公開日:2025/7/22
税理士変更とは?税理士を変えるメリット・デメリットやトラブルを避けるためのポイントを解説!
税理士法人オンデック
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、税理士法人オンデック公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
一昔前は、地域で開業している税理士の数も少なく、知人からの紹介などで税理士を探すしか方法がなかったため、税理士を変更することが容易ではありませんでした。
しかし、現在は税理士や税理士法人の数も増加し、インターネットなどで手軽に税理士を探すことができるようになったため、顧問税理士を変更するハードルは以前に比べて低下しています。
顧問税理士を変更することは決して悪いことではなく、変更することで様々なメリットを享受することもできますが、その反面、デメリットやトラブルが発生することもあります。
ここでは税理士変更について「税理士を変えるメリット・デメリットやトラブルを避けるためのポイント」について解説します。
税理士変更とは
一般的に会社が税理士と契約する場合「顧問契約」を結ぶことになります。
税理士との顧問契約とは、会社が毎月または年単位で一定の顧問料を支払うことで税理士が会社の税務相談や決算手続き・資金繰りなど、経営のサポートを継続的に行う契約のことを指します。
税理士変更とは、現在の顧問税理士との契約を解除し、新しい税理士と顧問契約を結ぶことを言います。
1-1.よくある税理士変更の理由
「今の税理士を変更したい」というケースは決して珍しいことではありません。
経営者が税理士を変更したいと思う主な理由には次のようなものがあります。
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顧問税理士への不満については「【もう失敗しない】税理士への不満ランキングを徹底調査!」で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
税理士変更のメリット
税理士変更を行うことで、今の顧問税理士への不満を解消するとともに次のようなメリットが期待できます。
2-1.より質の高いサービスを受けられる可能性がある
税理士は「モノ」を提供するわけではないため、税理士やスタッフの知識量やクライアントに対する姿勢が「サービスの質」に直結します。
新しい顧問税理士を選ぶ際には「最新の情報を取り入れている税理士」や「自社が営んでいる業種についての専門的な知識がある税理士」「節税や融資の相談に積極的に対応してくれる税理士」など、自社にとってより有益な税理士は誰なのかを意識することで、より質の高いサービスを受けられる可能性があります。
2-2.サービス内容の見直しによりコストが削減できる可能性がある
税理士業界は一律で報酬が決まっているのではなく、料金体系は各税理士事務所で異なります。
これまでの顧問税理士が提供するサービスに対して報酬額が高いと感じている場合は、費用対効果を意識して新しい税理士を選ぶことにより、コストを削減できる可能性があります。
また、これまでの顧問税理士から提供されるサービス内容のうち、自社で対応できるようなものがある場合は、サービス内容の見直しを行うことで税理士費用の削減が期待できるでしょう。
2-3.コミュニケーション面での改善が図れる
顧問税理士に対して「コミュニケーション面で不満がある」という方は珍しくありません。
サービス内容に不満がない場合であっても、質問に対する対応が遅かったり、年に1度しか対面で話ができなかったりなど、コミュニケーションに対する不満が募ることもあります。
税理士変更を行い、距離の近い関係を構築できる税理士を顧問税理士にすることでコミュニケーション面での改善が図れ、業務効率の向上なども期待できるでしょう。
2-4.IT化の促進による経理業務の効率化ができる可能性がある
経理業務にIT化は、業務効率化、コスト削減、正確性向上、リスク管理など、会社を経営していくうえで多くのメリットをもたらす非常に重要な要素です。
現在の税理士が高齢などによりITに疎く、クラウドを活用したファイル共有やクラウド会計などのシステムを活用できていない場合には、税理士変更により経理業務のIT化を進め、業務の効率化を図ることができます。
IT化を意識した税理士変更を行う場合には「どのようなITツールを活用することができるのか」「どのクラウド会計ソフトに対応しているのか、導入支援を行うことができるのか」など、税理士のデジタル関係の能力について質問するようにしましょう。
税理士変更のデメリット
税理士変更はメリットだけでなく、デメリットも存在します。
デメリットを事前に把握することで税理士変更によるリスクを軽減し、円滑に進めていくことができるでしょう。
税理士変更による主なデメリットには次のようなものがあります。
3-1.新しい税理士選びに手間がかかる
新しい税理士を探すためには、インターネット上で探す方法や知り合いに紹介してもらう方法、税理士紹介サービスを利用する方法など様々な方法がありますが、どの方法でも自社に合った税理士を探し出すためには手間と時間が必要になります。
今の税理士よりもいい税理士がなかなか見つからず、経営と税理士探しが両立できずにストレスを感じてしまうこともあります。
納得がいく税理士を見つけるためには焦らずに時間と心に余裕を持って進めることが大切です。
3-2.引継ぎによるトラブルのリスクがある
やっと納得がいく税理士が見つかったとしても、新しい税理士への引き継ぎが上手くいかずに苦労する場合があります。
税理士変更時の引き継ぎはポイントを押さえ、計画的に書類などの準備を行うことが重要です。
引き継ぎのポイントについては「税理士変更時の引き継ぎに必要な書類やスムーズに引き継ぐためのポイントを徹底解説!」をご覧ください。
3-3.新しい税理士と相性が合わない可能性がある
納得できる税理士を見つけたと思っていても、毎月の監査などの業務を進めていくうちに「相性が合わないかもしれない」と感じてしまうこともあるかもしれません。
そうなってしまうと「また税理士を変更したい」となってしまい、頻繁に税理士を変更するようになってしまうおそれがあります。
頻繁に税理士を変更してしまうと「税務処理に一貫性がなくなってしまうリスク」「税務調査時の対応が不十分になってしまうリスク」などが生じてしまいます。
また、税理士からは「頻繁に顧問税理士を変える会社」として認識されてしまい、依頼しても断られてしまう可能性もありますので税理士変更は慎重に行うようにしましょう。
3-4.短期的にコストが増える可能性がある
税理士変更を行う際には、前の税理士との「契約解除料」が発生してしまうこともあります。
顧問契約書の内容を確認し、契約書の内容に沿って税理士解約手続きを進めれば違約金や契約解除料を請求されることはありませんので事前に確認しておきましょう。
また、新しい税理士と契約する際に新たな会計システムの導入など、初期費用がかかる場合もあり、短期的にコストが増えるおそれが考えられます。
税理士変更でトラブルを避けるための注意点
税理士変更により生じるトラブルは、適切に準備し対策することで防ぐことができます。
トラブルにならないためには、次のポイントに注意しながら進めていくことをおすすめします。
4-1.契約書の内容をしっかりと確認しておく
税理士変更をする際には、事前にしっかりと現在の顧問税理士との契約内容を把握しておきましょう。
契約内容には、解約のタイミングや条件が含まれている場合が多く、契約の内容に従わずに解約する場合には違約金が発生する場合もあります。
まずは契約内容を確認し、顧問契約の解約をめぐって不要な争いが生じないように進めていきましょう。
顧問税理士の解約方法は「税理士変更の断り方は?断る際の伝え方や文章についても解説!」で詳しく紹介していますのでご覧ください。
また、新しい税理士と顧問契約する場合の契約書についても不備がないか十分に確認して契約するようにしましょう。
4-2.税理士変更のタイミングを見極める
税理士の変更は「タイミング」が大切です。
可能であれば、次の全てに当てはまるタイミングでの税理士変更が理想的です。
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4-3.現税理士へ変更の意思を早めに伝える
税理士を変更する意思を固め、新しい税理士の目処がついたら早めに現在契約している税理士へ解約する意思を伝えましょう。
解約の意思を伝える際には、対立関係にならずに円満に解約できるように心がけることが大切です。
税理士と対立してしまうと、預けている書類等の引き渡しやデータ関係の連携などに影響してしまい、今後の新しい税理士への引き継ぎがスムーズにいかなくなってしまうことも考えられます。
4-4.重要な内容は書面でやり取りする
顧問契約を解約する場合には、口頭だけで伝えるのでなくメールなどの文章でも伝えましょう。
口頭だけの契約の解除は「言った」「言わない」の問題に発展するおそれがあるため、トラブルを回避するためにも書面で記録することが重要です。
また、契約解除以外においても、税理士からの返却書類のリストをもらっておくと今後のトラブルの回避に繋がります。
税理士変更に関するよくある質問と回答
5-1.Q.税理士変更にはどれくらいの期間がかかりますか?
A.引き継ぎ書類の準備や業務フローの確認、会社の財務状況の把握などが必要になるため、一般的には1~2か月ほど引き継ぎに必要になるでしょう。
この期間中は、前の税理士との連携も必要になるため、顧問契約が切れる前に新しい税理士と顧問契約を結び、並行して進めていくことも検討してみましょう。
5-2.Q.税理士を変更するベストなタイミングは?
A.税理士を変更するタイミングは「前の税理士との顧問契約で違約金が生じないタイミング」「決算月から余裕を持った時期」「税理士の繁忙期ではない時期(一般的には2月・3月・5月・12月)」を満たす時期がベストなタイミングです。
5-3.Q.現税理士にどのように伝えれば良いですか?
A.現税理士への断り方は、こちらの不満を伝えるのでなく、これまでの感謝を伝え、喧嘩別れにならないように配慮しましょう。
解約期日はしっかりと伝え、書面で残しましょう。
5-4.Q.顧問料の相場はどれくらいですか?
A.税理士の顧問料の相場は会社の規模(年間の売上高など)や訪問頻度、提供するサービスの内容により異なります。
また、地域性による要因もあるため、具体的な金額は税理士事務所への確認が必要です。
一般的には、法人であれば月額3万円が1つの指標と言われています。
まとめ
現在の税理士に不満がある場合、税理士を変更することで不満が解消し、様々なメリットを得ることができますが、税理士変更によるデメリットが生じることもあるため、慎重な検討が必要です。
また、税理士変更する場合には、新しい税理士への引き継ぎをスムーズに行うことができなければ税務申告等に影響を与えてしまうおそれがありますので注意しましょう。
税理士法人オンデックは、税理士変更のお悩みについても対応しております。
「顧問税理士を変更したい」という場合には、お気軽にご相談ください。
必要書類や税理士変更までの手順などについて詳しくお話させていただきます。