公開日:2025/11/11
飲食店経営者が今すぐ見直すべき!知って得する節税対策8選【税理士が解説】
税理士法人オンデック
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、税理士法人オンデック公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
飲食店の経営では、日々の業務に追われて税金対策は後回しになっている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、飲食店経営において適切な税金対策を行うことは、余分な税金を支払うことなく、事業の成長に欠かせない資金を手元に残すための重要な経営戦略です。
ここでは、税理士目線での「飲食店経営者が知っておくべき税金の基礎知識から実践的な節税対策、そして過度な節税がもたらすリスク」までを徹底解説します。
- 飲食店ならではの利益構造と節税が難しいと言われる理由
- 飲食店の経営者が知っておくべき税金の種類
- 【実践編】飲食店経営者が今すぐできる具体的な節税対策8選
- 3-1.①役員報酬・家族への給与設定による所得分散
- 3-2.②従業員への「福利厚生」の活用(まかない、慰安旅行など)
- 3-3.③資産計上しなくてよい備品・消耗品費(少額減価償却資産の特例)
- 3-4.④接待交際費と会議費の線引きと領収書の管理
- 3-5.⑤損害保険・共済への加入
- 3-6.⑥設備投資を検討する際の税制優遇措置
- 3-7.⑦退職金制度の活用(小規模企業共済、iDeCoなど)
- 3-8.⑧車両費や自宅家賃の「家事按分」を適正化する
- 飲食店経営者が節税で「やってはいけない」こと
- 飲食店が節税する際の注意点
- まとめ
飲食店ならではの利益構造と節税が難しいと言われる理由
飲食店の平均営業利益率は約10%程度と比較的低い傾向にあり、売上に対して食材費や人件費の支出が占める割合が他の業種よりも高くなります。
さらに、立地の良い店舗は家賃が高く、厨房機器の使用には多額の水道光熱費が発生します。
そのため、飲食店経営は手元に資金が残りにくいと言われており、資金を多く手元に残すためには、利益をしっかりと出したうえで発生した費用を漏れなく、正確に経費として計上し、適切な節税対策を行うことが非常に重要です。
飲食店の経営者が知っておくべき税金の種類
飲食店経営で節税対策を行うためには、どんな税金が発生するのかを把握することが始めの一歩です。
個人経営(個人事業主)なのか、法人経営なのかによって課税される税金が異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
2-1.個人経営の場合
個人経営の飲食店の場合、主に次の4つの税金が課税されます。
| 税金の種類 | 内容 | 特徴 |
| 所得税 | 個人の1年間の所得に課税される国税 | 超過累進税率になっており、所得が増えるほど税率(5%〜45%)が上がる。 |
| 個人住民税 | 地域の行政サービスを維持するための地方税 | 所得に応じて課税される「所得割」と定額で課税される「均等割」の2種類がある。所得割は道府県民税4%、市町村民税6%の合計10% |
| 個人事業税 | 個人が営む事業に対して、事業所の所在する都道府県が課す地方税 | 事業所得が290万円を超える場合に課税される。飲食業の税率は5% |
| 消費税 | 商品やサービスの消費に課される国税 | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じる。 |
2-2.法人経営の場合
法人を設立して飲食店を経営する場合には、次の税金が課税されます。
| 税金の種類 | 内容 | 特徴 |
| 法人税 | 法人が事業で得た所得に課される国税 | 段階的に税率が変動するが、所得税と比べる変動が比較的少ない。 |
| 法人住民税 | 地域の行政サービス維持のために法人に課される地方税 | 法人税の金額に応じて課税される「法人税割」と、資本金や従業員数に応じて定額で課税される「均等割」がある。 |
| 法人事業税 | 法人が行う事業に課される地方税 | 付加価値割、資本割、所得割、収入割の4種類があり、法人の種類や規模に応じて課税される。 |
| 消費税 | 商品やサービスの消費に課される国税 | 法人も個人も計算方法は共通 |
※法人の役員に役員報酬を支給する場合は、役員に所得税と住民税が課税されます。
【実践編】飲食店経営者が今すぐできる具体的な節税対策8選
ここからは、飲食店経営者が実践すべき具体的な節税対策を紹介します。
対策を知り、見直しを行うことで税負担を大きく軽減できる可能性がありますので、チェックしてみましょう。
3-1.①役員報酬・家族への給与設定による所得分散
日本の所得税は所得が高くなるほど税率が上がる累進課税制度になっており、所得を1人に集中させると税負担が重くなります。
この税率の仕組みを逆手にとり、所得を複数に分散させることで税率を平準化させ、節税することが可能です。
所得の分散方法は個人事業主と法人で異なります。
3-1-1.個人事業主の場合
個人事業主の場合、青色申告を適用し「青色事業専従者給与の特例」を活用することで、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を全額経費計上することができます。
ただし、経費に計上するためには事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。
また、専従者給与が不当に高額な場合は認められない可能性があります。
3-1-2.法人の場合
経営者本人や家族を会社の役員にすることで役員報酬を支給することができます。
給与として所得を分散することで、それぞれの所得に「給与所得控除」や「基礎控除」が適用されるため、全体の税負担を大きく軽減できる効果が期待できます。
ただし、役員報酬が不当に高額な場合や経営に全く関与していない「名義貸し」の役員への報酬は認められません。
3-2.②従業員への「福利厚生」の活用(まかない、慰安旅行など)
従業員へのまかないや慰安旅行など、福利厚生に支出した費用は経費になるため、適切に活用することで節税に繋がります。
3-2-1.まかない(食事提供)
従業員への食事(まかない)提供費用は福利厚生費として計上できる可能性がありますが、税務上の処理は複雑です。
従業員から一部負担金を徴収するかどうかにより、給与とみなされるかどうかの判断が分かれ、給与とみなされる場合には源泉徴収が必要になります。
具体的には、次の2つの要件を満たしている場合は給与として課税されません。
(食事の価額)–(役員や使用人が負担する金額) |
3-2-2.慰安旅行やその他福利厚生
従業員の慰安旅行費用や従業員の将来の退職金のための中小企業退職金共済(中退共)の掛金などは経費になります。
福利厚生を充実させることは、人材確保やモチベーション向上にも繋がり、結果的に事業の成長を支える投資としても考えられますので、積極的に活用しましょう。
3-3.③資産計上しなくてよい備品・消耗品費(少額減価償却資産の特例)
厨房機器や内装工事などの設備投資を行うと、耐用年数に応じて費用化する「減価償却」が必要です。
しかし、10万円未満の備品の購入などは、消耗品費として一括で経費計上が可能です。
また、少額減価償却資産の特例を利用することで30万円未満の資産についても年間合計300万円までを一括で経費(損金)計上することが可能です。
開業時などの内装工事や設備投資を「工事一式」としてまとめて計上するのではなく、各資産の項目に細分化することで固定資産ではなく消耗品費などの経費にできる場合もありますので確認してみましょう。
3-4.④接待交際費と会議費の線引きと領収書の管理
事業に関する接待や飲食費は経費にすることができます。
ただし、業務遂行のために直接必要と判断される支出に限られますので、接待相手や目的などを記録しておきましょう。
法人の場合は、支出した交際は原則的に経費になりません。
しかし、中小企業の特例により年間800万円(または接待飲食費の50%)までは経費(損金)にすることができます。
中小企業の特例とは別に1人あたり1万円以下の飲食費は「会議費」として経費(損金)にすることが可能です。
接待交際費と会議費を明確に区別し、領収書に接待相手や目的などを記録するなど、管理を徹底するようにしましょう。
3-5.⑤損害保険・共済への加入
事業に必要な損害保険の保険料や共済掛金は、経費として計上できるため、万が一の備えと節税の両面で効果的です。
飲食店経営で加入できる共済には、食中毒や異物混入などの食品事故を起こした場合に備える「食品営業賠償共済」や倒産を防止するための「経営セーフティ共済」などがあります。
特に、経営セーフティ共済は掛金が全額経費(損金)になり、40か月以上納付すれば解約時に全額返金されます。掛金は前納(前払い)もできるため、決算や年末の利益対策としても非常に有効です。
3-6.⑥設備投資を検討する際の税制優遇措置
前述の「少額減価償却資産の特例」のほか、一定の要件を満たすことで利用できる「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」などの税制優遇があるため、設備投資する場合は利用できるかどうか確認しましょう。
3-7.⑦退職金制度の活用(小規模企業共済、iDeCoなど)
経営者や従業員の将来の生活資金や退職金に備える制度を活用することで、所得控除や経費の計上を行うことができ節税に繋がります。
退職金に活用できるものには、個人事業主や中小企業の経営者・役員が対象になる「小規模企業共済」、支払った掛金が全額個人の所得控除の対象になる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」、従業員の退職金制度である「中小企業退職金共済(中退共)」などがあります。
3-8.⑧車両費や自宅家賃の「家事按分」を適正化する
自宅を事務所として使用している場合や自家用車を事業用にも使用している場合など、事業と私生活の両方で利用している資産の費用は、事業で使用している割合に応じて経費にすることができます。
これを「家事按分」と言い、適正に計上することで節税に繋がります。
家事按分の対象になる主な費用には、自宅家賃、水道光熱費、通信費、車両費(減価償却費、自動車税、ガソリン代など)などがあります。
家事按分になる費用がないか確認してみましょう。
※自宅の一部を事務所として利用する場合、床面積の50%を超える割合を事業用として設定すると、住宅ローン控除が適用されなくなる可能性があるため注意が必要です。
飲食店経営者が節税で「やってはいけない」こと
節税対策は、法令に基づいて税負担の軽減を行う行為ですが、内容を理解せずに一線を超えてしまうと脱税行為に該当してしまう可能性があります。
行き過ぎた節税は脱税に該当するおそれがありますので注意しましょう。
4-1.節税と脱税の決定的な違いとリスク
節税は法律の範囲内で税制優遇措置や経費計上を適切に行い、税負担を軽減する行為であるのに対し、脱税は税法の範囲を超えて意図的に税金を免れようとする行為です。
具体的には、売上を除外したり、架空の経費を計上したりする行為が該当します。
脱税行為が発覚すると、追徴課税が発生するだけでなく、延滞税や加算税といった重いペナルティが課せられることになります。
行き過ぎた節税行為が脱税に該当しないように、節税は税理士の意見を聞きながら進めるようにしましょう。
飲食店が節税する際の注意点
節税は事業経営において重要な要素ですが、過度な節税はかえって事業の健全性を損ない、税務調査のリスクなどを生じさせるおそれがあります。
飲食店経営で節税を検討する際は「現在の課税状況の把握」と「過度な節税によるデメリット」をよく理解することから始めましょう。
5-1.現在の課税状況の把握
有効かつ適切な節税対策を見つけて実行するためには、まず事業に「どのような税金が発生しているのかをしっかり把握すること」が必要不可欠です。
自身の飲食業にどのような税金がかかっているのかを確認することで節税できる部分とそうでない部分を明確にし、節税の第一歩に繋げることができます。
5-2.過度な節税によるデメリットを理解する
節税は大切ですが、節税効果はあるもののそれ以上にお金を支払うことになる消費型の節税を過剰に行ってしまうと手元の資金が少なくなってしまい、固定費の支払いが難しくなってしまったり、金融機関の融資審査で返済能力がないと判断されてしまったりするおそれがあります。
節税対策は、短期的な視点に囚われず、事業の成長や安定性を確保するための中長期的な事業計画と整合性が取れていることが重要です。
過度な節税によるデメリットを理解して節税対策を行うようにしましょう。
まとめ
飲食店経営における節税対策は、事業の収益性を高めながら持続的な成長を実現するために必要不可欠です。
飲食業界は利益率が低い傾向にあるからこそ、税法に基づいた適切な節税対策を漏れなく行うことが重要です。
税理士法人オンデックでは、飲食店の税務、経営に関するご相談にも積極的に対応しております。
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