更新日:2026.09.11
公開日:2026/10/2
顧問税理士が経営相談に乗ってくれない…税務型と経営型の違いを解説!
税理士法人オンデック
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、税理士法人オンデック公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
「決算のときにしか顔を合わせない」「相談しても『税務上は問題ありません』で話が終わってしまう」
顧問税理士との関係について、こうした物足りなさを感じている経営者は少なくありません。
日本税理士会連合会は、経営者の7割が顧問税理士等を経営問題の相談相手と考えていると説明しています。
実際、中小企業庁の2020年版小規模企業白書でも、日常の相談相手として税理士・公認会計士が上位に挙がっており、しかも日常の相談相手を有している経営者のほうが、直近5年間の経常利益について「大幅増加」または「増加」と回答する割合が高いという結果が示されています。
期待されている役割は明確です。それにもかかわらず、実際には相談できていないという声が絶えません。
同じ白書では、重要と考える経営課題について相談を実施できていない理由として、「適切な相談相手とのつながりがないから」という回答が約半数を占めることも示されています。
顧問税理士がいるにもかかわらず、相談相手がいないと感じている経営者が相当数いるということです。
このギャップはなぜ生まれるのでしょうか。
そこには、税理士個人の姿勢だけでは説明できない構造的な理由があります。
それを理解しないまま事務所を変えても、同じことが繰り返されるおそれがあります。
ここでは、経営相談に乗ってもらえない背景を整理したうえで、税務型の税理士と経営型の税理士の違い、そして見極めるための具体的な方法を解説します。
- なぜ顧問税理士は経営相談に乗ってくれないのか
- 税理士の関与には「税務型」と「経営型」がある
- 経営相談ができる税理士かを見極める5つの質問
- 3-1.①「うちの会社の課題は何だと思いますか」
- 3-2.②「この投資はすべきだと思いますか」
- 3-3.③「銀行にはどう説明すればよいですか」
- 3-4.④「同業と比べて、うちの数字はどうですか」
- 3-5.⑤「5年後を考えたとき、今から準備すべきことは何ですか」
- 顧問税理士を変更する前に試せる3つのこと
- それでも経営相談ができないなら、事務所の構造を疑う
- 顧問税理士への経営相談についてよくある質問
- 6-1.Q.経営相談まで依頼すると、顧問料は上がりますか?
- 6-2.Q.税理士と経営コンサルタント、どちらに相談すべきですか?
- 6-3.Q.今の税理士に経営相談を求めるのは失礼ではないですか?
- 6-4.Q.経営相談に強い税理士は、どうやって探せばよいですか?
- まとめ
なぜ顧問税理士は経営相談に乗ってくれないのか
まず押さえておきたいのは、経営相談に応じないこと自体は契約上の問題ではないという事実です。
事務所の方針と経営者が求めているものが合っていないだけ、というケースがほとんどです。理由は3つあります。
1-1.経営相談は、そもそも税理士の本来業務ではない
税理士法第2条は、税理士の業務を「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つと定めています。
これらは税理士だけが行える独占業務です。
また同条第2項では、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができるとされています。いわゆる付随業務です。
ここで重要なのは、経営に関する助言や意思決定への関与が、このどちらにも含まれていないという点です。
つまり、税務申告と記帳だけを行っている税理士は、法律上求められている役割を果たしていることになります。
「相談に乗ってくれない」という不満の正体は、多くの場合、契約の範囲と経営者の期待がずれていることにあります。
1-2.顧問料の設計が「申告を仕上げるまで」になっている
多くの顧問契約は、記帳の確認、月次試算表の作成、年末調整、決算・申告といった業務を前提に設計されています。
この設計は、申告を正しく完了させることをゴールにしています。
したがって、そこに至るまでの作業が終われば、契約上の義務は果たされたことになります。
経営会議への同席、投資判断への助言、金融機関との交渉支援といった業務は、そもそも見込まれていません。
契約書に記載されていない業務を期待し続けても、状況は変わりません。
まずは自社の契約が何を対象としているのかを確認してみてください。
1-3.事務所の業務構造が、対話の時間を生まない
3つ目は、事務所側の体制の問題です。
記帳のチェック、証憑の整理、申告書の作成に多くの人手を割いている事務所では、担当者一人あたりの関与先数が多くなりがちです。
その結果、一社あたりに使える時間は月次の資料を届ける程度に限られ、腰を据えて話す時間が構造的に確保できません。
実務でも、月次訪問の時間の大半が試算表の数値説明で終わってしまい、経営者が本当に聞きたかったことを切り出せないまま終了時刻になる、という場面は珍しくありません。
これは担当者個人の能力や熱意の問題ではなく、事務所の業務設計の問題です。
だからこそ、顧問税理士に担当者を替えてもらっても状況が変わらないことが多いのです。
税理士の関与には「税務型」と「経営型」がある
税理士事務所の関与のしかたは、大きく2つに分けて考えると理解しやすくなります。
2-1.関与の起点が違う
税務型の関与は、すでに終わった取引を正しく記録し、税額を確定させることから始まります。対象は過去です。
経営型の関与は、これから決めることに必要な材料を揃えることから始まります。
設備投資をすべきか、人を採用すべきか、値上げに踏み切るべきか——対象は将来の判断です。
同じ決算書を見ていても、前者は「正しく作れているか」を確認し、後者は「この数字から何を決めるべきか」を考えます。
出発点が異なるため、話す内容も自ずと変わります。
2-2.会う頻度とタイミングが違う
税務型では、決算前後と年末調整の時期に接点が集中します。
1年のうち数回、報告を受ける関係です。
経営型では、意思決定が必要になる場面の手前に接点が置かれます。
月次のタイミングだけでなく、大きな判断をする前に相談が入ります。
数字が確定してから報告を受けるのと、判断する前に相談できるのとでは、価値がまったく異なります。
2-3.出てくるものが違う
税務型の成果物は、申告書と試算表です。正確であることが品質の基準になります。
経営型の成果物は、選択肢とその比較です。「A案とB案では、3年後のキャッシュと財務指標がこう変わります」といった形で、判断に必要な材料が示されます。正確さに加えて、判断に使えるかどうかが問われます。
こうした比較を可能にするには、月次の数字が早く正確に出ていることと、計画と実績を突き合わせる仕組みが前提になります。
▶月次決算とは?メリットや効率化するポイント・注意点を解説!
2-4.どちらが優れているという話ではない
誤解のないように申し上げると、税務型と経営型に優劣はありません。
事業が安定し、大きな投資も承継の予定もなく、正確な申告さえできていればよいという会社であれば、税務型の関与で十分です。
むしろ、必要のない業務に対価を払うことのほうが不合理でしょう。
ずれが生じるのは、会社が経営型の関与を必要とする段階に入っているのに、契約が税務型のままになっているときです。
事業を拡大したい、承継を考え始めた、金融機関との関係を強化したい——こうした局面では、求めるものと提供されるものの差が広がります。
税務処理を正確に終わらせることと、経営の意思決定に関与することは、まったく別の仕事です。
自社が今どちらを必要としているのかを見極めることが出発点になります。
経営相談ができる税理士かを見極める5つの質問
面談の場や既存の税理士との会話で、次の5つを聞いてみてください。
答えの中身よりも、答え方に事務所の性格が表れます。
- うちの会社の課題は何だと思いますか
- この投資はすべきだと思いますか
- 銀行にはどう説明すればよいですか
- 同業と比べて、うちの数字はどうですか
- 5年後を考えたとき、今から準備すべきことは何ですか
いずれも専門知識がなくても投げかけられる質問です。順に見ていきましょう。
3-1.①「うちの会社の課題は何だと思いますか」
数字を預かっている以上、何らかの見立てを持っているのが自然です。
「特にありません」「よくやられていると思います」で終わるようであれば、決算書を作る以上の関与はしていないと考えられます。
3-2.②「この投資はすべきだと思いますか」
税務型の回答は「減価償却は◯年です」「特別償却が使えます」といった税務上の取扱いにとどまります。
経営型の回答は、回収期間、資金繰りへの影響、借入余力への影響まで踏み込みます。
判断そのものを代わりに下してもらう必要はありませんが、判断材料が揃うかどうかは大きな違いです。
実務でも、節税効果だけを理由に高額な設備を導入した結果、翌期以降の資金繰りが圧迫されてしまう例は後を絶ちません。
税務上の有利不利と、経営上の判断は必ずしも一致しないということです。
3-3.③「銀行にはどう説明すればよいですか」
金融機関が決算書のどこを見ているかを理解しているかが分かります。
決算説明に同席した経験があるか、事業計画や資金繰り表の作成を支援しているかも、あわせて確認するとよいでしょう。
▶税理士を変更すると銀行融資に影響する?金融機関が見ている点を解説!
3-4.④「同業と比べて、うちの数字はどうですか」
自社の数字を絶対値でしか見ていないと、良し悪しの判断ができません。
粗利率、労働分配率、自己資本比率といった指標を、業種の特性や一般的な水準を踏まえて相対的に評価できるかどうかは、実力が表れやすい質問です。
3-5.⑤「5年後を考えたとき、今から準備すべきことは何ですか」
承継、M&A、事業の再編といった中長期の論点に触れられるかを確認します。
今期の税額だけを見ているのか、その先を見ているのかが明確に分かれる質問です。
実務では、株価が上がりきってから承継の相談を受けるケースが少なくありません。
数年前に着手していれば取れた選択肢が、その時点では失われていることもあります。
中長期の論点にいつ触れてくれるかは、想像以上に大きな差となって表れます。
顧問税理士を変更する前に試せる3つのこと
不満があるからといって、すぐに変更が必要とは限りません。
まずは次の3つを試してみる価値があります。
4-1.①求めていることを言葉にして伝える
意外に多いのが、期待が伝わっていないだけというケースです。
税理士側からすると、余計な口出しを嫌う経営者も一定数いるため、求められていないことには踏み込まないという判断をしていることがあります。
「税務だけでなく、経営判断の相談にも乗ってほしい」と明確に伝えることで、対応が変わる可能性はあります。
4-2.②月次の場に議題を持ち込む
試算表の説明を受けるだけの場になっているのであれば、こちらから議題を持ち込んでみましょう。
「来期このくらいの設備投資を考えている」「人員を増やしたいが利益が保つか知りたい」といった具体的なテーマがあれば、応じられるかどうかがはっきりします。
4-3.③スポットで別の専門家に相談する
契約を切り替えずに、特定のテーマだけ別の専門家に相談するという方法もあります。
現在の税理士との関係を維持しながら、経営型の関与がどういうものかを実際に体験できます。
その比較を経たうえで、変更するかどうかを判断すれば、失敗が少なくなります。
それでも経営相談ができないなら、事務所の構造を疑う
3つを試しても変化がない場合、原因は担当者個人ではなく、事務所の設計にあると考えられます。
5-1.担当者を替えても解決しないことが多い
前述のとおり、対話の時間が確保できないのは業務構造の問題です。
同じ事務所の別の担当者に替わっても、抱えている関与先数や業務の進め方が変わらなければ、結果は同じになります。
「担当者が合わない」という認識で動くと、この点を見誤ります。
5-2.資格や登録の有無では見極められない
事務所を比較する際、ホームページに並んでいる資格や登録を判断材料にしたくなります。
しかし、これらは経営相談の実力を測る指標にはなりません。
たとえば、認定経営革新等支援機関という国の認定制度があります。
認定基準は、税務・金融・企業の財務に関する専門的な知識を有していることと、法定業務に係る1年以上の実務経験を含む3年以上の実務経験を有していることなどとされています。
税理士として通常の実務を積んでいれば満たせる水準です。
実際、中小企業庁は現在も2か月ごとに新たな認定を行っており、2026年だけを見ても、2月に319機関、4月に403機関、6月に420機関、8月に362機関が追加で認定されています。
登録数は増え続けており、この認定を受けていること自体が特別な選別を通過した証にはなりません。
もちろん、補助金の申請などで認定支援機関の関与が求められる場面はあるため、制度としての意味がないわけではありません。
しかし「認定を受けているから経営相談に強い」と考えるのは誤りです。
同じことは、各種の民間認定や協会の会員資格にも当てはまります。
掲げられている肩書ではなく、実際に何をしてきたかを見てください。
5-3.経営相談が「業務」として設計されているか
最も確実な確認方法は、経営相談が事務所の業務として明確に位置づけられているかを尋ねることです。
- 月次の面談で何を議題にしているか
- 事業計画の策定支援を何社に対して行っているか
- 事業承継やM&Aの相談に対応した実績があるか
- 決算説明に同席した経験がどの程度あるか
好意で相談に乗るという姿勢と、業務として設計されている状態はまったく違います。
前者は担当者が忙しくなれば消えてしまいますが、後者は仕組みとして残ります。
顧問税理士への経営相談についてよくある質問
6-1.Q.経営相談まで依頼すると、顧問料は上がりますか?
A.業務の範囲が広がれば、対価が変わるのは自然なことです。ただし、見るべきは金額そのものではなく、その対価が何に対して支払われているのかという点です。
記帳と申告だけの契約と、経営判断の相談まで含む契約では、そもそも比較の対象が異なります。金額の高低ではなく、自社が必要としている関与が含まれているかで判断してください。
6-2.Q.税理士と経営コンサルタント、どちらに相談すべきですか?
A.テーマによります。マーケティングや組織開発といった領域は、専門のコンサルタントのほうが適しているでしょう。
一方、資金繰り、投資判断、金融機関対応、事業承継、M&Aといった、数字と税務が絡む領域では、自社の決算内容を継続的に把握している税理士のほうが有利です。毎月数字を見ている立場だからこそできる助言があります。
6-3.Q.今の税理士に経営相談を求めるのは失礼ではないですか?
A.まったく失礼ではありません。長い付き合いがあるほど遠慮してしまいがちですが、期待を伝えないまま不満を蓄積させるほうが、双方にとって不幸です。
まずは率直に希望を伝えてみてください。それで対応が変われば最良ですし、変わらないのであれば、判断材料が一つ増えたことになります。
6-4.Q.経営相談に強い税理士は、どうやって探せばよいですか?
A.ホームページで事業承継やM&A、財務支援の実績が具体的に示されているかを確認したうえで、初回面談で本記事の5つの質問を投げかけてみてください。
複数の事務所に同じ質問をすると、回答の深さの差がはっきりします。税務の知識ではなく、自社の事業をどこまで理解しようとするかを見比べてください。
まとめ
顧問税理士が経営相談に乗ってくれない背景には、経営相談が税理士の本来業務ではないこと、顧問契約が申告の完了を前提に設計されていること、そして事務所の業務構造が対話の時間を生んでいないことがあります。担当者の姿勢だけの問題ではありません。
だからこそ、変更を検討する前に、まず自社が求めているものを言葉にして伝え、月次の場に議題を持ち込んでみてください。それでも変わらないのであれば、事務所の設計そのものが税務型であると考えられます。
そのうえで新しい依頼先を探す際は、経営相談が好意ではなく業務として設計されているかを確認してください。仕組みとして存在しているかどうかが、長期的な差になります。
税理士法人オンデックは、大阪・本町を拠点に、日本中の中小企業を元気にし、100年企業を創ることをミッションに掲げて活動しています。記帳や申告を正確に行うことはもちろん、その先にある経営の意思決定にまで関与し、伴走することを大切にしています。財務戦略やM&A、事業承継まで見据えたご相談にも対応しておりますので、顧問税理士との関係にお悩みの際は、まずはお気軽にお問い合わせください。
本記事は令和8年9月現在の法令・通達に基づいて執筆しています。
【参考資料】
・日本税理士会連合会「中小企業支援」
・中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」第3部第2章第4節 日常の相談相手の活用
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b3_2_4.html
・中小企業庁「認定経営革新等支援機関」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/
・中小企業庁「経営革新等支援機関認定一覧について」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.html