税務・会計

公開日:2026/1/27

決算対策の完全ガイド|中小企業がやるべき節税と融資を有利にする決算対策とは

この記事の監修
山田俊輔

税理士法人オンデック
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、税理士法人オンデック公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

中小企業の経営者にとって、年に1度の決算は非常に重要であり、「決算対策」の可否が鍵を握ります。

決算対策とは、決算直前に想定外の利益が出た場合に、翌期の税負担を抑えたり、銀行融資を受けやすくしたりするために行う戦略的な準備のことを指します。

決算が間近にせまり「今からではもう遅い」と思われる方もいるかもしれませんが、諦める必要はありません。

決算直前であっても、法令に基づいた適切な手法を選択することで、会社のキャッシュを守り、社会的信用を高めることが可能です。

ここでは「中小企業がやるべき節税」と「融資を有利にする決算対策」について詳しく解説します。

決算対策の方向性

決算対策と聞くと「税金を減らすこと」だけを思い浮かべてしまうかもしれませんが、決算対策では、節税対策の他にも「融資対策」の側面もあります。

1-1.節税対策

節税対策は、経費を適切に計上し、課税対象となる利益(所得)を圧縮することで、法人税などの税負担を軽減することを目的とします。

ただし、節税のために不要な経費を使いすぎるなど、過度な節税対策は、手元のキャッシュが減少してしまうおそれがあります。

その結果、会社の財務体質が弱まり、予期せぬ損失に対応できなくなるリスクがあるため、節税対策はバランスを考えながら実行することが大切です。

1-2.融資対策

銀行から融資を受ける場合には、一般的に過去3期分の「決算書」の提出が求められます。

銀行の融資審査では「貸したお金が確実に返ってくるか」を決算書の安全性や収益性から判断しているため、融資対策を優先にする場合は利益を出して、自己資本比率を高める判断も必要になります。

決算対策では「節税だけ」「融資だけ」に偏らず、自社の資金状況や将来の投資計画に合わせたバランスを見極めることが重要です。

決算直前でも間に合う節税対策7選

決算が間近にせまっている場合でも対策可能な決算対策には、次のようなものがあります。

自社の状況に適したものはないか検討してみましょう。

2-1.短期前払費用の活用

前払費用とは、まだ受けていないサービスに対して先に支払う費用のことであり、原則的には「資産計上」を行います。

ただし、既に支払った前払費用のうち、支払日から1年以内にサービス提供を受ける予定である場合には、支払った全額をその期の経費(損金)にすることができます。

これを「短期前払費用の特例」といい、この特例に該当するものには、地代家賃、生命保険料、リース料、サーバー費用などがあります。

ただし、対象になる費用を月払いから年払いに変更した場合、翌年以降も継続して年払いにする必要があります。

利益が出た年だけ年払いにするような「利益調整」は認められませんので、税理士と相談のうえ慎重に検討しましょう。

2-2.決算賞与の支給

決算賞与とは、従業員に対して業績に応じた臨時ボーナスを支給することをいいます。

一定の要件を満たせば、決算日までに決算賞与の支払いが完了していなくても、未払費用として今期の費用(損金)に計上することが可能です。

要件は次の3つになっており、全て満たす必要があります。

【決算賞与の要件】

  1. 決算日までに支給額を各従業員に通知すること。
  2. 決算日の翌日から1か月以内に全額を支払うこと。
  3. 今期の決算で未払賞与として損金経理すること。

なお、役員に対する決算賞与は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与に該当しなければ損金(税務上の経費)として認められません。

2-3.少額減価償却資産の特例の活用

少額減価償却資産の特例とは、青色申告を提出する中小企業が、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得し、事業の用に供した場合、年間合計300万円を限度に全額を即時償却できる特例です。

利益が出ており、パソコン、事務机、工具、特定のソフトウェアなど、来期に向けて備品を新調したい場合に適した方法です。

令和8年度税制改正では、即時償却が可能な取得価額の上限が、現行の30万円未満から40万円未満に引き上げられる予定になっており、適用期間についても2029年3月末まで3年間延長されます。

少額減価償却資産の特例を利用するためには、決算日までに事業で使い始めている(事業の用に供する)ことが必須です。

購入しただけで、まだ箱に入っている状態では認められません。

2-4.消耗品のまとめ買い

文房具、コピー用紙、切手、収入印紙などの消耗品は、原則として「使った分」だけが経費になりますが、毎期一定量を購入し、継続的に消費するものであれば、購入時に一括して経費計上することが認められています。

消耗品のまとめ買いは、日常的に使用する事務用品や包装材料などが多く、決算間際に少額の利益調整をしたい場合に適した節税対策と言えるでしょう。

ただし、あまりに多額のまとめ買いや来期に明らかに使い切れない量を購入した場合は、経費ではなく「貯蔵品」として資産計上するように税務署から指摘されるリスクがあります。

2-5.不良在庫・固定資産の処分

売れる見込みのない在庫や、使用していない機械などがある場合、廃棄・売却・除却することで、「棚卸資産廃棄損」や「固定資産除却損」を計上し、利益を圧縮することができます。

固定資産の除却は、法人税の節税に繋がるだけでなく、市区町村が事業で使っている固定資産に対して課税する償却資産税の節税にもなります。

注意点は、「廃棄した事実」を証明できるよう、廃棄業者からの領収書や処分の前後の写真を保存しておきましょう。

帳簿から数字を消すだけでなく、実態を伴わせる必要があります。

2-6.経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入・増額

経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度であり、支払った掛金の全額を損金(税務上の経費)に算入することができます。

掛金は月額5,000円から20万円まで選べ、最大800万円まで積み立てが可能です。

経営セーフティ共済による決算対策は、安定的に利益が出ており、簿外にキャッシュを積み立てつつ節税したいといった場合に適した節税対策と言えるでしょう。

掛金を40か月以上納めれば、解約時に全額が戻ってきますが、受け取ったときは「収益(益金)」となり、税金が発生します。

解約時期を赤字の期や役員の退職金支払い時期に合わせるなど、出口戦略が必要不可欠です。

2-7.修繕の前倒し実施

事務所の壁の塗り替えや設備のメンテナンスなど、必要な修繕を決算前に行うことで、修繕費を経費計上し、利益を圧縮することができます。

近い将来必ず実施する予定の修繕があり、今期に利益が多く出ている場合に向いている方法です。

ただし、修繕の内容が「現状復旧」ではなく、「機能を高める」「資産価値を向上させる」といった内容(資本的支出)とみなされると、経費にはならず減価償却資産となりますので、見積もりの段階で税理士に相談することをおすすめします。

銀行融資を有利にする決算対策

銀行融資を円滑にするための決算対策では、主に「貸借対照表(B/S)」をきれいにすることを重点的に行います。

3-1.自己資本比率の向上

自己資本比率(純資産÷総資産)が高いほど、会社は安定していると評価されます。

自己資本比率を改善するためには、継続的に利益を出す必要があり、節税対策に偏った決算対策を続けると自己資本比率が低下してしまいます。

融資対策と節税対策は、バランスが非常に大切ですので、決算対策は必ず税理士に相談しながら進めましょう。

3-2.前期比で増収増益

銀行融資では、会社の成長性もチェックされます。

そのため、本業の儲けを示す「営業利益」がプラスであることが必須です。

決算直前に無理に経費を使って利益を圧縮し、前期より減益になってしまうと、成長性が疑われ、融資枠が縮小される可能性が考えられます。

前期比で増収増益になっているかどうかを意識して決算に取り組みましょう。

3-3.仮払金・貸付金の精算

貸借対照表に計上されている「役員貸付金」や「仮払金」は、会社のお金が不透明な使途に流出していると疑われるため、銀行から非常に厳しく見られます。

これらの科目の残高があると、資産の実質的な価値がゼロ(資産性がない)とみなされ、自己資本比率を実態より低く評価されてしまうおそれがあります。

決算日までに役員報酬と相殺したり、個人資産で返済するなどし、残高をゼロにしましょう。

3-4.売掛金の早期回収と買掛金の支払調整

売掛金を早期回収すれば現預金が増え、銀行から「支払能力が高い」と評価されます。

売掛金の回収が遅いと架空売上や不良債権を疑われるため、早めの現金化が重要です。

一方、買掛金の支払調整を行うことで手元資金は守れますが、遅らせすぎると資金繰り管理能力が疑われるリスクが考えられます。

間違った決算対策

「節税さえできればいい」「赤字にさえならなければいい」という目先の判断で行う決算対策は、会社の財務状況を悪化させるおそれがあります。

経営者が陥りやすい「間違った決算対策」を見ていきましょう。

4-1.無駄遣いによる経費計上

「税金を払うくらいなら使い切ってしまおう」と、事業に必要のない支出を増やすことは非常に危険な行為です。

例えば、税率を約30%と仮定すると、100万円の経費を使っても節税額は30万円にとどまり、手元のキャッシュは70万円も減少してしまいます。

4-2.過度な節税による赤字転落

過度な節税により、利益を圧縮しすぎて、最終的な決算が「赤字」になってしまうと会社の経営の体力を奪うことになってしまいます。

赤字決算になってしまうと、銀行は「債務償還能力(借金を返す力)がない」というネガティブな判断を行い、特に「本業の儲け」を示す営業利益がマイナスの場合、継続的な融資が困難になるリスクが高まります。

4-3.粉飾決算

融資を受けたい一心で、在庫を水増ししたり、売上を架空計上したりして、実態よりも利益を多く見せる行為を「粉飾」といいます。

一度粉飾を行ってしまうと、翌期以降にその「歪み」を解消することが難しくなり、負の連鎖に陥ってしまいます。

また、銀行の融資審査では、売掛金や棚卸資産の「回転期間」の推移から、粉飾は高い確率で見抜かれてしまいます。

粉飾が発覚した場合、銀行との信頼関係は完全に失墜し、融資の即時返済を求められたり、詐欺罪に問われたりするおそれがあります。

決算対策はいつから始めるべき?

決算対策は、毎月の月次決算を見ながら、常に着地点を予測しながら進めることが理想です。

しかし、現実には日々の業務に追われ、決算日間際になって慌ててしまう経営者の方も少なくありません。

決算間近になり「決算対策は何をすればいいのだろう」と焦ってしまうこともあるかもしれませんが、今からでも決して遅くはありません。

ここでは、決算3か月前、1か月前、そして決算日以降の各フェーズで「何をすべきか」を見ていきましょう。

5-1.決算3か月前

この時期は、選択肢が多く、効果的な対策を打てる時期です。

9か月分の実績から最終的な利益と税額を予測し、早期に資金繰りの計画を立て、戦略的な投資の検討などを行いましょう。

具体的には、設備投資や人材採用、ホームページのリニューアルなど、支出を伴うものの「将来の利益に繋がる施策」をじっくり検討し、実行に移しましょう。

5-2.決算1か月前

決算1か月前は、決算対策のラストスパートの時期です。

不良在庫の廃棄処分や、使っていない固定資産の除却など、即効性があり、かつキャッシュを無駄にしない施策に集中しましょう。

また、利益が大きく出ている場合には、従業員に決算賞与の通知を決算日までに行うことにより、決算賞与を未払費用として計上することが可能ですので、検討してみましょう。

5-3.決算日以降

決算日を過ぎると、支出を伴う決算対策を行うことはできません。

しかし、未払金・未払費用を徹底して計上するなど、会計処理の精度を高めることで決算対策を行うことができます。

また、融資を受けている場合であれば、決算書の内容を正確に説明できるよう数値の整理を行いましょう。

赤字や売上の急変があっても、その原因と改善策をセットで提示できれば、金融機関との信頼関係を維持することができるでしょう。

まとめ

決算対策は早ければ早いほど選択肢が広がりますが、直前であっても税理士と共に動けば、「自社にとって最適な着地点」を見つけることができます。

税理士法人オンデックでは、経営者様の不安に寄り添い、今から間に合う最善のプランをご提案します。

節税と融資のバランスに悩まれているなら、ぜひお早めにご相談ください。

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