会社設立

更新日:2024.05.24

公開日:2024/5/18

創業株主間契約とは?どんな場合に必要になるのか?

この記事の監修
山田俊輔

StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)

あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。

気の合う仲間や友人などとビジネスアイデアを出し合い、会社を設立して起業することは珍しいことではありません。

共同経営には、お互いが足りない部分を補い、得意な分野を伸ばすことでビジネスにプラスに働くという大きなメリットがあります。

 

しかし、創業時からの共同経営には「意見の対立による経営からの離脱」、いわゆる喧嘩別れした際に大きなデメリットが生じることになり、会社経営の継続が難しくなってしまうこともあります。

 

そこで必要になるものが「創業株主間契約」です。

創業株主間契約というルールを決めておくことで、喧嘩別れした場合であっても、会社に残る人が株式を買い取り、経営を続けていくことができます。

 

ここでは「創業株主間契約の必要性、締結する時期」などについて詳しく解説します。

共同経営で会社設立を検討中の方は、ぜひ最後までお付き合いください。

 

創業株主間契約とは

創業株主間契約とは、その名のとおり「創業時に株主間で締結する契約」のことを言います。

創業株主間契約は、会社設立時に必ず必要になるものではなく、会社法や会社の定款で決められているルールを補完する目的で「株主同士が個別に結ぶ契約」であり、複数人が共同で会社を設立する際に必須の契約です。

 

1-1.創業株主間契約が必要な理由

創業株主間契約が必要である大きな理由は「経営を守ること」です。

気の知れた仲間と始めた会社であっても、やがて仲間の誰かが離れていってしまうかもしれません。

創業メンバーの1人が離れる場合、その人が株式を持ったままであっては、今後の会社の経営に悪影響を及ぼしかねません。

そのリスクに備えるために行う契約が「創業株主間契約」です。

 

例えば、友人であるAさんとBさんが100万円ずつ出資し会社を設立し、お互い50%の株式を保有していたとします。

事業が軌道に乗りはじめ、これからという時にAさんとBさんの意見が対立し、Bさんが退社することになった場合、創業株主間契約を行っていないと株式の50%は退職後のBさんが持ち続けることになってしまいます。

 

Aさんが会社経営を続けようにも、Aさんの株式持分50%では過半数を満たしていないため、株主総会の普通決議すら行えず、まともに会社経営を行うことができなくなってしまいます。この状態をデッドロックと言います。

 

デッドロックのリスクを防止するためには、事前に創業者の誰かが辞めたときの取り決めを「創業株主間契約」により行うことが必要不可欠です。

「親しき中にも礼儀あり」というように、仲の良い友人との起業であっても創業株主間契約は必ず締結するようにしましょう。

 

 どんな場合に株主間契約が必要になるのか

創業株主間契約は、友人や気の知れた仲間との会社設立する際に必要な契約です。その他にも、次のような状況の場合に必要になります。

 

2-1.会社設立後に株式を売却する場合

ベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、VC(ベンチャーキャピタル)に株式を売却し、株式投資によって資金調達を行うケースも少なくありません。

外部の株主が1人だけの場合であれば「投資契約」で事足りるのですが、複数の投資家から資金調達を行う場合には「株主間契約」を行い、株主同士のルールを明確にしておくことで、経営をスムーズに進めていくことができます。

 

株主間契約は、創業時だけではなく、新たな株主が資本参加する際にも必要になる場合があります。

 

2-2.解散の条件を定めたい場合

株主が複数いる場合、株主同士が対立してまともに経営ができない「デッドロック」状態になってしまうことがあります。

デッドロックの解決方法として、株主間契約に「株主である当事者間の話し合いで解決しない場合には、第三者が介入し、それでも解決しない場合は株式を譲渡する」と定めることが可能です。

 

また、より強い措置として、株主間契約に「会社の解散条件」を盛り込み、経営リスクを回避することができます。

 

2-3.株式の譲渡を制限したい場合

中小企業の場合は、会社が望まない人物が株式を保有しないように、会社の定款に「株式の譲渡制限」がついているケースがほとんどです。

しかし、譲渡制限の会社であっても、取締役会または株主総会で承認を得ることで株式を譲渡することができます。

 

多数派株主は、取締役会または株主総会で株式の譲渡の承認を得やすい状況になるため、多数派株主が取締役会または株主総会の承認を受け、他の人に株式を譲渡することが考えられます。

多数派株主が撤退することは、ケースによっては少数株主にとって不利益に働くことがあるため、定款とは別に株主間契約により「株式の譲渡制限」を定めることが可能です。

 

創業株主間契約で定めるべき項目

創業株主間契約では、定めるべき項目がいくつかあります。

11つ見ていきましょう。

3-1.株式の譲渡

「株式の譲渡に関する項目」は、創業株主間契約の中心になる項目です。

「退任時の株式譲渡義務」を定めることで、経営リスクの回避を図ることができます。

<項目の記載例>

第○条(株式の譲渡)

株主が、辞任,解任その他地位喪失の理由により会社の取締役の地位を失った場合、〇〇は退任する取締役が保有する会社の全ての株式を自身又はその指定する者に対して譲渡することを請求することができる。退任する取締役はこれに応じなければならない。

 

退任時の株式譲渡義務のポイントは「退任の範囲」「譲渡の相手」「譲渡株式割合」です。

 

3-11.退任の定義

株式譲渡の効果が発生する「退任の範囲」を明確にしなければなりません。

「取締役を離れ、従業員として勤務する場合でも退任となるのか」など、どのような状況が退任にあたるのかを検討する必要があります。

 

3-12.譲渡の相手

株式譲渡の相手を誰にするのかを決めなければなりません。

「共同経営である取締役が取得するのか」「それとも会社が自己株式として取得するのか」など、譲渡の相手先について検討が必要です。

 

3-13.譲渡株式割合

一般的には、退任する株主の全ての株式を対象にします。

スタートアップなど、ケースによっては在籍割合により譲渡株式割合を変える「リバースべスティング条項」を設けることもあります。

3-2.株式譲渡価格

退任時に株式を譲渡する際の「価格」を設定する項目が必要になります。

創業時の株式取得価額(出資額)や退任時の株式の時価などで価格を定めることができます。

無償での譲渡も可能ですが、贈与として取り扱われるため、税務上のリスクを検討する必要があるでしょう。

<項目の記載例>

第○条(株式の譲渡価額)

株主が譲渡する株式1株あたりの譲渡価額は、取得価額と同額とする。ただし、株式取得後に株式分割、株式併合、株式の無償割当てなどが行われていた場合には、分割、併合又は割当ての比率に基づいて調整された金額を譲渡価額とする。

3-3.譲渡・担保設定の禁止

多くの会社の定款には「譲渡制限」が定められているため、株式の譲渡には取締役会または株主総会の承認が必要です。

譲渡制限が定められている会社であっても、承認を得ることで株式の譲渡は可能であるため、創業株主間契約において株式の譲渡を禁止することで第三者への株式の移転を防止することができます。

また、担保設定についても禁止することができます。

<項目の記載例>

第〇条(株式譲渡等の禁止)

株主は、事前の書面による全員の承諾なしに、その保有する会社株式の全部又は一部につき、譲渡、貸借、担保設定その他の処分を行ってはならない。

3-4.相続の取り扱いに関する事項

創業時の株主が亡くなると、相続人が株式を相続することになります。

事業に関与していない相続人が株主になると、重要な経営の意思決定に影響を与えてしまう可能性があるため、相続人に対して譲渡請求ができる事項を創業株主間契約に定めておくといいでしょう。

<項目の記載例>

第〇条(相続)

株主が死亡した場合には、〇〇は本株主の相続人に対して、その保有する会社の株式の全部または一部の譲渡請求を行うことができる。

譲渡請求がなされたときは、本株主の相続人の意思表示を要することなく、会社の株式の権利の移転の効力が生じるものとする。

3―5.違反時の罰則

株主間契約に違反した場合の罰則規定を定めることができます。

罰則は「損害賠償」によってのみ科すことができ、違約金の金額も定めることもできます。

<項目の記載例>

第〇条(損害賠償)

本契約の当事者が本契約に違反した場合、他の当事者に対して損害を賠償する責任を負うものとする。

この場合、当該他の当事者が発行会社の株式を保有しているか否かにかかわらず、当該違反がなければ当該他の当事者が得られたであろう買収の対価、その他の経済的利益を本条に定める損害賠償責任における損害とみなすものとする。

 

創業株主間契約を締結する時期

創業株主間契約は、なるべく早いタイミングで締結することが重要です。

できれば会社設立手続きと同時に契約の話し合いも進め、資本金の払い込み前に契約を締結できるように準備しましょう。

 

もし、会社設立時に契約を締結していない場合は、共同経営者との仲が良好なうちに話し合いを進めましょう。

共同経営者同士の仲は、どのようなタイミングで変化していくのか誰にも予測することができません。

トラブルを避けるためにも、できるだけ早いタイミングで行いましょう。

 

創業株主間契約を締結する場合の注意点

創業株主間契約を締結する場合、次の3つのポイントに注意しましょう。

5―1.契約内容を明確にする

創業株主間契約は、当事者間の自由裁量に基づき締結される契約です。

そのため、契約の内容を明確にし、お互いが全て理解して納得したうえで契約を締結する必要があります。

 

契約内容を決める際には、それぞれの意見を尊重し、一方が不利益を受けることがないように話し合いを行いましょう。

創業株主間契約締結は、一朝一夕でできる簡単なものではありません。

専門家に相談することも視野に入れて進めていきましょう。

5-2.将来の経営状況を想定して契約内容を検討する

創業株主間契約は、「将来のリスクを回避するための契約」です。

現在の創業者同士の関係性だけで契約内容を決めるのではなく、将来の経営状況を想定し、必要になると思われる項目を考えましょう。

 

創業株主間契約の項目は、ここで紹介した以外にも多くの項目があります。

会社の将来を予測しながら、トラブルを防止できる創業株主間契約を作成しましょう。

5―3.専門家に相談する

株主間契約は、株主同士の利益だけではなく、会社の経営にも大きく影響を与える大事な契約です。

契約の決め方によっては、一方の株主が有利になってしまい、株主間契約の話し合いがトラブルの種になってしまうこともあります。

 

株主間契約を検討する場合は、第三者である専門家に意見を聞きながら進めていくことで、お互いが感情的にならずに公平に契約を締結できる可能性が高まります。

 

「創業前、または創業したばかりで、どういった契約が必要になるのかわからない」という方は、できるだけ早く専門家に相談してみましょう。

 

まとめ

友人や仲間など、複数人で会社を設立した場合、事業の拡大とともに意見が対立し、創業メンバーが会社を離れることもあります。

創業メンバーが離脱する際のトラブルは、株式が関わってくるため、会社経営にも影響を与えてしまいます。

 

会社を設立する際に「創業株主間契約」を締結することで、将来に発生するトラブルを回避することができますので、共同経営で会社を設立する際は検討してみましょう。

 

Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所は、創業株主間契約を含め、会社設立に関するサポートを行っています。

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