公開日:2025/6/12
税理士変更の断り方は?断る際の伝え方や文章についても解説!


StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
税理士と顧問契約している経営者の方の中には「こちらが連絡しないと何もしてくれない」「高齢の税理士のため、今後どれくらいお付き合いできるか不安」「ITツールを活用したいが税理士が対応していない」など、税理士への不満を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
不満が募り「税理士を変更したい」と考えていても、長い間お世話になってきた税理士に契約解除を伝えることは勇気が必要なことだと思います。
ここでは「できる限りスムーズに税理士を変更する手順」や「揉めることなく断るための伝え方や文章」について解説します。
- 税理士変更の断り方
- 税理士変更の断り方の手順
- 2-1.①顧問契約書の契約期間や解約条件、違約金等の条項を確認する
- 2-2.②次の税理士を決める
- 2-3.③解約日を決める
- 2-4.④現在の税理士へ解約希望を伝える
- 2-5.⑤預けていた書類や資料を返却してもらう
- 2-6.⑥新しい税理士への引継ぎ
- 断る際の伝え方や文章
- 3-1.税理士側の対応や方針が合わないため、税理士を変更したい場合の伝え方
- 3-2.不満をストレートに伝えることを避け、感情的な対立にならないようにする
- 3-3.税理士側も気持ちよく解約できるように配慮する
- 3-4.税理士変更を進める前に、現在の顧問税理士に困っている点を相談しておくこともおすすめ
- 税理士側のサービスに満足しているがニーズが変わり、税理士を変更したい場合の伝え方
- 顧問契約解除の例文
- 税理士変更を拒否された場合は税理士会へ相談
- まとめ
税理士変更の断り方
税理士との契約は、契約内容によって断りが必要なケースと断りが必要でないケースがあります。
断りが必要なケース
税理士と「顧問契約」を結んでいる場合は断りが必要になります。
顧問契約とは、毎月の顧問料の支払いがあり、会計業務などの一部を税理士に委託している場合や必要に応じて税理士に相談することができる継続的な契約のことを言います。
顧問契約の場合は、契約書に契約期間の定めや解約条件、違約金について記載されていることが一般的です。
断る必要があるかどうかについては、まずは顧問契約かどうかの確認を行いましょう。
断りが必要ないケース
確定申告のみの依頼など、単発の依頼である場合は、契約期間内に業務を完了すれば契約終了となるため、断りを連絡する必要はないでしょう。
もし、前年に確定申告を依頼した税理士から「次の確定申告も引き受けます」と連絡があった際には「他の税理士に頼むことにしました」と丁寧に伝えるだけで問題ありません。
税理士変更の断り方の手順
顧問契約している税理士を変更するための断り方については、次の手順で進めていくとトラブルにならず、スムーズに進めていくことができます。
2-1.①顧問契約書の契約期間や解約条件、違約金等の条項を確認する
最初に顧問契約書に記載されている契約期間や解約条件、違約金等の条項の確認を行いましょう。
一般的に税理士との顧問契約は「自動更新」になっており、解約のタイミングを逃してしまうと自動的に契約が延長されるおそれがありますので、契約期間の確認は重要です。
【契約期間の条項の例】
契約によっては、契約解除の意思表示ができる期間や契約期間外の解約に対する違約金が明記されている場合もあります。
違約金が発生するかどうか、発生する場合には違約金がいくらになるのかを事前に確認しましょう。
2-2.②次の税理士を決める
顧問契約の確認後、早いタイミングで次の税理士を探しましょう。
現在の税理士への不満は何なのかを明確にし、同じ失敗をしないように慎重に検討しましょう。
税理士への不満については「【もう失敗しない】税理士への不満ランキングを徹底調査!」で具体的な事例を紹介しています。
また、税理士探しについては「税理士は近くで探すのが良いのか?メリット・デメリットや探し方のポイントを解説!」をご覧ください。
2-3.③解約日を決める
顧問契約書の契約期間を確認したうえで解約日を検討しましょう。
税理士側で保有しているデータや資料の引き継ぎなどがあるため、完全に税理士を変更するためには2~3か月ほどかかる場合もあるため、引き継ぎ期間を考慮しておいたほうがスムーズに変更が行われます。
解約するタイミングで一番スムーズなのは「決算後(法人税申告書の提出後)」に解約を行うことです。
決算の準備期間中に税理士を変更すると、会社の経営状況や税務処理の状況の引き継ぎが十分でない中で決算を行うことになってしまい、決算書にミスが生じたり、完成度の高い法人税・消費税申告書の作成ができなくなってしまったりするおそれがあります。
また、税務調査中の税理士変更はリスクが伴います。
調査中に税理士を変更すると税務調査の対応が十分にできずに調査の指摘事項を受け入れるしかなくなってしまう可能性があります。
税理士の解約を予定している場合であっても、税務調査中に顧問税理士がいない状態は必ず回避しましょう。
2-4.④現在の税理士へ解約希望を伝える
解約日が決まったら税理士に解約希望の旨を伝えましょう。
緊張してしまうと思いますが「解約する期日」と「解約する理由」をしっかりと伝えることが大切です。
解約を伝える方法は、対面や電話で伝えても構いませんが、伝えた後に内容を記載したメールを送信しておくと解約希望の記録が残るため、言った・言っていないといったトラブルを防止することができます。
また、解約の通知は担当者だけでなく、裁量権のある代表税理士にも直接行いましょう。
担当スタッフだけにしか解約の旨を通知していない場合は、担当スタッフが代表税理士に伝えていないなどの伝達ミスが生じるおそれがあり、解約までに時間がかかってしまうおそれがあります。
その他、顧問契約に契約解除は文書で通知する旨が記載されてある場合は、別途「顧問契約解除通知書」を作成し、配達証明付き内容証明郵便で送付しておくとトラブル防止に役立ちます。
具体的な伝え方や文章は「断る際の伝え方や文章」をご覧ください。
2-5.⑤預けていた書類や資料を返却してもらう
税理士に解約の旨を伝えたら、預けていた重要書類や資料を返却してもらいましょう。
返却してもらう資料は、次のような書類が該当します。
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※上記の書類は、基本的には税理士ではなく会社が保管すべき書類であるため、返却してもらう書類がない場合もあります。もし、会社で保管されていない場合には、次の税理士への引き継ぎが難しくなりますので、返却してもらうように依頼しましょう。
記帳業務を依頼している場合
税理士に決算だけでなく、毎月の記帳業務を依頼している場合には、上記の書類に加え、次の書類についても返却してもらいましょう。
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資料の返却を依頼する場合には、行き違いがないように「〇年〇月分 領収書原本一式」のように明確に書類の内容を記載したリストを渡すようにしたほうがスムーズです。
2-6.⑥新しい税理士への引継ぎ
資料の返却が終わったら、新しい税理士へ業務の引き継ぎを行います。
基本的には、税理士同士で引き継ぎが行われることはないため、返却してもらった資料を新しい税理士に見てもらい、経営者や経理担当者から新しい税理士へ会社の経営状況や記帳業務で特筆すべき事項を伝えましょう。
税務処理については、新しい税理士が法人税申告書を見れば理解することができると思いますが、もし不明な税務処理がある場合には早めに前の税理士に確認しましょう。
新しい税理士のもとで電子申告を行う場合には「e-TaxとeLTAXの利用者識別番号と暗証番号」が必ず必要になりますので、こちらの引き継ぎも忘れないように行いましょう。
暗証番号は、前の税理士との契約が解除されるまでに変更し、前任の税理士のメールアドレスが登録されている場合は削除する必要があります。
断る際の伝え方や文章
税理士の顧問契約を断る場合には、できるだけ円滑に納得してもらう方法で伝えることが大切です。
断る際の伝え方や文章について見ていきましょう。
3-1.税理士側の対応や方針が合わないため、税理士を変更したい場合の伝え方
税理士側の対応や方針が合わず「費用対効果を得られていない」「税理士の知識やコミュニケーションに不満・不足がある」と感じ、税理士を変更したいという場合、本当の理由を言いたい気持ちは分かりますが、そのまま伝えるのではなく、なるべく角の立たない断り方をしたほうが円滑に進みます。
ポイントは「不満を伝えるのではなく、希望に変換して伝える」ことです。
【具体例】
本心:税理士の対応や方針に不満がある 伝え方:当社の業態に適した税理士に変更したい |
3-2.不満をストレートに伝えることを避け、感情的な対立にならないようにする
解約を申し出る際は、解約の内容はできるだけ伝えながらも、感情的にならないように配慮するようにしましょう。
ケースによっては、円満に進めるために別の理由を考えてもいいでしょう。
【別の理由の具体例】
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3-3.税理士側も気持ちよく解約できるように配慮する
解約する際には、これまでお世話になったことについての感謝を伝えるなど、税理士側も気持ちよく解約できるように配慮することが大切です。
これまでお世話になってきたことに対する感謝の気持ちや具体的なエピソードを盛り込み感謝の気持を伝えましょう。
【文章の具体例】
長年にわたり、誠実かつ丁寧なご対応をいただき、心より感謝申し上げます。 〇〇先生には日頃から経営や経理に関するご指導いただき、昨年の税務調査では何事もなく終えることができ、重ね重ね感謝しております。 |
3-4.税理士変更を進める前に、現在の顧問税理士に困っている点を相談しておくこともおすすめ
現在の顧問税理士に不満がある場合は、税理士変更を検討する前に改善してほしい点を相談してみてもいいでしょう。
「もっと積極的な提案をしてほしい」「相談には、なるべく早く対応してほしい」「顧問料を下げてほしい」などの要望を伝え、改善してもらえるのであれば顧問契約を継続し、改善されなければ、改善されないことが契約解除を行う正当な理由になります。
税理士側のサービスに満足しているがニーズが変わり、税理士を変更したい場合の伝え方
現在の税理士のサービスには満足しているが、今後の事業展開を見据えて税理士を変更したい経営者もいます。
この場合は「現在の税理士に不満がないこと」「新しい税理士の専門分野と自社の方向性が一致していること」などを感謝の言葉に添えて正直に伝えましょう。
税理士を変更した後も良好な関係を保ち、今後も協力関係を続けていきたい旨を伝えておくことも大切です。
【具体例】
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顧問契約解除の例文
顧問契約を解除する場合には、口頭だけでなくメールや書類で記録を残しておくことが大切です。
具体的な文章の例文を見ていきましょう。
5-1.メールで送る場合の例文
件名:顧問契約解除のご通知
いつもお世話になっております。 〇〇株式会社の〇〇でございます。
この度、諸般の事情により、xx年x月を持って月次顧問契約を解除させていただきたく存じます。理由といたしましては、〇〇のためでございます。 長年にわたり格別のご指導とご尽力を賜り、誠にありがとうございました。
お忙しい中、誠に恐縮ではございますが、契約終了日のxx年x月x日までに、貴事務所にて保管いただいております弊社の書類につきまして、ご返却いただけますようお願い申し上げます。
ご返却いただきたい書類の一覧は、添付ファイルをご参照くださいますようお願い申し上げます。
契約終了までの残りxヶ月間、何卒よろしくお願い申し上げます。 なお、本メールをもちまして顧問契約解約通知書とさせていただきます。
これまでの貴事務所の格別のご尽力に心より感謝申し上げますとともに、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。 今後の貴事務所のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。 |
5-2.郵送する場合の例文
顧問契約に契約解除は文書で通知する旨が記載されてある場合は「顧問契約解除通知書」を配達証明付き内容証明郵便で送付しましょう。
※内容証明郵便は、文書の内容が真実かどうかではなく、文書の存在と差出人の意思表示の日時を証明することができ、契約解除などの重要な通知を送る際に利用されます。内容証明郵便には条件がありますので注意しましょう。
税理士変更を拒否された場合は税理士会へ相談
税理士が契約解除を拒否する場合には、第三者機関である日本税理士会連合会や地域の税理士会の支部に相談してみましょう。
税理士会には紛争処理委員会があり、税理士とのトラブルに関する相談や調停を受け付けています。
調停になると時間や費用がかかるため、なるべく関係が悪化する前に解決し、税理士会への相談は最後の手段にした方がいいでしょう。
まとめ
離婚の方が結婚よりも大変だと言われるように、税理士も顧問契約を行うよりも顧問契約を解除するほうが大変な場合もあります。
しかし、大変だからと言って不満を感じながら顧問契約を続けていくことは双方にとって良いことではありません。
顧問税理士の断り方を知ることで、スムーズかつ円満に税理士を変更することができますので、現在の税理士に不満がある場合には、そのままにせずに税理士変更も検討してみてはいかがでしょうか。
Star Member(スタメン)公認会計士・税理士事務所は、一緒に未来を創る経営パートナーとして、税理士変更についてのお悩みも受け付けております。
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