会社設立

公開日:2024/5/8

起業の虎の巻:会社設立 vs 個人事業主 どちらが成功への近道?

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

あなたにとってのベストは?!会社設立して法人で起業するのか、個人事業主で起業するのか?

事業を始める際、会社設立して法人として起業するか、個人事業主として起業するか、迷うことが多いと思います。

どちらにも一長一短があります。

本記事では、どちらで起業するか迷っている人のために、両者のメリット・デメリットを徹底解説します。

会社設立での起業か?個人事業主で起業か?5つの検討ポイント

起業にあたり、会社設立すべきか、個人事業主として始めるべきかは個々の現状と起業後の計画によって選択することが望ましいです。

以下の5つのポイントを検討し、どちらで起業するのが得策か考えてみましょう。

社会的信用が必要になるか?取引相手を想定

事業内容が法人を主な顧客にするもの(BtoB)であれば、社会的信用が必要です。

法人と取引を行う際には、その会社と取引をしても問題ないかという審査が行われることが多いのですが、法人であることで一定の信用を得ることが可能です。

一方、個人を主な顧客にするもの(BtoC)であれば、個人事業主として始め、事業規模が拡大してくれば法人成りを検討してもよいでしょう。

許認可など、法人でないといけないかどうか?

宅建業や建設業など許認可が必要な事業を営む場合は、許認可自体が法人でないと取得できないものもあるため、そういった事業を行う場合は法人としてスタートしないといけないです。

また、個人事業主として許認可を取得して起業できる業種であったとしても、将来法人成りする場合は、再度許認可手続きが必要なので、最初から法人として始めたほうが手間も省けることも多いです。

ご自身が行う予定の事業の許認可の有無や、その許認可が法人であることの可否を調べてみて下さい。

従業員を雇用するか?

従業員を雇用する予定があるなら、法人を設立したほうが良い人材が集まりやすい場合があります。

法人であること自体が求職者の安心を得ることがあるうえに、社会保険や就業規則など快適に働くための制度・環境も整備しやすいからです。

一方、自分だけで事業を営む予定であれば、個人事業主として始めても問題ないと思われます。

事業拡大をしていく予定かどうか?

事業を大きく拡大をしていく予定であれば、法人であるほうが良い場面が多いです。

事業を拡大する場合、手持ちのお金だけではどうしても拡大スピードが遅くなることが多いので、銀行などの金融機関からの融資や投資家からの出資を検討するこがあります。

これら銀行融資や出資を募る際には、経営者個人と法的に財布が切り離されている法人であるほうが有利であることが多く、事業の将来性の説明時の事業計画等が立てやすいというメリットがあります。

一方、事業拡大の予定もなく、高額の資金が必要な事業ではない場合は、個人事業主として始めても問題ありません。

税金面でどちらが有利か?

初年度からある程度の売上が見込め、利益も大きくなりそうなら法人として事業を営むほうが税金面では有利になことが多いです。

一方、初年度の売上や所得があまり大きくならない予定であれば、法人にこだわる必要はなく、ある程度の利益水準となった際に法人成りを検討しても良いと思われます。

法人設立と個人事業主のメリット・デメリットまとめ

次に、いくつかの事項について、法人設立と個人事業主のメリット・デメリットを両者の比較でまとめました。

有利なほうを「〇」、不利なほうを「×」としています。

項目  個人事業主  法人
設立費用  〇(基本的に0円) ×(株式会社で約20万円~30万円)
税理士報酬  〇(年1対応などで安いこと多い) ×(年間数十万円~が一般的)
経営者の給与  ×(経費として算入不可) 〇(経費として算入可能)
生命保険の経費化  ×(経費として算入不可) 〇(条件を満たせば経費として算入可能)
赤字の繰越  ×(最長3年) 〇(最長9年)
赤字の場合の課税  〇(0円) ×(最低7万円~)
社会保険のコスト  〇(業種により従業員5名未満は強制適用ではない) ×(強制適用)
交際費 〇(制限なし) ×(一部制限あり)

会社設立のメリット

会社設立のメリットに絞って詳細を解説していきます。

代表的なメリットとして以下の7点について解説します。

対外的な信用力がある

法人の対外的な信用力は、個人事業主の場合より圧倒的に大きくなります。

商号・住所・目的・代表者の氏名・資本金・役員等が登記され、一般に公開されるとともに、個人との財布が別となり外部からの見える化がしやすいと言われています。

大手企業の中には、個人事業主であることだけで取引をしないと定めていることもあるため、そういう会社と取引する予定がある場合は会社設立がおすすめです。

資金調達がしやすい

個人事業主に比べ、法人は資金調達がしやすいのも特徴の1つです。

金融機関が法人のほうが社会的信用力があることを認めていて、融資の審査上、有利に働きます。

また、株式会社であれば出資を募れますが、個人事業主には出資という概念がありません。

一定の所得を超えると法人のほうが税額が低い

法人には法人税が課され、個人には所得税が課されますが、これらの税金は計算方法が異なるため、同じ利益でも税金の金額は異なることとなります。

法人税は一定の税率となっている一方、所得税は利益額が増えると税率が増える構造となっているため、

事業から得られる儲け=所得(利益)が一定額を超えると、個人事業のほうが税金が高くなっていき、法人有利となります。

個人事業主より経費の幅が広い

個人事業主に比べ、法人は経費にできる費用の幅が広いのも大きな特徴です。

例えば、個人事業主の場合、同居する家族に給与を払っていたとしても、経費にするためには高いハードルがあります。

事前に届出書を出さないといけないうえに、経費算入できる金額にも上限があるのが実情です。

一方、法人の場合は業務に対して妥当なら経費計上できます。

他にも、社宅を使った節税等が法人では可能であったり、法人と個人事業では経費として算入できる費用の扱いには大きな差があり、法人有利となることが多いです。

決算日を自由設定できる

法人は会計期間(ただし、1年を超えることは不可)および決算日を自由に設定できます。

申告・納税を事業年度の終了から2ヵ月以内に行えば問題ないので繁忙期をさけて決算日を自身で設定できますし、将来的に変更することも可能です。

個人事業主は、一律決算日は12月31日と決められており選択できません。

優秀な人が集まりやすい

法人であれば、社会保険や就業規則など快適に働く環境が整備されていることが多いことから、優秀な人は個人事業より法人を選ぶことが多いです。

「安心して仕事を続けられる」というイメージがあり、個人事業主に比べると優秀な人が求人に応募してくれることが多いです。

事業承継がしやすい

個人事業主に比べ、法人であれば事業承継も簡単にできます。

個人事業主の場合、先代が亡くなった場合には口座凍結がされますので、手続きが適切に終わるまで事業継続が出来ないこともあります。

この点、法人であれば代表取締役の登記変更で事業の継続が可能です。

また、株式を承継するにも、事業承継税制などの事業を承継する法的整備が法人のほうはされていますので事業承継の観点からも法人が有利です。

会社設立のデメリット

会社=法人を設立することにはメリットがある一方、デメリットもありますので、デメリットについても解説します。

会社設立と維持にコストがかかる

会社を設立し、維持していくためには相応のコストがかかります。

会社設立時に20~30万円の設立費用がかかります。

また、会社設立後の維持管理で下記のような費用がかかるとともに、事務負担も相応にかかってきます。

設立後の維持費例
社会保険料
税理士などの専門家報酬
決算公告費用
役員の就任・重任登記費用
株主総会開催費用

会計処理が個人事業主より複雑

個人事業主の場合に比べ、法人の会計処理はルールが厳密で、事務処理が複雑となってきます。

規模が大きくなるにつれさらに複雑化するので、適切な人員を配置したり、専門家と連携を取ったりなどの対応が必要不可欠になります。

社会保険に強制加入

すべての法人事業所は、社会保険に加入することを義務付けられています。

つまり、法人である以上は厚生年金保険・健康保険等の各種社会保険に加入し、保険料を払わなくてはいけません。

個人事業主のメリット

個人事業主にもメリットはあります。メリットを一言で言うと「スモールスタートができる」ことです。

以下において解説します。

個人ですぐに事業が開始できる

個人事業主として事業を開始するには、法人のような複雑な設立手続きは必要ありません。

開業届を出せばすぐにでも始められます。

一定の所得までは個人のほうが税額が低い

事業による儲け=所得(利益)が一定の額以下であれば、個人事業主として続けるほうが税額は低くなります。

所得(利益)が500万未満であれば個人事業のほうが税金や低くなることが多いので、その規模感であれば個人事業が有利です。

会計処理が法人より簡便

個人事業主の会計処理は法人に比べると簡易なルールとなっています。

昨今は特に、個人事業主向けの会計ソフトが手ごろな値段で使えるため、税理士に依頼しなくても会計処理を簡単に行えます。

特殊な取引が多く複雑な処理が必要だったり、法人成りを検討するほどの事業規模になったりなどの事情がなければ、自身のみで問題なく確定申告も済ませられるでしょう。

 

個人事業主のデメリット

個人事業主のデメリットは、法人のメリットの裏返しとなります。

具体的に解説します。

対外的な信用力が法人より低い

個人事業主は法人とは違い、登記を行わない以上、外部の第三者が情報を確認するすべがありません。

対外的な信用力はどうしても低くなります。

資金調達しにくい

金融機関から融資を受ける際も、個人事業は金融機関の信用力が低いことから苦労することが多いです。

個人事業には出資を受け入れるという概念もありません。

法人より経費の幅が狭い

個人事業主の場合、計上できる経費の幅が法人よりも狭いです。

例えば、事業を手伝ってくれる家族に給料を支払ったとしても、法人に比べて算入するための条件が厳しいうえに、金額も少なくなることが多いです。

人が集まりにくい

誰かに仕事を手伝ってもらいたいと思っても、人が集まりにくいのも個人事業主ならではの悩みでしょう。

求職者のイメージとして法人のほが安心感があるからです。

会社設立の流れとスケジュール

一般的な会社設立の流れとスケジュールを解説致します。

定款作成

まずは、定款を作成するところから始まります。

会社名、事業目的、本店所在地、資本金額、発起人は絶対的記載事項といって、必ず定款に記載する事項となっています。

それ以外に会計期間や取締役会を設置するのか否かなどの会社の機関設定など、定款は会社を運営していくうえでの取り決めともいえますので、どういう定款内容とするかを会社の将来像とも照らしながら決定し、定款を作成していきます。

1日~1週間が作成期間の目安です。

定款認証

続いて、作成した定款の認証手続きとなります。

公証役場での手続きとなりますので、本店の所在地を管轄する公証役場で手続きを行います。

発起人全員で認証手続きを行う必要がありますが、専門家に依頼するなどで代理人に認証をお願いする場合は、

発起人全員の委任状を作成することで発起人全員での手続きは不要となります。

定款の事前確認などで公証役場と日程調整が必要なので、3日~1週間が定款認証期間の目安となります。

資本金の振込

次に、資本金を振り込む手続きに入ります。

この時点ではまだ会社設立が完了していないため、法人の銀行口座は存在しません。

ですので、発起人のいずれかの個人銀行口座を利用するなどして、発起人各人が資本金を振り込むことが通常です。

誰がいくら入金したかがわかるように銀行口座に振込み、通帳のコピーとともに払込証明書を作成します。

資本金の振込は1日~1週間が目安となります。

登記申請→登記完了!会社設立の完了

これらが完了したら、いよいよ法人の登記申請です。

定款認証や登記申請書などの必要書類をもって法務局へ持参します。

その際、登録免許税の支払も必要となります。

書類に問題がなければ、1週間から10日ほどで会社設立が完了となります。

なお、会社設立日は登記申請を窓口で行った日となりますので、希望日がある場合は留意ください。

まとめ

事業を始める際の、会社設立して法人として起業するか、個人事業主として起業するか、についてメリットデメリットなども見ながら解説しました。

それぞれの現状や将来事業展望、業種特性や費用対効果などを勘案し、どちらで起業するか考えてみてください。

どちらで進めるべきかわからなくなってしまった場合は、一度税理士に相談してみましょう。

Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所は創業時に強い会計事務所で、初回面談無料で何でも気軽に相談を受け付けています。

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