更新日:2024.06.7
公開日:2024/6/5
くるみんとは?種類、認定基準、認定を受けるメリットを解説!


StarMember公認会計士・税理士事務所
代表 山田俊輔(公認会計士・税理士・経営心理士)
あずさ監査法人にて、東証一部上場企業の会計監査、上場準備会社の監査、会社買収時のデューデリジェンス業務等を担当。
2010年に独立開業し、Star Member (スタメン)公認会計士・税理士事務所と株式会社日本会計サービスを立ち上げ、連結売上1,000億円超の社外取締役や売上数百億円~数億円の会社の取締役、監査役などを務める。2017年には野村證券なんば支店アドバイザリーボードメンバーにも選任。
企業を取り巻く環境は年々変化しており、少子高齢化による「働き手不足」が深刻な問題になっています。
働き手不足を解消するためには「職場環境の改善」が急務となっており、中でも「出産や子育て」などのライフイベントと仕事を両立できる環境整備が重要です。
積極的に従業員の子育て支援を行う企業には、国から「くるみん認定」を受けることができ、企業の商品や広告、求人情報などに「くるみんマーク」を使用することが可能です。
マークの使用は「優秀な人材の確保」「離職率の低下」「企業のイメージアップ」に繋がるため、「くるみん認定」は従業員と企業の双方にメリットがある制度になっています。
ここでは「くるみん認定の種類、認定基準、メリット」について詳しく解説します。
子育て支援を検討中の方は、ぜひご一読ください。
くるみん認定とは
くるみん認定は、女性が出産後も仕事を継続しやすい環境や子育てしやすい環境を整えることで、長期間にわたり働くことができる社会を目指すことを目的として作られた制度です。
厚生労働省では、仕事と育児の両立を目的とした「次世代育成支援対策推進法」を定めており、積極的に従業員の育児と仕事の両立を取り組む企業には「子育てサポート企業」として認定しています。
この認定のことを「くるみん認定」と言います。
1-1.くるみんの種類
くるみん認定を受けるためには、一定の基準を満たす必要があり、認定の基準によって3種類のマークに分類されます。
1-1-1.くるみんマーク
制度が始まって最初に作られた制度の基本となるマークです。
認定基準である10項目を満たして申請することで「子育てサポート企業」として認定されます。
1-1-2.プラチナくるみんマーク
くるみんマークに認定されている企業のうち、さらに充実したサポート体制を整えている企業に「プラチナくるみんマーク」が与えられます。
認定には12項目の基準を満たして申請を行う必要があります。
令和4年より、くるみんマーク認定企業だけではなく、トライくるみん認定企業も申請することができるように改正されています。
1-1-3.トライくるみんマーク
令和4年より、くるみんマークの認定基準が引き上げられたことで創設されたマークで、引き上げ前のくるみんマーク認定と同様の基準を満たし、申請することで「トライくるみんマーク」が与えられます。
くるみんマークの中では、一番基準がやさしいマークです。
1-1-4.プラス認定
各種くるみん認定を満たしたうえで「不妊治療と仕事との両立ができる制度」を設けることで「プラス認定」が与えられます。
プラス認定を受けると「くるみんプラス」「プラチナくるみんプラス」「トライくるみんプラス」のマークが利用できるようになります。
くるみんの認定基準
くるみん認定基準は各種類によって異なり「トライくるみん➡️くるみん➡️プラチナくるみん」の順番で厳しくなっています。
各認定基準は以下のとおりです。
認定基準 | トライくるみん | くるみん | プラチナくるみん |
1.雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定 | 必要 | 必要 | 必要 |
2.行動計画の計画期間 | 2年以上5年以下 | 2年以上5年以下 | 2年以上5年以下 |
3.策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標の達成 | 必要 | 必要 | 必要 |
4.策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知 | 必要 | 必要 | 必要 |
5-1. 男性労働者の育児休業等取得率(「両立支援のひろば」で公表) | 7%以上(「両立支援のひろば」で公表要件なし) | 10%以上 | 30%以上 |
5-2. 男性労働者の育児休業等取得率と育児を目的とした休暇制度利用率の合計(「両立支援のひろば」で公表、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上) | 15%以上(「両立支援のひろば」で公表要件なし) | 20%以上 | 50%以上 |
6.女性労働者の育児休業等取得率(「両立支援のひろば」で公表) | 75%以上(「両立支援のひろば」で公表要件なし) | 75%以上 | 75%以上 |
7. 3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること | 必要 | 必要 | 必要 |
8-1. フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均 | 月45時間未満 | 月45時間未満 | 月45時間未満 |
8-2. 月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと | 必要 | 必要 | 必要 |
9.①所定外労働の削減のための措置
②年次有給休暇の取得の促進のための措置 ③短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置 |
①~③について目標を定めて実施していること | ①~③について目標を定めて実施していること | ①~③について目標を定めて実施していること、かつ、①と②のいずれかについて定量的な目標を定めて実施し目標を達成していること |
10. 法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと | 必要 | 必要 | 必要
|
11.次のいずれかを満たしていること
①子を出産した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職(育児休業等を利用してる者を含む)している者の割合が90%以上であること
②子を出産した女性労働者および子を出産する予定であったが退職した女性労働者の合計数のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職している者(子の1歳誕生日に育児休業等を利用している者を含む)の割合が70%以上であること |
要件なし | 要件なし | 必要 |
12. 育児休業等、または育児を行う女性労働者が就業を継続し、活躍できるような能力の向上またはキャリア形成の支援のための取組にかかる計画の策定、実施 | 要件なし | 要件なし | 必要 |
厚生労働省「次世代育成支援対策推進法関係パンフレット」より抜粋
くるみん認定を受けるメリット
認定要件を満たし、くるみん認定企業になると多くのメリットを得ることができます。
具体的なメリットを見ていきましょう。
3-1.企業イメージの向上
くるみん認定を受けた企業は、厚生労働大臣により「子育てサポート企業」として認められた証になります。
各種くるみんマークを自社HPや求人広告、商品などに利用することができるため、取引先や消費者へ「子育て世代の従業員に配慮した企業」というイメージを与えることができ、企業イメージアップ・企業の価値向上に繋がります。
3-2.社員の採用・定着の促進
従業員が働きやすい環境の整備は、従業員のモチベーションや業務効率の向上へと繋がります。
くるみん認定の取得は「女性が働きやすい職場づくり」に貢献している企業です。結婚や出産・子育てなどのライフイベントと仕事を両立したい女性にとって魅力的な企業であり、優秀な社員の採用・定着の促進に繋がります。
3-3.従業員の離職率の低下
女性社員の退職理由の多くは「出産・育児に専念するための退職」「仕事と育児の両立が難しいための退職」です。
くるみん認定企業は、仕事と育児の両立の難しさを理解し、両立がができるための支援体制を整えている企業です。
そのため、仕事と育児の両立を考えている人が安心して働け、離職率も低くなるでしょう。
3-4.くるみん助成金の活用
くるみん認定を受けており、従業員数300人以下の中小企業は「くるみん助成金」の対象になります。
くるみん助成金は、次の取り組みを行う場合に発生する経費が対象です。
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対象になる経費は、育児休業などによる代替従業員の給与・社会保険料、取り組みに必要な備品の購入費用、制度普及のためのセミナー代やパンフレットなど、助成の対象になる経費は幅広く設定されています。
助成金額は50万円が上限となっており、くるみん助成金ポータルサイトからの申請が必要なります。
3-5.公共調達の加点評価対象
国が発注する工事契約などの「公共調達」が総合評価落札方式で行われる場合、くるみん認定を受けていると加点評価が行われます。
各種マークによって加点率が異なりますが、認定を受けていない企業よりも有利に公共調達を進めることが可能です。
出典:厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/08page28tyoutatsu.pdf
くるみん認定の申請方法
くるみん認定の申請は、今すぐできるものではなく、認定の指針に則った行動計画を策定したうえで申請しなければならないため注意が必要です。
具体的な申請方法は、以下の6つのスッテプで行います。
4-1.①行動計画の策定
自社内で仕事と子育てを行う上で障害になっている事項を分析、従業員のニーズを調査して一般事業主行動計画の策定を行います。
行動計画には「計画期間」「目標」「目標を達成するための対策とその実施時期」を記載する必要があり、計画の内容が認定基準と合致しているかについては都道府県労働局雇用環境・均等部に相談することができます。
4-2.②行動計画の公表と周知
策定した行動計画をおおむね3か月以内に公表します。公表場所は厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」への掲載、自社のホームページへの掲載などがあります。
同時に、社内の見やすい所へ行動計画の掲示、従業員へのメール送信など、行動計画の周知も行います。
4-3.③行動計画を策定した旨の届出
行動計画の公表とともに、行動計画のもとに作成した「一般事業主行動計画策定・変更届」を管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部へ届出ます。
届出方法は持参・郵送・電子申請に対応しています。行動計画の策定からおおむね3か月以内に行いましょう。
4-4.④計画の実施
策定した行動計画を実施し、目標の達成を目指しましょう。
目標の達成は認定を受けるうえで必須の要件になっています。
計画➡️実施➡️評価➡️改善の一連のサイクルを繰り返し行い、目標を達成できるようにしましょう。
4-5.⑤認定申請・審査
行動計画の終了後、目標を達成し、認定基準を満たしていれば労働局へ申請することが可能になります。
4-6.⑥認定を受ける
申請後については、労働局で審査が行われ、基準を満たしていると認められた場合は、約30日程度で認定決定が行われます。
認定決定後は、CD-ROMなどの媒体により「くるみん認定マーク」が届き、求人広告や自社HPなどに使用することができるようになります。
くるみん認定取得による税制優遇について
令和6年度税制改正では、賃上げ促進税制が強化され、「くるみん認定・プラチナくるみん認定」を受けた企業は「子育て支援・女性活躍支援企業への上乗せ要件」に該当することになり、税額控除に5%上乗せされます。
税額控除率は、会社規模・給与支給額の増加額によって算定され、認定企業はその控除率に5%上乗せされます。
(令和6年4月1日~令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度)
出典:経済産業省HP「賃上げに取り組む経営者の皆様へ」
まとめ
少子高齢化が続く現代社会で「優秀な人材の確保、人材定着」は、企業の課題となってきています。
労働力を確保するためには、子育てサポート企業として女性が安心して働ける環境整備が重要です。
くるみん認定を取得することで、社内的にも対外的にも企業のイメージが向上し、労働力を確保しやすくなります。
また、税制優遇制度の増額も行えるなど、企業にとってのメリットも多くあります。
Star Member (スタメン) 公認会計士・税理士事務所は、くるみん認定の取得企業の税制優遇サポートを行っております。
くるみん認定の取得を検討されている際は、お気軽にご相談ください。