税務・会計

公開日:2025/4/22

資金繰り表とは?作成するメリットや具体的な作り方を解説!

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

会社にとって資金は血液のようなものであり、資金繰りが安定していれば事業の継続や拡大を行うことができるため、資金繰りを維持することが非常に重要です。

資金繰りを維持するためには、会社の資金繰りの実態を正確に把握することが必要不可欠です。

ここでは、事業を継続的に安定して運営するために欠かせない「資金繰り表」について詳しく解説します。

資金繰り表のメリットから具体的な作成方法まで解説しますので、会社の資金繰りに不安を感じている方は、ぜひ最後までお付き合いください。

資金繰り表とは

資金繰り表とは、「会社の資金の現状把握」と「将来の資金の流れを予測」するために作成されるもののことを言います。

会社が倒産の危機に直面するきっかけは「資金ショート」が起こることです。

決算書で会社の損益は把握している場合であっても、資金の流れは損益と一致するわけではないため、資金繰り表を作成して「資金管理」を行わなければ、いつの間にか資金ショートしてしまう可能性があります。

 

実際に、損益計算書では利益が出ている会社であっても、資金管理を適切に行なっておらず、資金ショートを起こしてしまい「黒字倒産」してしまう事例も少なくありません。

資金繰り表は「いつ資金が必要になるのか」「どれくらいの額の資金が必要になるのか」を把握し「いつ・どこから・どのように資金を調達するのか」を計画することで資金ショートを未然に防ぐ役割があります。

1-1.資金繰り表とキャッシュフロー計算書との違い

資金繰り表と似た帳表に「キャッシュフロー計算書」があります。

どちらも会社の資金(キャッシュ)の流れに関わる帳表であるため、同じものと勘違いされてしまいがちですが、資金繰り表とキャッシュフロー計算書は「作成する目的」と「時系列」が異なります。

 

資金繰り表を作成する目的は「将来の資金を管理し、資金不足に陥ることを回避するため」であるのに対し、キャッシュフロー計算書は、過去の1年間の事業活動から得た資金や支出した資金の動向を追跡し、会社の健全性や持続可能な成長性を評価することを目的としています。

そのため、資金繰り表は「未来の資金予測」を行う帳表であり、キャッシュフロー計算書は「過去の資金の動向」を分析する帳表であるため、時系列が異なります。

1-2.資金繰り表で分かること

資金繰り表で分かることは「資金の今後の流れ」です。

資金繰り表を活用することで、現在の実績から決算までの予測を加味することで「期末までの資金の流れに問題がないか」「資金残高は十分かどうか」がひと目で分かるようになります。

資金が十分でない場合は、早めに金融機関に相談し、資金調達を図ることが可能です。

資金に余裕がある場合には、設備投資を行うタイミングの検討や従業員の賞与の検討に役立てることもできます。

資金繰り表を作成するメリット

将来の資金の流れを一覧できる資金繰り表を作成することは、会社にとって主に次の3つのメリットがあります。

2-1.資金ショートのリスク回避

資金繰り表の一番のメリットは「資金ショートの回避」です。

資金繰り表を作成し、日々の入出金状況を可視化することで、資金が不足する原因を追跡することができ、具体的な対策の検討が可能になります。

 

例えば、売掛金の入金が遅く、資金が回っていない場合は、売掛金の回収を迅速化しつつ、買掛金の支払いサイトを長くする交渉を行うことで対策することができます。

また、資金ショートの1つの原因である「過剰在庫」については、資金繰り表の作成と同時に在庫管理を徹底し、商品の購入から売れるまでの期間を計算することで、過剰在庫の問題が生じにくくなり、結果として仕入れの量やタイミングが適正化されていき資金繰りが改善します。

2-2.資金調達をスムーズに受けられる

資金繰り表は、金融機関から融資を受ける際に提出を求められる帳表の1つです。

金融機関では資金繰り表により「会社の資金繰りの水準」を確認しており「資金繰り表を正しく活用し、管理ができているかどうか」「どれくらい先までの資金繰り表を作成しているか」などのチェックを行います。

もし、資金繰り表が正しく活用されていないと判断された場合には融資がおりない場合もあるため、日頃から正しい資金繰り表を作成しておく必要があります。

 

反対に、ひと目見ただけで資金の流れがわかる正しい資金繰り表を作成していれば金融機関からの信用を得ることができ、資金調達がスムーズに受けられるでしょう。

2-3.経営判断に活用が可能

会社経営は、業績など過去のことだけに目を向けるのではなく、未来を見据えた取り組みを行う必要があります。

資金繰り表を経営判断に活用することで、先手を取った取り組みを行うことができ、より事業を拡大していくことが可能になります。

また、資金繰り表を「経常収支・非経常収支・財務収支」の3つに区切って管理することで、収支内容ごとの現状把握が行えます。

  • 経常収支⇒本業での収支。本業である事業から安定して資金を得られているかどうかの破断ができます。
  • 非経常収支⇒本業以外の収支。補助金収入や保険の解約による収入、設備投資にかかる支出や有価証券の購入などが該当します。資金繰りが厳しくなると保険の解約など、非経常収入の資金が増えるため注意が必要です。
  • 財務収支⇒財務活動による収支。収支がプラスの場合は、金融機関からの借入金が増加していることになるため、返済計画に無理がないか注意する必要があります。

資金繰り表の作り方(Excel)

「資金繰り表の作成には専門的な知識が必要になるのではないか?」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、あまり難しく考える必要はありません。

手順に従って数字を入力していけば、自ずと自社の資金繰り表が出来上がります。

ここでは、簡単な資金繰り表の作り方を見ていきましょう。

【資金繰り表の作成のための6つのステップ】

①必要な資料を準備する

②フォーマットを決める

③期間を設定する

④各項目を入力する

⑤計算式を入力する

⑥金額を入力する

3-1.①必要な資料を準備する

資金繰り表を作成するためには、資料の根拠となる書類を準備しなければなりません。

根拠がない数字になってしまうと経営者や経理担当者の絵空事となってしまい、資料としての価値がなくなってしまいますので、信頼性の高い資料を集めましょう。

具体的には、設備投資計画書や将来の販売計画書、人員計画書などが該当します。

過去の数字を利用して資金繰り表を作成する場合には、過去の試算表やキャッシュフロー計算書、現金出納帳、預金出納帳を準備しましょう。

3-2.②フォーマットを決める

資金繰り表は、表計算ソフトであるExcelで簡単に作成することができます。

また、日本政策金融公庫などの金融機関のホームページからひな型をダウンロードして利用することもできるため、どのフォーマットで作成するのかを決めましょう。

日本政策金融公庫の資金繰り表

https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html

3-3.③期間を設定する

資金繰り表の期間は会社の任意で設定できます。

通常は月次で設定されることが多いですが、会社の事情に応じて週次や日次での作成も可能です。

3ヶ月から6ヶ月先まで予測することが推奨されているため、少なくとも3ヶ月先までの資金繰り表を作成するようにしましょう。

3-4.④各項目を入力する

Excelシートに資金繰り表の各項目を記載します。

少なくとも本業での収支、財務活動での収支を記載するようにしましょう。

できるだけ分かりやすくするために作成しながらアレンジしていくことが重要です。

(出典:日本政策金融公庫)

3-5.⑤計算式を入力する

作成した帳表に計算式を入力していきます。

計算式と言っても足したり引いたりする簡単な計算式になりますので難しいことはありません。

収入や支出の合計はSUM関数を使用します。

計算式を組むことで数字を入力すれば自動で収支を把握することができます。

3-6.⑥金額を入力する

今後の計画や過去の実績をもとに資金繰り表に金額を入力していきます。

入力する金額は少し厳しめに見積もることが資金繰り表を作成するコツです。

「甘めの金額を入力したために、実際には多くの支出があり経営が厳しくなってしまった」という状況にならないためにも厳しめに見積もりましょう。

3-7.資金繰り表を分析する

資金繰り表は、作成しただけでは意味がありません。

「経常収支(本業での収支)できちんと資金を得ているかどうか」「財務収支では無理のない範囲で借入金の返済が行えているかどうか」を分析し、問題があれば早めに対策を考えましょう。

資金繰り表を作る際の注意点・ポイント

4-1.定期的に見直し・更新を行う

会社は生き物というように、状況によって資金繰りについても変化するため、定期的な見直しが必要です。

資金繰り表と実際の資金繰りを比較し、乖離が大きいようであれば即時に見直しを行い、翌月以降の資金繰り表がより実績に近くなるように更新しましょう。

4-2.資金繰り表を作成する目的を理解しておく

資金繰り表は、作成すること自体を目的としているのではありません。

事業活動における資金の流れを把握し、将来の資金状況を予測して資金不足を未然に防ぐことが目的です。

 

作成して満足するのではなく、より精度の高い資金繰り表を作成し、会社の経営判断の重要な材料として役立てましょう。

4-3.資金繰りが悪化したときの対応策を検討しておく

資金繰りが悪化した場合にどのように対応するのかについても事前に検討しておきましょう。

資金繰りを改善する方法は、原因によって異なります。

売掛金の回収が適切に行われていない場合は、営業担当者の売上に対する意識だけでなく、売掛金回収に対する意識を高め早期回収できる体制作りを行いましょう。

 

その他にも、金融機関からの融資や売掛金のファクタリング、補助金・助成金の活用などの対応策がありますので、資金繰りに陥った場合にはどの方法で対応していくのかを予め検討しておきましょう。

まとめ

資金繰り表は、財務諸表とは異なり、会社が必ず作成しなければならない書類ではありません。

しかし、会社の将来を予測し、資金不足を回避するためには必要不可欠な帳表であり、経営判断の資料として非常に有効な帳表です。

資金繰り表を作成していない場合は、この記事をきっかけに作成してみてはいかがでしょうか。

 

Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、資金繰り表を含め、税務だけではなく、経営に関するサポート行っております。

「経営に不安がある」とお悩みの際は、ぜひ当事務所までご相談ください。

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