公開日:2024/6/13
えるぼしとは?種類、認定基準、くるみん認定との違いやメリットを解説!
StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
少子高齢化が進む現代社会では「女性活躍が必須」です。
2016年に女性活躍推進法が制定されましたが、いまだに女性が働く環境の整備は十分とは言えず、働く女性から不平等を訴える声も後を絶ちません。
もっと女性が働きやすい環境を実現するために、厚生労働省では女性の活躍に関する取り組みを実施している企業に対して優良企業の認定である「えるぼし認定」を行い、様々なメリットを与える制度を開始しています。
ここでは「えるぼし認定の概要や認定基準、取得するメリット、類似した制度である認定(くるみん認定)との違い」について詳しく解説します。
えるぼし認定とは
えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき「女性の活躍に関する取り組みが優良な企業」が取得できる制度です。
認定を受けるためには、女性の活躍に関する一般事業主行動計画を策定・実施し、その取り組み状況が優良な場合に、都道府県労働局への申請を行うことで厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)が与えられます。
えるぼし認定を受けることで「えるぼしマーク」を使用することができ、企業の商品や広告、企業のHPにつけることができ、消費者や求職者、取引先などに「女性が能力を発揮しやすい企業」としてアピールすることができます。
えるぼし認定は「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準のうち、基準をいくつ満たしているかによって3段階に分かれています。
えるぼし認定よりもさらに高い基準を満たした企業には「プラチナえるぼし認定」が与えられます。
<えるぼしマーク>
「えるぼし」の由来は、える(L)にはLady(女性)、Labour(働く、取り組む)、Lead(手本)など様々な意味が込められており、星のように輝く女性への「エール」とそんな女性が増えていくよう願いが込められ名付けられました。
1-1.えるぼしの認定基準
えるぼしの認定基準は5つあり、最低でも1つを満たすことで「えるぼし認定」を受けることができます。
具体的な認定基準を見ていきましょう。
1-1-1.認定基準①採用
次のいずれかに該当すること。
①正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること ②正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること ※産業ごとの平均値は「女性活躍推進法特集ページ」で確認できます。 |
1-1-2.認定基準②継続就業
①「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上であること。 ②「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること。
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1-1-3.認定基準③労働時間等の働き方
雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満であること。
上記の計算が難しい場合は、次の算式でも認められる。 [「各月の対象労働者の総労働時間数の合計」-「各月の法定労働時間の合計=(40×各月の日数÷7)×対象労働者数」]÷「対象労働者数」<45時間 |
1-1-4.認定基準④管理職比率
次の①と②のいずれかに該当すること。
①直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること。 ②「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課⾧級に昇進した女性労働者の割合」÷「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課⾧級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上であること。 |
1-1-5.認定基準⑤多様なキャリアコース
直近の3事業年度のうち、以下ア~エについて、
ア 女性の非正社員から正社員への転換(派:雇入れ) イ 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換 ウ 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用 エ おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用 |
えるぼし認定のグレードについて
えるぼし認定は認定基準をいくつ満たすのかによって3段階に区分されます。
段階によって、えるぼしマークの星の数が異なることが特徴です。
取得基準 |
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1段階目(1つ星) |
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2段階目(2つ星) |
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3段階目(3つ星) | 認定基準5項目をすべて満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。 |
※「女性の活躍推進企業データベース」とは、厚生労働省が管轄する「企業における女性の活躍状況に関する情報を一元的に集約したデータベース」となっており、自社の状況の公表、他社の状況の確認をすることができるサイトです。
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/
えるぼし認定を受けた企業は、認定取得後も満たした認定基準の実績を毎年少なくとも1回、データベースに公表することが必要になります。
プラチナえるぼし認定とは
えるぼし認定を受けた企業のうち、取り組み状況が特に優れている企業は「プラチナえるぼし認定」を得ることができます。
プラチナえるぼし認定を得るためには、一定の要件を満たす必要があります。
3-1.プラチナえるぼし認定の基準
プラチナえるぼし認定を受けるためには、えるぼし認定基準のうち「継続就業」と「管理職比率」の項目において、高い水準が求められます。
認定基準②継続就業
①「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること。 ②「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ9割以上であること。 |
認定基準④管理職比率
①直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値の1.5倍以上であること。 ただし、1.5倍後の数字が、 ②15%以下の場合:管理職に占める女性労働者の割合が15%以上であること。 ③ 40%以上の場合:以下の2つのいずれか大きい値以上であること。
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その他の基準として「男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任すること」「女性活躍推進法に基づく情報公表項目のうち、8項目以上を毎年、女性の活躍推進企業データベースに公表していること」などの要件があります。
えるぼし認定を受けるメリット
えるぼし認定を受けることで企業は消費者や求職者、取引先などに向けて「クリーンなイメージ」を与えることができる、公共調達や融資面で有利になるなど、様々なメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
4-1.企業イメージの向上
えるぼし認定を受けることで使用できる「えるぼしマーク」を自社商品やHP、採用ページにつけることで、対外的な企業イメージを向上することができます。
「えるぼしマークの企業=女性に優しい企業・女性が輝ける企業」というイメージを与えることができ、企業の認知度アップにも繋がります。
4-2.優秀な人材の獲得
女性が働きやすい職場環境の整備は、求職者にとって非常に魅力的であり、採用活動にプラスの影響を与えるでしょう。
求人応募数の増加や優秀な人材を確保、離職率の少ない労働環境の構築に繋がることが期待できます。
4-3.低金利融資を利用できる
えるぼし認定を受けた企業は、融資面での優遇措置があります。
日本政策金融公庫の「地域活性化・雇用促進資金」では、認定企業の融資に対して基準利率から0.65%を差し引く制度を実施しており、低金利で融資を受けることが可能です。
4-4.公共調達で優遇される
国が企業へ総合評価落札方式で発注する「公共調達」では、えるぼし認定企業へ加点評価するように定められています。
国からの仕事の受注がある企業では、えるぼし認定を受けることで受注の増加に繋がるでしょう。
えるぼしとくるみんの違い
えるぼし認定の類似した制度に「くるみん認定」があります。
どちらも「職場環境の改善」に焦点を当てた制度ですが「えるぼし認定は女性の活躍」が目的であるのに対し、「くるみん認定は出産や育児の支援体制の拡充」が目的となっており、次のような違いがあります。
えるぼし認定 | くるみん認定 | |
目的 | 女性の活躍躍進 | 出産や育児の支援体制の拡充 |
一般事業主行動計画の策定・実施・申請 | 必要 | 必要 |
認定名称 | えるぼしマーク | くるみんマーク |
認定基準 | 5項目から判断 | 10項目から判断
※プラチナくるみんは12項目 |
取り組みの公表先 | 女性の活躍推進企業データベース | 両立支援のひろば |
管轄 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
えるぼし認定の申請方法
えるぼし認定は、行動計画を策定・実施し、労働局へ申請を行うことで認定を受けることができます。
具体的な申請方法は、次の8つのステップで行います。
6-1.①行動計画の策定
自社の女性の活躍に関する状況を把握し、課題や改善策を策定しましょう。
策定した改善策を「一般事業主行動計画」にまとめます。
行動計画は2年間から5年間に区切って、定期的に進捗状況を把握できるようにします。
策定の段階では、自社分析が重要なポイントになりますので、人事データを正確に分析しましょう。
6-2.②行動計画表の公表(従業員への周知)
作成した行動計画表を従業員が目にする場所へ提示しましょう。
全従業員に周知する必要がありますので、社内メール活用なども有効な方法です。
6-3.③行動計画策定届を提出する
「一般事業主⾏動計画策定・変更届(様式第1号)」を作成し、オンライン・郵送・持参などの方法により労働局へ提出します。
この段階では、策定した行動計画表を提出する必要はありません。
「一般事業主⾏動計画策定・変更届(様式第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000912371.pdf
6-4.④計画の実施
策定した行動計画の実施を行います。計画➡️実施➡️評価➡️改善の一連のサイクルを繰り返し行い、改善状況を測定しましょう。
6-5.⑤女性の活躍に関する情報を公表
自社の取り組み状況を「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページ等で公表します。
更新した日時を記したうえで、年1回以上の頻度で公表が必要です。
6-6.⑥認定申請・審査
労働局へ「えるぼし認定の申請」を行います。申請には「認定申請書」「一般事業主行動計画の写し」「実績が明らかになる書類」の提出が必要になります。
提出後は、労働局で認定基準を満たしているかどうかの審査が行われます。
6-7.⑦認定を受ける
労働局の審査で認定基準を満たしていると判断されれば、えるぼし認定を得ることができます。
6-7.⑧認定後も女性活躍推進の取り組みを継続・情報の公開
えるぼし認定は、認定を得た後も継続して女性活躍推進の取り組みを行わなければなりません。
また、毎年少なくとも1回「女性の活躍推進企業データベース」に実績を公表しなければなりません。
公表を怠ると認定が取り消される場合もありますので、注意が必要です。
えるぼし認定取得による税制優遇について
えるぼし認定を受けた企業は税制面においても優遇されます。
認定企業は賃上げ促進税制の中の税額控除上乗せ要件である「子育て支援・女性活躍支援企業への上乗せ要件」に該当することになり、税額控除に5%上乗せされます。
(令和6年4月1日~令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度)
出典:経済産業省HP「賃上げに取り組む経営者の皆様へ」
まとめ
「女性の活躍」は、これからの企業にとって取り組むべき重要な課題です。
女性の活躍を目的とする「えるぼし認定」や出産・子育てを支援する「くるみん認定」の取得ニーズは非常に高まっており、これから取得を行う企業が増加すると見込まれます。
Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所では、えるぼし認定取得後の税制優遇措置について対応しています。
税制優遇措置についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。