公開日:2025/12/11
税理士変更で税務調査の確率は上がる?国税の選定基準から見る「噂」の真実
税理士法人オンデック
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、税理士法人オンデック公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
経営者の中には「税理士を変更すると税務調査の対象になりやすい」といった噂を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
税務調査に関する噂は、実態がよく分からず、怖いイメージが先行してしまう傾向があり、事実と異なるケースも少なくありません。
噂話を信じてしまうと、現在契約されている税理士に不満や疑問があるにもかかわらず、税務調査を極端に恐れてしまい、契約の解消に踏み切れなくなってしまうことも考えらます。
結論から言えば、税理士を変更したという理由だけで税務調査の対象となることはありません。
なぜなら、単に顧問税理士が変更になったという事実だけで調査の対象となるということは考えにくいからです。
ここでは、顧問税理士を変更した場合と税務調査の関連性、そして税理士の変更を検討すべき適切なタイミングについて解説します。
「税理士変更=税務調査が来る」は本当か?
まずは「税理士変更=税務調査が来る」という噂は、本当かどうかを考えてみましょう。
顧問税理士を変更することで税務調査が入る確率がアップするという可能性はゼロではないものの、そこまで一気に税務調査の確率が上がるわけではありません。
税務調査の目的は、脱税や法令違反を取り締まり、適切で公平な課税の実現を目的とし、適正な経理を行うよう指導することにあります。
そのため、顧問税理士が変更になっただけで、調査の対象となるということは考えにくいと思われます。
1-1.国税庁の選定基準に「税理士変更」は含まれない
税務調査の対象になる企業の選定には「国税総合管理(KSK)システム」というものが使われています。
このシステムは、申告書をもとに複数年の勘定科目の動きを分析し、異常値が見つかった場合に税務調査の対象として選択すると言われています。
具体的には「同業他社に比べて所得率が低い企業」「勘定科目に大幅な変動がある企業」「赤字でも消費税の還付を受けている企業」などがあげられ、選定基準に税理士変更は含まれていません。
1-2.なぜ「税理士変更すると調査が来る」と言われるのか?
「税理士変更が税務調査の選定基準になっていないことは分かったけど、なぜこの噂が広まっているの?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。
これについては、次の4つの理由が考えられます。
1-2-1.①税務調査が入るタイミングと税理士変更が偶然一致した
顧問税理士を変更した後に税務調査が入った場合、たまたま時期が重なっただけという可能性が考えられます。
税務調査は、会社設立直後にはほとんど行われず、法人であれば3年〜10年に一度のペースで入ると言われています。
会社設立後数年が経過し、これまで一度も税務調査が来ていなかった企業が、事業規模の拡大に伴い税理士を変更したタイミングで調査対象となった場合「税理士を変えたから調査が来た」と勘違いしてしまうことも珍しくありません。
1-2-2.②新しい税理士による会計処理の大きな変更があった
税理士を変更したことで、新しい税理士が以前とは異なる会計処理や申告方法を導入したため、申告内容に大きな変化が生じた場合、税務調査のきっかけとなることがあります。
例えば、以前の税理士が行っていた会計処理が適切でなかったため、新しい税理士が正しい会計処理(または合法的な節税策)に変えた結果、経費が大幅に増えたり、勘定科目がガラッと変わったりすることがあります。
この申告内容の大きな変化を税務署が発見すると、前年の申告内容と比較して帳簿上の金額が大きく変動していることから、その理由を確認するために調査が入る可能性が高まります。
1-2-3.③それまで顧問税理士が不在だった場合
これまで顧問税理士が不在だった企業は、不適切な記帳や申告を疑われて税務調査の対象になりやすい傾向があります。
顧問税理士がいなかった期間の不備を新しい税理士が発見し、それを正すために申告内容に修正が生じれば、税務調査の対象になる可能性があります。
1-2-4.④会社自体が税務署に目を付けられていた
短期間に何度も税務調査が行われる企業は、税理士変更が理由ではなく、もともと税務署に目を付けられている可能性が高いと言えます。
申告した内容に誤りや疑いがある企業が顧問税理士を変更した場合、新しい税理士がそれまでの誤った会計処理を正すため修正を行い、結果として「会計処理の大きな変更」が発生し、引き続き税務調査の対象になりやすくなってしまう可能性があります。
頼りない税理士のまま税務調査を迎える3つのリスク
「税理士変更=税務調査」という根拠のない噂を信じ、現在の頼りない顧問税理士に不満を持ちながら契約を継続すると大きなリスクを抱えてしまうことになりかねません。
もし、現在の顧問税理士に「顧問契約を結んでいるのに何もしてくれない」「アドバイスすらくれない」「節税に消極的でまるで税務署の味方である」といった不満を感じているのなら、早期に変更を検討しましょう。
頼りない税理士や税法に対する知識が不足している税理士、あるいは税務署との交渉力が弱い税理士が税務調査に立ち会うと、以下のような事態に陥ってしまう可能性があります。
2-1.調査官の言いなりになり、余計な追徴課税を払わされる
税務調査の際、税理士の最も重要な役割の1つは、経営者の味方として調査官と対等に交渉し、会社側の立場を主張することです。
しかし、頼りない税理士が税務調査の立ち会いを行った場合、調査官の不当な指摘について適切な反証ができず、調査官の主張をそのまま受け入れてしまうおそれがあります。
調査官の不当な指摘を受け入れてしまうと、本来支払う必要のない追徴課税(加算税や延滞税など)を支払う羽目になるだけでなく、一度指摘を認めてしまうと今後もその指摘に沿った処理を行う必要があるため、将来的な税負担にまで影響を及ぼすことになります。
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【調査官の言いなりになってしまった事例】 顧問税理士が税務調査対応に不慣れであり、調査で「社長の出張旅費の一部は私的な支出が含まれている可能性がある」と指摘されました。 不慣れな税理士は、適切な証拠書類や過去の判例を示すことができず、また調査官の圧に負けてしまい、その指摘を全面的に認めてしまい、その結果、本来業務に関連する経費であったはずの部分まで否認され、多額の追徴課税を支払うことになりました。 もし税務調査に強い税理士がいれば、明確な出張規定や過去の類似事例の証拠を提示し、会社側の正当性を主張できたはずです。 |
2-2.事前対策ができず、指摘事項が増える
税務調査は、日々の適切な経理処理と申告内容の正確性がリスクを減らすための鍵となります。
頼りない税理士やあまり相談にのってくれない税理士が顧問税理士である場合、経費として認められるかどうかの判断の誤りや日々の記帳や会計処理について指導・チェックの不備が生じ、その結果、税務調査で指摘される事項が増加し、追徴課税が課されてしまいます。
2-3.精神的なストレスが増大する
税務調査に対して「怖い」「いつ来るか分からず不安」と思っている経営者も少なくありません。
この不安感に加え、頼りない税理士と付き合い続けることは経営者にとって大きな精神的ストレスになるでしょう。
税務調査直前や税務調査中でも税理士変更は可能?
税務調査の通知が来た後や実際に調査が進行中でも「この税理士では心許ない」と感じた場合には、税理士を変更することは可能です。
税務調査直前や税務調査中に税理士を変更する場合には、次のメリットとデメリットが考えらます。
3-1.メリット:交渉力の大幅な向上
税務調査に強い税理士に変更した場合、高い交渉力と適切な資料提出や調整を行い、結果として調査の負担を軽減することができるでしょう。
3-2.メリット:リスクの回避
現在の税理士が税務調査対応に不慣れな場合、余計な追徴課税や調査の長期化を招くリスクがあります。
しかし、税務調査に強い税理士に任せることで、不当な指摘に対して適切に反論し、調査結果が会社にとって不利になるのを防ぐことができます。
3-3.デメリット:準備が間に合わない可能性がある
税務調査直前や調査中に税理士を変更する場合、引き継ぎに時間がかかり調査の準備が間に合わなくなってしまったり、税務署に対して「何か隠しているのでは?」という疑念を与えてしまったりするリスクが考えられます。
大阪で税務調査に強い税理士を選ぶポイント
大阪で事業を行う中小企業経営者の皆様が、税務調査のリスクを減らし、安心して事業に集中するために税務調査に強い「真のパートナー」となる税理士を選ぶポイントを紹介します。
4-1.税法・判例の知識がアップデートされているか
法人税法を含む税法は毎年改正されます。
また、裁判所での判例によって解釈が変わることもあるため、税務調査に強い税理士には税法・判例の知識を常にアップデートすることが求められます。
特に、複雑な取引やIT関連企業などの新しい事業形態に関する申告を行う場合、税法の解釈について深く理解していることが必要不可欠です。
税理士の知識が古い場合、合法的な節税策を見逃したり、誤った解釈で申告を行い、税務調査で指摘を受けやすくなったりするリスクが考えられます。
4-2.経営者の味方として「交渉」できるか
税務調査において、立ち会う税理士の「交渉力」と「コミュニケーション能力」は結果を大きく左右します。
経営者の味方として調査官と対等にコミュニケーションを取り、会社の立場を守れるかどうかが税理士の腕の見せどころです。
事前に調査に必要な資料を整理し、適切な形で提出できるようサポートを行うことができ、調査時には調査官からの質問や指摘に対し、感情論ではなく、税法上の根拠に基づいた的確な対応を行うことができる税理士かどうかを見極めましょう。
4-3.日々の適切な経理処理において「税務調査の可能性を減らす努力」をしているか
税務調査に強い税理士は、税務調査への対応力があるだけでなく、そもそも調査を招かないための努力を日々の顧問業務で行っています。
「税務署が目をつけやすいポイント」を熟知し、高品質な申告書を目指す税理士かどうかは税理士を選ぶうえで最も重要なことです。
税理士変更の手順は意外と簡単
税理士変更を検討する場合、多くの方が「今の税理士にどう断ればいいのか」「手続きが煩雑なのではないか」という心理的なハードルを感じるのではないでしょうか。
しかし、適切な手順で行えば、税理士変更は意外と簡単に円滑に進めることができます。
5-1.現在の税理士への断り方
顧問税理士との契約解除は、トラブルを避けるために、感情的にならず「大人な対応」を心がけることが大切です。
具体的には「税理士変更の断り方は?断る際の伝え方や文章についても解説!」で解説していますので、ぜひご覧ください。
5-2.データの移行などは新しい税理士が代行する
「税理士を変えたいけど、引き継ぎが不安で一歩踏み出せない…」と不安を感じる方もいると思いますが、会計システムもオンライン化が進んでおり、データの移行などは比較的簡単に行うことができます。
引き継ぎに関しては新しい税理士がしっかりとサポートしてくれる場合も多く、思っていた以上にスムーズに進みますので安心していいでしょう。
税理士変更については「税理士変更時の引き継ぎに必要な書類やスムーズに引き継ぐためのポイントを徹底解説!」を参考にしてください。
まとめ
「税理士変更=税務調査」は、全く根拠のない噂であり、税理士変更に過度な不安を感じることはありません。
税務調査を恐れるあまり、頼りない税理士と契約を継続することこそが、経営リスクに繋がる可能性があります。
税理士法人オンデックは、税理士変更のお悩みについても対応しております。
「顧問税理士を変更したい」という場合には、お気軽にご相談ください。
必要書類や税理士変更までの手順などについて詳しくお話させていただきます。
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