税務・会計

更新日:2026.09.11

公開日:2026/9/18

税務調査の通知後でも税理士は変更できる?判断基準と進め方を解説!

この記事の監修
山田俊輔

税理士法人オンデック
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、税理士法人オンデック公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

税務署から調査の連絡が入った途端、「この税理士に任せて本当に大丈夫だろうか」という不安が一気に強まる——そうしたご相談は決して珍しくありません。

普段から連絡が取りづらい、質問への回答が曖昧、そもそも調査に立ち会ってくれるのかも分からない。

こうした状態で調査を迎えることに不安を覚えるのは当然のことでしょう。

一方で、「この時期に変更したら税務署の心証が悪くなるのではないか」「そもそも間に合うのか」という懸念から、動けないまま当日を迎えてしまう方も多くいらっしゃいます。

結論から申し上げると、調査の通知を受けた後でも税理士を変更することは可能です。

法律上、これを制限する規定はありません。

ただし、変更したほうがよいケースと、調査が終わってからにすべきケースがはっきり分かれます。

ここでは、調査中の税理士変更が制度上どう扱われるのかを整理したうえで、変更を検討すべきケースの見極め方と、実際に切り替える場合の進め方を解説します。

目次[非表示]
  1. 結論:調査の通知後でも税理士の変更は可能
    1. 1-1.変更を制限する規定は存在しない
    2. 1-2.変更を理由に調査の心証が悪くなることはない
  2. それでも税務調査中の変更が容易ではない3つの理由
    1. 2-1.調査対象期間の申告書を作成したのは前任者
    2. 2-2.調査のやり取りの経緯が引き継がれない
    3. 2-3.準備期間が足りない
  3. 税務調査中に変更すべきケースと、調査後まで待つべきケース
    1. 3-1.調査中でも変更を検討すべき3つのケース
    2. 3-2.調査が終わってからにすべきケース
  4. 税務調査中に税理士を変更する場合の進め方
    1. 4-1.①先に変更先を確保してから動く
    2. 4-2.②調査日程の変更を申し入れる
    3. 4-3.③税務代理権限証書を提出してもらう
    4. 4-4.④調査対象期間の資料と、やり取りの経緯を引き継ぐ
    5. 4-5.⑤前任者と並走させるという第三の選択肢
  5. 契約を切り替えずに相談するという選択肢
    1. 5-1.セカンドオピニオンとしての活用
    2. 5-2.修正申告に応じるかどうかは、後から取り返せない
  6. 税務調査中の税理士変更についてよくある質問
    1. 6-1.Q.調査の当日でも税理士を変更できますか?
    2. 6-2.Q.前の税理士のミスが原因だった場合、責任を追及できますか?
    3. 6-3.Q.事前通知のない調査だった場合はどうすればよいですか?
    4. 6-4.Q.調査が終わった後、いつ変更するのがよいですか?
  7. まとめ

結論:調査の通知後でも税理士の変更は可能

まず制度面から確認します。調査の途中で税務代理人が交代することは、法律上まったく想定外の事態ではありません。

1-1.変更を制限する規定は存在しない

税理士が納税者を代理して税務署とやり取りするためには、税理士法第30条に基づく税務代理権限証書を提出する必要があります。

逆にいえば、新しい税理士がこの書面を提出すれば、その時点から税務代理人として調査に対応できるということです。

国税通則法第74条の9は、実地の調査を行う場合、税務署長等はあらかじめ納税義務者に対して調査の開始日時や場所などを通知するものとし、その納税義務者に税務代理人がある場合には税務代理人も通知の対象に含めると定めています。

ここで前提とされているのは「現に税務代理人であるかどうか」であり、いつから代理人になったかは問われません。

つまり、調査の通知後に税理士が交代しても、手続上は新しい税理士が引き続き窓口となるだけのことです。

1-2.変更を理由に調査の心証が悪くなることはない

「税理士を変えたら怪しまれるのではないか」という不安をよく伺いますが、調査官が見るのは申告内容と帳簿の裏づけであって、誰が代理人であるかではありません。

税理士の交代そのものが調査の厳しさを左右することは、実務上ありません。

ただし、現実的な影響はあります。

新しい税理士が資料を確認する時間が必要になるため、調査日程の再調整を申し入れることになるでしょう。

国税通則法第74条の9第2項は、通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して日時や場所の変更を求められた場合、税務署長等はその事項について協議するよう努めるものと定めています。

もっとも、変更を求める理由が合理的かどうかは事案ごとに判断されます。

国税庁の通達では、病気や怪我による入院、親族の葬儀といった一身上のやむを得ない事情や、業務上やむを得ない事情がある場合には、合理的な理由があるものとして取り扱うとされています。

税理士の交代がこれに準じて認められるかは、状況次第だとお考えください。

それでも税務調査中の変更が容易ではない3つの理由

制度上は可能でも、実務上の難しさは別にあります。

ここを理解しないまま動くと、かえって不利になることがあります。

2-1.調査対象期間の申告書を作成したのは前任者

税務調査では、通常3期分程度の申告内容が対象になります。

その申告書を作成したのは前任の税理士であり、新しい税理士は関与していません。

調査官から「この経費の内容は何か」「この仕訳の根拠は」と問われたとき、答えられるのは当時の処理を知っている人です。

新しい税理士は元帳と証憑から推測するしかなく、即答できない場面が生じます。

回答が遅れれば、調査は長期化します。

実務でも、外注費として処理されていた支出について「なぜ給与ではないのか」と問われ、当時の契約実態を知る人が誰もいないために説明が組み立てられず、結果的に指摘を受け入れざるを得なかったという例があります。

処理の背景を知る人がいるかどうかは、想像以上に大きな差になります。

そもそも税務調査において税理士がどのような役割を果たすのかについては、次の記事で整理しています。

▶税務調査の不安を解消!税理士があなたの味方になる理由

2-2.調査のやり取りの経緯が引き継がれない

事前通知の後、実地調査の前後を通じて、調査官と税理士の間ではさまざまなやり取りが行われます。

どの論点が問題視されているのか、どこまで説明済みなのか、どの資料を追加提出することになっているのか——こうした経緯は書面に残らないことも多く、口頭のやり取りに依存しています。

途中で交代すると、この蓄積が失われます。

新しい税理士は、調査官から改めて論点を聞き直すことになり、説明の一貫性を欠くおそれもあります。

2-3.準備期間が足りない

事前通知から実地調査までにどれだけの期間が置かれるかは法令で定まっているわけではありませんが、実務上は2〜3週間程度とされることが多いといえます。

この短期間で、新しい税理士が3期分の申告内容を把握し、想定される論点を洗い出し、社長と打ち合わせるのは容易ではありません。

日程の再調整が認められたとしても、確保できる時間には限りがあります。

この制約を踏まえたうえで判断する必要があります。

税務調査中に変更すべきケースと、調査後まで待つべきケース

以上を踏まえると、判断は次のように整理できます。

3-1.調査中でも変更を検討すべき3つのケース

次のいずれかに当てはまる場合は、多少の負担を負ってでも動く価値があります。

  • 調査への立会いを断られた、または立ち会えないと言われた
  • 連絡が取れない、対応を先送りされ続けている
  • 申告内容に不安がある論点について、前任者が説明を避けている

特に3つ目は、税理士個人の姿勢の問題というより、立場の構造から生じるものです。

過去の処理について検討が必要になった場合、その処理を行った本人が、自ら検証して説明することになります。

誰が担当しても難しさの残る状況であり、だからこそ別の目で確認する意味があります。

また、立会いを断られるケースも軽視すべきではありません。

調査当日に専門家が同席していないと、調査官の質問の意図が分からないまま答えてしまい、後から訂正が難しくなることがあります。

実務では、社長が善意で説明した内容が想定外の論点に発展してしまう場面もしばしば見られます。

3-2.調査が終わってからにすべきケース

一方、次のような場合は、その調査だけは現在の税理士に対応してもらい、終了後に切り替えるほうが安全です。

  • 現任者の対応に大きな問題はなく、単に不満が蓄積している
  • 調査日が数日後に迫っており、資料を読み込む時間が確保できない
  • 調査対象期間の処理について、前任者以外に説明できる人がいない

不満があること自体は変更の十分な理由になりますが、そのタイミングが「今」である必要はありません。

調査終了後であれば、落ち着いて引継ぎができます。

▶税理士変更のベストタイミングとは?決算月・期中の注意点を解説!

税務調査中に税理士を変更する場合の進め方

実際に切り替えると決めた場合、次の順序で進めます。

4-1.①先に変更先を確保してから動く

現在の税理士との契約を先に解除してしまうと、代理人が不在の状態が生じます。

この状態で調査官から連絡が入れば、社長が一人で対応せざるを得ません。

まず変更先の税理士に状況を説明し、調査対応を引き受けてもらえるかを確認してください。

「調査中の案件は受けない」という方針の事務所もあるため、この確認は不可欠です。

4-2.②調査日程の変更を申し入れる

引受先が決まったら、日程の調整を相談します。

前述のとおり、変更の求めがあった場合には協議するよう努めるものとされていますが、認められるかは理由の合理性次第です。

申し入れは、現在の税理士か、新しい税理士が税務代理権限証書を提出したうえで行うことになります。

納税者本人から連絡することも可能です。

4-3.③税務代理権限証書を提出してもらう

新しい税理士が正式に窓口となるためには、税務代理権限証書の提出が必要です。

この書面は税目と対象期間を特定して提出するものであるため、調査の対象となっている税目・期間がすべて含まれているかを確認してください。

法人税だけを記載し、消費税が漏れていた——といった事故は実際に起こり得ます。

4-4.④調査対象期間の資料と、やり取りの経緯を引き継ぐ

引き継ぐべきものは、資料だけではありません。

  • 調査対象期間の申告書、総勘定元帳、証憑
  • 事前通知で示された内容(調査開始日時、場所、対象税目、対象期間、対象となる帳簿書類)
  • 調査官から既に受けている質問と、回答済みの内容
  • 追加提出を求められている資料の有無

このうち3つ目と4つ目が抜けやすい部分です。書面で残っていないことが多いため、前任者に口頭で確認し、記録に残しておきましょう。

▶税理士変更時の引き継ぎに必要な書類やスムーズに引き継ぐためのポイントを徹底解説!

4-5.⑤前任者と並走させるという第三の選択肢

意外に知られていませんが、税務代理人を複数置くことは制度上可能です。

国税通則法第74条の9第6項は、納税義務者について税務代理人が数人ある場合において、そのうちから代表する税務代理人を定めたときは、これらの税務代理人への通知は代表する税務代理人に対してすれば足りると定めています。

つまり、複数の税務代理人が存在することが法律上想定されているということです。

これを踏まえると、調査対象期間の説明は前任者に担ってもらい、今後の方針や交渉の判断は新しい税理士が担う、という並走の形も取り得ます。

完全な交代が難しい局面では、現実的な選択肢となるでしょう。

ただし前任者の協力が前提となるため、円満に話を進めることが条件です。

▶税理士変更の断り方は?断る際の伝え方や文章についても解説!

契約を切り替えずに相談するという選択肢

変更するかどうかを迷っている段階であれば、契約はそのままに、別の税理士の意見を聞くという方法もあります。

5-1.セカンドオピニオンとしての活用

現在の税理士に調査対応を任せたまま、想定される論点や指摘への備えについて、別の専門家に意見を求めるという使い方です。

調査に同席することはできませんが、「この指摘は受け入れるべきものか」「反論の余地はあるか」といった判断材料を得ることはできます。

調査が終わってから変更するかどうかを判断する材料にもなるでしょう。

5-2.修正申告に応じるかどうかは、後から取り返せない

調査の終了時には、調査結果の内容が説明され、修正申告の勧奨を受けることがあります。

ここで修正申告に応じるか、応じずに更正処分を待って争う余地を残すかは、その後の展開を大きく左右する判断です。

修正申告は納税者が自ら行う行為であり、税務署による処分ではありません。

そのため、提出した修正申告の内容そのものについて不服申立てを行うことはできないとされています。

ただし、まったく手立てがなくなるわけではなく、計算に誤りがあった場合などには更正の請求という手続が用意されています。

一方、修正申告に応じずに更正処分を受けた場合には、再調査の請求や審査請求を経て争う道が残ります。

どちらを選ぶかによって、その後に取り得る手段が変わるということです。

この判断を、納得しないまま「税理士に言われたから」で決めてしまうことは避けるべきです。

迷いがあるのであれば、その時点で別の専門家の意見を聞く価値は十分にあります。

税務調査中の税理士変更についてよくある質問

6-1.Q.調査の当日でも税理士を変更できますか?

A.制度上は可能ですが、現実的ではありません。

新しい税理士が資料を確認する時間がまったくないためです。

当日に不安を感じた場合は、その場で回答を保留し、後日改めて説明する形に持ち込むほうが現実的です。

調査官から即答を求められても、確認のうえ回答すると伝えて構いません。

6-2.Q.前の税理士のミスが原因だった場合、責任を追及できますか?

A.税務上の納税義務は納税者本人にあり、追徴税額や加算税は納税者が負担するのが原則です。

そのうえで、税理士の債務不履行や不法行為を理由とする損害賠償を請求できるかは、契約内容と個別の事情によります。

この判断は税務ではなく法律の領域になりますので、弁護士にご相談ください。

なお、請求を検討する場合は、当時のやり取りの記録や提出資料の保全が重要になります。

実務的な補足として、多くの税理士は税理士職業賠償責任保険に加入しています。

届出の失念のように、税理士の過誤によって本来負担せずに済んだ税額が生じた場合、この保険が対応するケースがあります。

まずは前任者に事実関係を確認することから始めるとよいでしょう。

6-3.Q.事前通知のない調査だった場合はどうすればよいですか?

A.国税通則法第74条の10は、違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等の把握を困難にするおそれなど、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、事前通知を要しないと定めています。

この場合、その場で税理士に連絡し、到着まで待ってもらえるかを相談するのが基本です。

税理士が到着するまでの間は、聞かれたことに正確に答え、分からないことは分からないと伝えるにとどめてください。

6-4.Q.調査が終わった後、いつ変更するのがよいですか?

A.調査が完全に終了し、修正申告や更正処分の対応まで片付いてからにしてください。

調査結果への対応が残っている段階で切り替えると、経緯を知る人がいなくなります。

すべてが決着してから、次の決算までの期間を使って引継ぎを進めるのが理想的です。

まとめ

税務調査の通知を受けた後でも、税理士を変更することは制度上可能です。

新しい税理士が税務代理権限証書を提出すれば、その時点から窓口となることができ、変更を理由に調査が厳しくなることもありません。

ただし、調査対象期間の申告書を作成したのは前任者であり、調査のやり取りの経緯も引き継ぎにくいという実務上の難しさがあります。

立会いを断られた、連絡が取れない、前任者が説明を避けているといった深刻な事情がない限りは、その調査を終えてから切り替えるほうが安全でしょう。

いずれの場合も、判断の分かれ目になるのは「調査対象期間について、誰が責任をもって説明できるか」です。

ここを起点に考えれば、答えは自ずと定まります。

税理士法人オンデックは、大阪・本町を拠点に、日本中の中小企業を元気にし、100年企業を創ることをミッションに掲げて活動しています。

記帳や申告を正確に行うことはもちろん、その先にある経営の意思決定にまで関与し、伴走することを大切にしています。

財務戦略やM&A、事業承継まで見据えたご相談にも対応しておりますので、税務調査への対応や顧問税理士の見直しでお悩みの際は、まずはお気軽にお問い合わせください。

本記事は令和8年9月現在の法令・通達に基づいて執筆しています。

【参考資料】

・国税庁「第4章 法第74条の9〜法第74条の11関係(事前通知及び調査の終了の際の手続)」

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/03_2.htm

・国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)

・国税通則法第74条の10(事前通知を要しない場合)

・国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)

・税理士法第30条(税務代理の権限の明示)

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