は双方にとってメリットがあると言えるでしょう。

月次決算のデメリット

月次決算のデメリットは、単純に手間がかかることです。

しかし、デメリットに比べてメリットの方が断然上回っており、手間がかかると言っても毎月のことなので慣れてしまえば大きな負担にはなりません。

また、月次決算を行うことで、年次決算の負担を軽減する効果を得ることができますので、大きなデメリットではないでしょう。

月次決算の流れ

月次決算には、多くのメリットがありますが、どのように進めていけばいいのでしょうか。

月次決算はおおまかに次の5つの手順で進めていきます。

【月次決算の流れ】

  1. 帳簿残高と実際の残高を確認
  2. 月末の棚卸しの計上
  3. 売掛金・買掛金などの経過勘定の計上
  4. 減価償却費の計上
  5. 月次試算表の作成

     5-1.①帳簿残高と実際の残高を確認

    現金預金の帳簿残高と実際の残高が一致しているかを確認します。

    もし、差異がある場合には原因を特定し、修正処理を行います。

    5-2.②月末の棚卸しの計上

    月次決算では、月末の在庫数と金額を確定するために棚卸しを行い、その結果を試算表に反映させます。

    製造業は特に棚卸しをしっかり反映させた月次決算を行わなければ、売上高と売上原価の相関関係がとれず、正確な判断ができなくなりますので、重要な手順と言えるでしょう。

    5-3.③売掛金・買掛金、経過勘定の計上

    月末時点での売掛金や買掛金の整理を行い、正しい残高になっているのか確認します。

    人件費の未払いや経費の未払いもしっかりと把握し、経過勘定に計上します。

    5-4.④減価償却費の計上、引当金の計上

    固定資産台帳をもとに1年間の減価償却費を計算し、1か月分の減価償却費を計上します。

    賞与や退職金に係る引当金を計上する場合には、年額を12か月で割った金額を引当金として計上しましょう。

    5-5.⑤月次試算表の作成

    ①~④までの処理が終わったら、試算表全体の確認を行い、問題がなければ月次試算表の完成です。

    予算を設定している場合は予実管理を行い、達成度などを分析しましょう。

    月次試算表はリアルタイムで会社の状況を判断する重要な資料です。

    作成が終わったら、経営者などの意思決定を行う役職に報告しましょう。

    月次決算を効率化するためのポイント

    月次決算をスームズに進めるためには、日常的な経理業務を効率化させることが大切です。

    経理業務を効率化させるには次のような方法があります。

    6-1.経費精算システムを導入する

    経費精算システムとは、経費の申請、承認、その後の会計仕分から会計ソフトへのデータ連携までを効率化するシステムです。

    システムを導入することにより、経理担当者の入力作業時間を削減することができ、効率化が図れます。

    6-2.アウトソーシングを活用する

    経理の人員が足りない場合には、経理業務の一部をアウトソーシング(外部委託)する方法もあります。

    アウトソーシングにより、効率よく進めることが可能になりますが、自社の社員の経理スキルが成長しないなどのデメリットもあるため、なるべく自社内で完結できる体制を整えたほうがいいでしょう。

    6-3.締め日・スケジュールを周知する

    月次決算はスピードが必要です。月末に締めて10日までに月次試算表を報告するなど、締め日とスケジュールを他の従業員に周知し、協力しながら行うことで効率化を図りましょう。

    7.月次決算における注意点

    月次決算は、年次決算への準備という意味合いも含むため正確さが求められます。

    また、迅速な経営の意思決定において重要な資料になるためスピード感が求められます。実務において正確さとスピードの両立は簡単ではありませんが「月次決算を効率化するためのポイント」で紹介した方法やチェックリストなどを作成し、正確に早く月次試算表を作り上げられるようにしましょう。

    まとめ

    月次決算で得られる情報は、時代の流れが早い今だからこそ必要になるリアルタイムの情報です。

    会社の今が分かれば、今後の経営方針などが臨機応変に修正でき、より生産性の高い経営を行うことができるようになります。

    Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、月次決算対応はもちろん、決算前に戦略会議を行い、万全な状態で決算を迎えるためのサービスをご提供しております。

    月次決算に興味がある」という方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

    \スタメンに今すぐ/
    無料で相談する

    経営に強い公認会計士が、貴社の企業価値を最大化するお手伝いをさせていただきます。

    貴社の課題を私たちが共に解決します

    お電話でのご相談

    電話ロゴ 06-4708-5817

    【受付】平日9:00~18:00

    コンサルティングは日本会計サービスにて行なっております。

    コンサルティングはこちら

    contact

    電話で相談 フォームから相談 LINEで相談 Chatworkで相談

    contact

    フォームから相談 LINEで相談 Chatworkで相談